ニコンの新型フルサイズミラーレスカメラである「Z 7」が9月28日にいよいよ発売。本機は発表と同時に予約が殺到するほどの人気ぶりとのことですが、実売で43万7400円(ボディ)という高価なカメラで、かつ新マウントの採用によりレンズやマウントアダプターも必要であることを考えると、いかにこのカメラが注目を集めているかがわかります。本稿では、このニコン Z 7の実写と実際に使用してみての感想などをレポートしたいと思います。
【今回紹介するカメラはコレ!】
ニコン
Z 7
実売価格43万7400円
新設計の「Zマウント」を採用する、ニコンの新型フルサイズミラーレスカメラ。外観はファインダー部などの意匠が一眼レフのDシリーズから大きく変わっているものの、グリップなどの操作に関わる部分にDシリーズとの共通点が多く、Dシリーズから持ち代えても違和感はありません。タッチパネルやサブセレクターの採用により操作性が向上している印象です。
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操作性は踏襲しつつ圧倒的な“軽さ”を手に入れた
「ニコンファンミーティング」などのイベントですでに実機に触れた人もいるかと思いますが、本機はグリップ部のデザインなどを従来のDシリーズから踏襲。そのため、ニコンユーザーにとっては、ほぼ違和感なく使えるものになっています。しかもフルサイズ機であることを考えると、“とにかく軽い!”というのが第一印象です。
キットレンズにもなっている「NIKKOR Z 24-70mm F4 S」も約500gとF4の高性能ズームレンズとしては軽量で、ボディとレンズを合わせても約1175g(バッテリー、カード含む)なのでなおさら軽く感じるでしょう。例えば、スペックの近い同社の一眼レフ「D850」では、軽量な普及タイプの標準レンズ「AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5G ED VR」と組み合わせると約1470g(バッテリー、カード含む)となり、300g近い差があります。
しかも、「NIKKOR Z 24-70mm F4 S」は繰り出し部分の沈胴機構を備えていて、収納時には88.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)となり、コンパクトに持ち運べるのもメリットです。
操作性の面では、背面モニターが3.2型のチルト液晶となっており、タッチ操作も可能。手持ちでのローポジション撮影などが容易で、三脚使用時にモニターを見ながらのタッチ操作で素早く設定を変えるといったことも可能です。
また、撮影関連のボタンが右手側に集中配置されているので、ファインダー(EVF)を見ながら設定を変更する場合も快適。さらに、ジョイスティックタイプの「サブセレクター」が採用され、AF測距点の選択も素早く的確に行えます。
加えて、ボディ上面には撮影情報液晶が用意されているので、同じシーンを露出を変えながら撮る場合や、残り枚数やおおよその露出、露出モードなど、素早くカメラの状態を確認したい場合に役立ちます。ただし、電源を切ると何も表示されなくなります(同社の一眼レフの従来機では残り枚数などが表示される)。もっとも、ミラーレス機の場合は一眼レフに比べると電力消費が多めの傾向があるので、無駄な電力を少しでも消費しないという点ではメリットとも言えます。
気になる“描写力”を標準ズームと35mm単焦点でチェック!
前にも記したように、キットレンズにもなっている「NIKKOR Z 24-70mm F4 S」は、非常にコンパクトな標準ズームでF4のズームとしては軽量です。ただ、一般に「コンパクトで軽量なレンズは写りもそれなりなのでは?」と思われがちなのも確か。今回はその点を実写でチェックしてみました。
また、今回はもう1本、「NIKKOR Z 35mm F1.8 S」も用意しました。こちらも約370gと大口径なF1.8のレンズとしては軽量な部類といえますが、Fマウント(一眼レフ)用の「AF-S NIKKOR 35mm F1.8G ED」に比べるとサイズ・重さともに大きくなっています。とはいえ数十グラムの差なので、その分画質が良くなっているのであれば、納得がいく差だと思います。
この2本で実写チェックを行ってみたところ、標準ズーム、35mmレンズともに絞り解放から極めてシャープな写りが得られ、ボケ描写も美しく、高画素なZ 7との組み合わせでも十分以上の性能が得られることを実感できました。加えて、Z 7自体の描写も色鮮やかで見栄えのする写りという印象。また、ホワイトバランスなどの設定を「オート」に設定しても、多くのケースで自然な色再現が得られます。
高感度も十分実用的な画質
次に高感度での写りをチェックしてみましたが、ISO6400程度までは解像感の低下が比較的少ない印象。常用最高感度となっているISO25600でも色の変化などが少なく、多少解像感が低下したり、暗部にムラが確認できたりするものの、実用的な画質といえるでしょう。
注目の「ボディ内手ブレ補正」の実力は?
Z 7で気になるのが、同社のレンズ交換式カメラでは初となる、約5段分の効果というボディ内手ブレ補正の性能です。そこで、手持ち撮影でどの程度の低速シャッター撮影が行えるか試してみました。
その結果、62mm(24-70mmF4レンズの望遠側)で1/4秒でもブレなく撮ることができました。これなら、下の写真のように三脚なしで水の流れを表現したり、夜景撮影を楽しんだりすることが十分可能だと思います。
新搭載のピクチャーコントロールで写真に変化を
こうした写りの基本的な画質のほか、Z 7の絵作りで気になるのが、新搭載のピクチャーコントロール[ミドルレンジシャープ]と[Creative Picture Control]です。
[ミドルレンジシャープ]は、「輪郭強調」と「明瞭度」の中間の細かさの模様や線に対して効果的とのこと。実際に試してみると差が出るのは細かい部分ですが、緻密な風景写真の質感描写などに効果的だと感じました。
[Creative Picture Control]については、いわゆるデジタルフィルターで、20種類が用意されています。これらについては、撮影後に画像加工をすることなく手軽に効果が得られるので、写真に変化を付けたい場合に使ってみるといいでしょう。
動きモノ撮影にも対応。ただし、連続撮影枚数に注意
Z 7は通常撮影においてAF/AE追従で約5.5コマ/秒、14ビットRAW撮影時で約5コマ/秒での連写(拡張設定で約9コマ/秒)が可能です。そこで、負荷の大きな14ビットRAWで実際に走行中の列車を撮影してみました。
結果、多少タイミングを計る必要はあるものの、動きモノの撮影にも対応できる印象。ただ、連続撮影枚数が18コマ(4秒弱)となっているため、できるだけ短時間での連写に留めるのが連写時のコツとなります。長めに連写する必要がある場合は、連続撮影枚数が25コマとなるJPEGで撮影するのが良さそうです
ボディは「Z 6」とどちらを選ぶか見極めるべし
短い時間でしたが、実際にZ 7で撮影してみての感想は、やはりボディが軽く気軽に持ち歩けることと、レンズも比較的小型で描写性能に優れていることの2つがZ 7を使う最大のメリットだと感じました。
特に風景撮影やスナップを撮影するユーザーには、小さく軽いことは撮影フィールドが広がることに直結するので、メリットが大きいと思います。また、EVFやモニターで撮れる画像を実際に見ながら撮れるので、一眼レフに比べるとエントリーユーザーも使いやすいのではないでしょうか。
強いて問題を挙げるとすればその価格の高さですが、フルサイズの高画素モデルの価格としては特別に高いということはありません。ただ、従来のFマウントレンズを持たず(あるいは使わず)、新規でレンズも揃えるとしたら、金額的な負担はかなり大きくなります。
レンズ性能が極めて高く、それだけの価値はあると思いますが、ボディに関しては、11月下旬発売予定のZ 6(参考価格/27万2700円)と比べてみて、本当に高画素が必要か見極めてみるのもよいでしょう。