これまでのXシリーズとは一線を画す“中身”の進化
ここまでボディの構造について紹介してきたが、細かな改善点こそあれど基本構造は変わらない。ではX-T3のどんなところが大きく変わったのかといえば、なんといっても“中身”だ。
X-T3はイメージセンサーが「X-Trans CMOS 4」、画像処理エンジンが「X-Processor 4」と、それぞれXシリーズ第4世代となった。この進化は非常に大きく、これまでのXシリーズとは一線を画す。
X-Trans CMOS 4は2610万画素と、X-T2の2430万画素から約200万画素の微増ではあるが、Xシリーズとして初めて裏面照射型のCMOSセンサーとなった。裏面照射型となったことで画素数を向上させながらも低ノイズを実現している。また常用低感度もこれまでのX-T2のISO200からX-T3ではISO160となり、少しではあるが低速シャッターが使いやすくなった。
高速AFと高速連写で動く被写体を捉える
また、新画像処理エンジン「X-Processor 4」の高速な処理能力により高速連写能力が格段に向上した。メカシャッターの最高連写は11コマ/秒とX-T2と変わらないが、X-T2はボディ単体で8コマ/秒、縦位置のパワーブースターグリップを付けて11コマ/秒を実現していた。しかしX-T3はボディ単体で11コマ/秒を達成。小型軽量のまま高速連写を楽しめる。
次の作例は、1.25倍のクロップモード、30コマ/秒の高速連写で捉えたカモの水浴び。X-T3はAPS-Cセンサーなので35ミリ換算1.5倍の画角となる。XF100-400mmの400ミリでの撮影なので、35ミリ換算で600ミリ相当。その上1.25倍のクロップモードを使用しているので35ミリ換算750ミリ相当の超望遠撮影となる。
格段に向上したのは連写速度だけではない。X-Trans CMOS 4センサーは高速なAFを可能とする像面位相差AFエリアを画面の100%まで拡大した。X-T2では画面の約40%だったことを考えると、その増加具合には驚きを隠せない。コンティニュアスAF(追従AF)の食いつきも極めて優秀で、X-T2では逃してしまっていたような瞬間さえも高速AFと高速連写で捉えることができる。
またX-T3は動体撮影に便利な「スポーツファインダーモード」を新搭載。メカシャッターもしくは電子先幕シャッターの際に機能をONにすると、ライブビュー画面内に1.25倍のトリミングラインが表示される。記録されるのは1.25倍のクロップ画面内だけだが、撮影時にはその周りも見ながら撮影することができるので、動く被写体がフレーミングに入る直前から確認できる。
さらに連写モードには「プリ撮影」が新たに搭載された。これはシャッターボタンを半押しすると画像の仮記録が開始され、全押しすると押した瞬間から遡って20コマが本記録される機能。例えば、鳥や昆虫などの飛ぶ瞬間などを撮る際に通常の連写モードでは大抵の場合、人間の反応速度ではシャッターを押し遅れる。しかしプリ撮影モードなら遡って記録されるため撮り逃しがない。
Xシリーズの“色”をさらに深める「カラークロームエフェクト」
Xシリーズの特徴はなんといっても“色”の美しさにある。その色再現をさらに深める「カラークロームエフェクト」機能がXシリーズとして初めて搭載された。
本機能は鮮やかな赤や黄色など色飽和を起こしやすい色のトーンを抑え、より濃厚で階調豊かな発色を実現する機能。Xシリーズで初といったのは、富士フイルムの中盤デジタルカメラ「GFX 50S」に搭載されている機能だからだ。GFXも使用している筆者としてはこの色再現を非常に気に入っており、Xシリーズにも欲しいと思っていたので今回の搭載は色再現が統一されるのでうれしい限り。
また、GFX 50Sでの本機能は撮影後に約1秒ほどの処理時間を要したが、X-T3はX-Processor 4の高速な画像処理により処理時間が0秒になるどころか連写モードでも使用できるようになってしまったのだから驚くほかない。
【まとめ】Xシリーズの新しい表現域を押し広げる渾身の一台
X-T3の進化には驚愕した。X-T2も非常に優れたカメラであったがX-T3の性能は一回りも二回りも向上している。特にAFの進化はこれまでは難しかったような動きの激しい被写体でさえも容易に撮影できるようになった。
ルックスはフィルムカメラを彷彿とさせるスタイリッシュなものだが、電源を入れた瞬間にX-T3はモンスターマシンとなる。どのような撮影シーンでも期待以上の結果を残してくれることは間違いない。
Xの美しい色で世界のありとあらゆる被写体を捉えたい。そんな貪欲なユーザーにぜひとも使ってもらいたい一台だ。