このタイミングでの市場参入の狙いは?
Z7/Z6の2機種は、現行のFマウントカメラでいうと、D850とD750が比較的近いスペックを持っています。
主なスペックを見比べてみると、Z7とD850が4575万画素で連写速度も最高約9コマ/秒(D850はマルチパワーバッテリーパックMB-D18とリチャージャブルバッテリーEN-EL18b使用時)、常用最高感度もISO25600で同等といえます。また、D750とZ6は、連写や常用最高感度では最新モデルであるZ6が勝るものの、画素数2432万画素と同等です。
D850/D750とも両機とも同社を代表する人気機種で、特に昨年発売のD850はプロ・ハイアマ層を中心に高い支持を集めています。発表会では、Fマウントを採用する一眼レフカメラは光学式ファインダーなどの利点から根強い支持があるとして、今後も一眼レフカメラの開発・生産は継続しておくことが明言されていました。
では、Fマウント一眼レフカメラで多くのシェアを持っているニコンが、いまになってフルサイズミラーレス市場に製品を投入する狙いはどこにあるのでしょうか?
その答えは、現状でフルサイズミラーレスカメラを投入している国内唯一のメーカー、ソニーの動きが参考になるでしょう。ソニーは、「α7シリーズ」でフルサイズミラーレス市場を切り開いたパイオニアといえますが、そのシェアはここにきて急速に伸びています。レンズ交換式フルサイズカメラ市場でおよそ30%程度を有しているといわれ、ニコンやキヤノン、ペンタックスなどフルサイズ一眼レフカメラを展開するメーカーを脅かす勢いです。
また従来のミラーレスカメラは、EVF採用によるファインダー表示の遅れ(タイムラグ)などが問題になっていましたが、表示速度が高速化し、表示品位も向上したことで、特殊な状況以外ではそうした不満もあまり聞かれなくなってきました。むしろ最近は、ホワイトバランスや露出などが撮影画像とほぼ同等の表示が可能な点や、暗い場所でも像を明るく映し出せるなどのメリットが見出だされるようになってきています。
つまり、そうしたミラーレスのデメリットの多くが解消されつつあり、かつメリットが感じられるようになったいま、ハイエンドカメラを得意とするニコンが、満を持して投入したのが新型のZシリーズだといえます。しかも、一般にフランジバックが短く、マウント内径が大きいほうがレンズ設計などの点で有利といわれているなかで、フランジバック18㎜、マウント内径約46㎜のソニーEマウントを超えるマウントを用意できた点は、今後のレンズ展開において大きなポイントだといえます。
レンズラインナップの今後に期待! “ニコン史上最高の明るさ”を持つ製品も
現状、Zマウントレンズは「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」、「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」の3本のレンズの登場がアナウンスされているほか、「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」という超大口径のレンズの開発も発表されています。ただ、それでも計4本のラインナップということで、今後の展開が期待される状況です。
しかしながら、「マウントアダプター FTZ」によって数多くのFマウントレンズが使用できること、Fマウント機の周辺アクセサリーが流用できること、また、現時点でそれらのユーザーが相当数存在することを考えると、ソニーα7シリーズと互角に勝負できる素地は整っているといえるかもしれません。少なくとも、ニコンZシリーズの登場で、今後さらにミラーレスカメラ市場が盛り上がっていくことは間違いないでしょう。