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2018/7/19 19:06

ソニー「RX100」、6代目でついに……!! 待望の「望遠」と「タッチパネル」を手に入れた歓喜のレビュー

ソニー「RX100」シリーズは、胸ポケットサイズの小型ボディに1型センサーを搭載した高級コンパクトデジカメです。その6代目として「Cyber-shot DSC-RX100M6(以下、RX100M6)」が登場。シリーズで初めて光学8倍ズームやタッチパネルを採用した注目機です。その実写レビューをお伝えしましょう。

↑ソニー「Cyber-shot DSC-RX100M6」。実売価格は14万4730円

 

これまでとほぼ変わらない胸ポケットサイズのボディのまま高倍率化!

RX100M6最大の見どころは、ズームの高倍率化を図り、望遠撮影に強くなったこと。35mm判換算の焦点距離は24~200mm相当。既存モデル「RX100M5」の24~70mm相当に比べた場合、ワイド端(広角端)の広さはそのままで、テレ端(望遠端)の焦点距離が倍以上長くなっています。

 

これがどれほど描写に違いを与えるのか。まずは、同じ場所で撮ったワイド端とテレ端の写真を見てください。

↑ズームのワイド端で撮影。高倍率化しつつもワイド端の焦点距離はシリーズの3代目「RX100M3」から5代目「RX100M5」までと同じく、24mm相当(35mm判換算)を維持。広がりのある構図で風景やスナップを撮影できます

 

↑ズームのワイド端の状態。電源ボタンを押すと、前面のバリアが開いてレンズがせり出し、約1.4秒で素早く起動します

 

↑ズームのテレ端で撮影。ワイド端の写真とほぼ同じ位置から撮影していますが、特定の部分のみを大きく引き寄せたフレーミングが楽しめます

 

↑ズームのテレ端の状態。ズームアップすると、レンズの前玉部分がさらにせり出します。なお、ズームレバーの指があたる部分には従来機にはなかった凹凸が加わり、操作時の手触りが向上。細かいですが、うれしい改良です

 

これまでのシリーズとほぼ変わらない胸ポケットサイズのボディに光学8倍ズームを凝縮したことは、ただただお見事です。しかも画面周辺までの高解像を維持。PCのディスプレイ上で等倍表示にした場合、上のワイド端の写真では川沿いの歩行者まで、テレ端の写真では展望室の観客の姿までしっかりと確認できます。

 

レンズはやや暗くなったものの描写力は十分!

レンズ開放値はワイド端がF2.8で、テレ端がF4.5。既存モデルRX100M5のワイド端F1.8、テレ端F2.8に比較すると、1と1/3段ほど暗くなっています。ここは、高倍率化と薄型軽量ボディを両立するためには仕方がない部分でしょう。これが影響するシーンとしては、例えば室内や日陰といった薄暗いシーンで動きのある被写体を狙う際、被写体ブレを防ぐためにある程度ISO感度を高めにすることが必要になります。

↑200mm相当の長い焦点距離は、動物園などでのスナップ用にも好適。ただし光量が乏しい場所では高感度を利用して被写体ブレを抑えることが欠かせません。この写真はISO640で撮影

 

手ブレ補正は、これまでと同じく光学式の補正機構を採用。電子ビューファインダーを利用しながらカメラをしっかりと構えた場合、ズームのテレ端をシャッター速度1/15秒で撮影しても手ブレはほとんど見られませんでした。

↑ズームのテレ端を使用し、シャッター速度1/15秒で撮影。靴の縫い目までシャープに再現しつつ、背景には滑らかなボケが生じています

 

レンズの最短撮影距離(レンズ先端から被写体までの距離)は、ワイド端で8cm、テレ端で100cm。特に接写に強いというほどではありませんが、植物や小物などのクローズアップ撮影が気軽に楽しめます。下の写真は、ズームのテレ端にセットし、最短撮影距離付近で撮影したものです。

↑最短撮影距離付近で撮影。この写真は、200mm相当となるズームのテレ端を使用していますが、50mm相当前後のズーム位置の場合、さらに被写体を大きく捉えることも可能です

 

AFは、位相差AFとコントラストAFを併用する「ファストハイブリッドAF」を既存モデルRX100M5から継承しています。そのうえで、処理エンジンなどのブラッシュアップによって合焦速度が向上。メーカーでは世界最速の合焦速度0.03秒を謳っています。試用では、シーンを問わず快適にピントが合うAF性能を実感できました。位相差AFの測距点が315点と多く、画面のほぼ全域をカバーしているので、画面端にある被写体にも素早くピントが合うことも便利に感じました。

↑路上のパターンに重なる人影に注目しながら、画面上部の歩行者にピントを合わせて撮影。約10カットを高速連写し、影のバランスが最もいい1枚を採用しました

 

↑RX100シリーズでは初めてタッチパネルに対応。タッチ操作による測距点の選択や撮影、マニュアルフォーカス時の拡大表示などがスムーズに行えます。また、電子ビューファインダー利用時は、液晶上をなぞって測距点を動かすタッチパッド機能が使えます

 

連写は、最高24コマ/秒に対応。既存モデルRX100M5と同じく非常に高速です。しかも連続撮影可能コマ数は150枚から233枚に向上。動物や乗り物、スポーツなどの撮影にも役立つでしょう。

地味!? にうれしいファインダーとチルト液晶の変更点

電子ビューファインダー(EVF)には、0.39型/約235万ドットの有機ELを搭載。このスペック自体は既存モデルRX100M5と同じですが、自動ポップアップの仕組みが改良されました。従来は上にポップアップさせたあと、接眼部を引き出すという手間が必要でしたが、RX100M6ではボディ側面のレバーを押すというワンアクションですぐに使用可能になっています。

↑ワンアクション化によって素早く使用できるなど、操作性が改良された電子ビューファインダー。一方で、接眼部の周辺にあった小さな枠がなくなったため、のぞいたときに外光の影響を感じやすくなった点は少々残念。上部にある視度調整レバーが動きやすい点にもやや注意

 

↑晴れた日の屋外など液晶モニターが見えにくくなるシーンでは、電子ビューファインダーが重宝します

 

液晶モニターには、3型/約92.1万ドットのTFTを搭載。RX100M5の約122.8万ドットに比べるとドット数は低下していますが、操作感は進化しました。シリーズ初となるタッチパネル対応になったほか、チルト可動の範囲が拡大しています。

↑液晶モニターのチルト可動は、既存モデルRX100M5では下方向に最大45度までしか開きませんでしたが、RX100M6では下方向に最大90度まで開きます

 

↑チルト可動の角度拡大によってハイアングルからの撮影がいっそう楽になりました。上方向については、これまでと同じく最大180度に対応。自分撮りもスムーズに行なえます

 

そのほかには、フォーカスエリアの登録機能やフォーカスエリアの「ゾーン」、ハイライト重点測光、画面全体平均測光、5段階のレーティング機能、好きな項目を登録できるマイマニュー機能などに新対応しています。既存モデルRX100M5と比べた場合、EVFの表示タイムラグの軽減や高感度ノイズの低減、瞳AFの追従性向上なども図られています。

 

さらに、メニューの画面デザインが一新され、細かい機能や設定へのアクセス性がよくなったことや、各種ボタンのカスタマイズがいっそう柔軟に設定可能になった点も見逃せません。

↑フォーカスエリア登録機能では、任意のフォーカスエリアを登録でき、特定のボタンを押すことで素早く呼び出せます。例えば、普段はフォーカスエリアの「ワイド」を使ってスナップ的な撮り方をし、厳密に合わせたいときは事前に登録した「フレキシブルスポット」に切り替えるといった使い方ができます

 

↑測光モードに2つの新モードが追加。「ハイライト重点測光」は被写体の白とびを抑えて撮影したいときなどに、「画面全体平均測光」は同じ被写体を構図や距離を変えながら撮影したいときなどに役立ちます

 

↑オートホワイトバランスは「標準」のほか「雰囲気優先」「ホワイト優先」が選択可能になりました。例えば、室内の電球光の色を残したいときは「雰囲気優先」が、完璧に補正したいときは「ホワイト優先」がそれぞれ役立ちます

 

↑動画機能も強化。S-Gamut3.Cine/S-Log3やS-Gamut3/S-Log3に対応したピクチャープロファイルなど、プロ仕様の設定が選択できます

 

望遠撮影を気軽に楽しみたい人に最適! レンズの明るさを優先するなら「RX100M5A」もアリ

トータルとしては、ズームレンズの高倍率化に加えて、電子ビューファインダーや液晶モニターの改良など操作面にもさまざまな進化が見られ、完成度の高いコンパクトデジカメに仕上がっています。

 

個人的に気になったのは、これまでと同じくグリップ部が平坦で滑りやすく、持ちにくく感じることです。筆者のような手の大きなユーザーは、オプションの「アタッチメントグリップ」や8月発売予定の「シューティンググリップ」が必須かもしれません。

 

ズームの倍率アップにともなってレンズの開放F値が暗くなったことについては仕方ありません。レンズの明るさを優先したい人は、既存モデルRX100M5を、あるいはRX100M5の操作性と機能を向上させた後継モデル「RX100M5A」(7月13日発売/実売価格11万3270円)を検討するのがいいでしょう。

 

RX100M6は、24mm相当の広角撮影に加えて、最大200mm相当の望遠撮影を気軽に楽しみたい人に最適なモデルです。実売価格14万円前後はやや高めに感じますが、薄型軽量ボディながら、1型センサーとチルト式液晶、高倍率ズームというすべての条件を兼ね備えたカメラはほかにはありません。高価なりに、得られる満足感も高い――。そんな高級志向のカメラといえそうです。

↑外形寸法は幅101.6×高さ58.1×奥行き42.8mmで、重量は約301g。ポケットに入れて持ち歩いても大きな負担は感じません