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2018/10/2 20:00

期待のミラーレス一眼「X-T3」登場! さらなる表現力を担う「Xシリーズ第4世代」の実力とは!?

富士フイルムのレンズ交換式「Xシリーズ」は「X-Pro1」の2012年にスタート、「X-Tシリーズ」は初代「X-T1」が2014年に登場した。X-Tシリーズは防塵防滴耐低温マイナス10度の強靭な作りが特徴。野外撮影のユーザーを中心に絶大な人気を誇るシリーズだ。今回紹介する「X-T3」はその3代目にあたる。

↑富士フイルム「X-T3(シルバー)」。実売価格は約19万9260円(ボディ)。ブラックとの2色展開で価格は同じ

 

大きなファインダーを備え、ダイヤルが整然と並び、細部まで丁寧に作り込まれたその姿はカメラが家電でなく写真機なのだとあらためて感じさせてくれる美しさがある。見た目は前モデル「X-T2」とほとんど同じで、これが完成された造形なのだということを再認識できる。

↑池の中を優雅に泳ぐコイ。Xシリーズの「フィルムシミュレーション」による色再現は圧倒的に美しい。後処理なしのJPEG撮影で十分に作品クオリティを出せるのが1番の魅力だ/富士フイルムX-T3 XF35mmF2 R WR 絞り優先オート F16 1/250秒 -1.0補正 ISO320 WB:太陽光

 

細部までこだわりぬかれた操作性

X-Tシリーズの特徴はなんといってもダイヤル操作だろう。ボディを上面から見れば電源をオフにしていても現在のカメラ設定が一目瞭然なのだ。レンズも単焦点レンズやF値固定のズームレンズなど、絞りリングにF値が記載されているものであればよりわかりやすい。

↑左からISO感度ダイヤル、シャッタースピードダイヤル、露出補正ダイヤルが配置され、さらにISO感度ダイヤルの下にはドライブダイヤルが、シャッタースピードダイヤルの下には測光モードダイヤルがあり、直感的な操作が可能

 

X-T3はミラーレスカメラなので、ファインダーはEVF(電子ビューファインダー)。その見え具合には非常にこだわりが感じられ、一眼レフの光学ファインダー(OVF)を凌ぐ性能を秘めている。パネルは369万ドットの有機ELパネル。X-T2の236万ドットよりもさらに高解像パネルが採用されている。また有機ELパネルは屋外でも黒がしっかりと締まって見えるため仕上がりの確認が正確にできる。

↑表示サイズは視野率100%、拡大率0.75倍。この0.75倍という非常に大きなサイズで撮影画面が見えるため写真の細部までよく確認できる

 

ちなみにX-T2は拡大率0.77倍とさらに大きかったので、X-T3では小さくなってしまったのか……と不安になる方もいるかもしれないが、安心してほしい。倍率が下がることでF値やシャッタースピードなど各種設定の表示文字サイズが小さくなってしまう可能性があるわけだが、X-T3では「表示文字拡大機能」が新しく追加された。ユーザーの好みに合わせて文字サイズのカスタマイズができるので、視力に不安のある方でも安心して使用できる。

↑画像は背面モニターの情報表示を大きくしたところ。ファインダー内も同じく情報表示を拡大できる

 

X-T2で初めて採用された3方向チルトモニターはもちろんX-T3でも継続して搭載。カメラ横位置方向での上約90度、下約45度のチルトに加え、カメラ縦位置方向でもグリップ側に約45度モニターが開いてくれるのだ。これが極めて使いやすく、縦位置のローアングルやハイアングルで重宝する。

↑カメラを縦位置で構えた際にもロー/ハイアングル撮影が容易な3方向チルトモニターを搭載。タッチパネルが採用されたので、さらにその使い勝手は向上している

 

地味なようでかなりうれしい従来機からの改善点

見た目はX-T2とほとんど変わらないX-T3だが、細かく改善されている点がある。

 

まずは視度調整ダイヤルにロック機構が追加された。視度調整はユーザーひとりひとりの目に合わせてファインダーの見え具合を調整をするものだが、X-T2以前はこのダイヤルにロックがなく、バッグ内などでたまに動いてしまうことがあった。地味な点だがかなりうれしい改善点といえる。

↑ノブを引っ張り出してから回転させるタイプのロック機構を採用した視度調整ダイヤル

 

X-T3のユニークな仕様といえるのが、ワンタッチで外せる端子カバー。動画撮影などではHDMIケーブルをPCや外部レコーダーなどと接続しながら撮影するが、カバーがあると取り回しにくいため外せるようになった。ムービー用途で使用するユーザーにうれしい改善点だ。

↑ボディ左側にはHDMIマイクロ端子、USB Type-C、3.5mmステレオミニジャック(ヘッドホン用)、3.5mmステレオミニジャック(マイク用)を搭載

 

↑リモートコード(ケーブルレリーズ)の2.5ミリフォンプラグ端子はグリップ側に移動。以前はボディ左側にほかの端子類と一緒くたになっていたが、今回晴れて独立したため三脚撮影時などに使いやすくなった

これまでのXシリーズとは一線を画す“中身”の進化

ここまでボディの構造について紹介してきたが、細かな改善点こそあれど基本構造は変わらない。ではX-T3のどんなところが大きく変わったのかといえば、なんといっても“中身”だ。

 

X-T3はイメージセンサーが「X-Trans CMOS 4」、画像処理エンジンが「X-Processor 4」と、それぞれXシリーズ第4世代となった。この進化は非常に大きく、これまでのXシリーズとは一線を画す。

↑Xシリーズ第4世代となる有効約2610万画素の新開発イメージセンサー「X-Trans CMOS 4」と画像処理エンジン「X-Processor 4」を搭載

 

X-Trans CMOS 4は2610万画素と、X-T2の2430万画素から約200万画素の微増ではあるが、Xシリーズとして初めて裏面照射型のCMOSセンサーとなった。裏面照射型となったことで画素数を向上させながらも低ノイズを実現している。また常用低感度もこれまでのX-T2のISO200からX-T3ではISO160となり、少しではあるが低速シャッターが使いやすくなった。

↑雨の日の渓流。岩とコケの艶やかさと涼やかに流れる水の表情がうまく描写されている。ISO160の低感度でスローシャッター表現の幅が広がった/富士フイルムX-T3 XF56mmF1.2 R APD 絞り優先オート F11 2.6秒 -0.7補正 ISO320 WB:太陽光

 

↑日の入り後、滝を背景に木のシルエットを描いた。裏面照射型CMOSセンサーと新画像処理エンジンによってISO2000の高感度でも美しいトーンが崩れない/富士フイルムX-T3 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR 絞り優先オート F8 30秒 -0.3補正 ISO2000 WB:太陽光

 

高速AFと高速連写で動く被写体を捉える

また、新画像処理エンジン「X-Processor 4」の高速な処理能力により高速連写能力が格段に向上した。メカシャッターの最高連写は11コマ/秒とX-T2と変わらないが、X-T2はボディ単体で8コマ/秒、縦位置のパワーブースターグリップを付けて11コマ/秒を実現していた。しかしX-T3はボディ単体で11コマ/秒を達成。小型軽量のまま高速連写を楽しめる。

↑X-T3は電子シャッターがX-T2の倍近く高速化。X-T2は最高14コマ/秒だったのに対し、X-T3は20コマ/秒、1.25倍のクロップモード(画角トリミング)では最高30コマ/秒を達成している

 

次の作例は、1.25倍のクロップモード、30コマ/秒の高速連写で捉えたカモの水浴び。X-T3はAPS-Cセンサーなので35ミリ換算1.5倍の画角となる。XF100-400mmの400ミリでの撮影なので、35ミリ換算で600ミリ相当。その上1.25倍のクロップモードを使用しているので35ミリ換算750ミリ相当の超望遠撮影となる。

↑X-T3は2610万画素の高画素センサーのため、1.25倍クロップモードで撮影しても1660万画素あり、十分な画質が確保されている/富士フイルムX-T3 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR シャッター優先オート 1/2000秒 F5.6 -1.7補正 ISO1000 WB:太陽光

 

格段に向上したのは連写速度だけではない。X-Trans CMOS 4センサーは高速なAFを可能とする像面位相差AFエリアを画面の100%まで拡大した。X-T2では画面の約40%だったことを考えると、その増加具合には驚きを隠せない。コンティニュアスAF(追従AF)の食いつきも極めて優秀で、X-T2では逃してしまっていたような瞬間さえも高速AFと高速連写で捉えることができる。

↑飛んでいるアオサギを11コマ/秒の高速連写で捉えた。よく見るとフンをしながら飛んでいるのが確認できる。曇天でコントラストの低い状況だがコンティニュアスAFの食いつきは非常に良かった/富士フイルムX-T3 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR シャッター優先オート 1/500秒 F5.6 +0.3補正 ISO1600 WB:太陽光

 

またX-T3は動体撮影に便利な「スポーツファインダーモード」を新搭載。メカシャッターもしくは電子先幕シャッターの際に機能をONにすると、ライブビュー画面内に1.25倍のトリミングラインが表示される。記録されるのは1.25倍のクロップ画面内だけだが、撮影時にはその周りも見ながら撮影することができるので、動く被写体がフレーミングに入る直前から確認できる。

↑スポーツファインダーモードのクロップライン。フレーミングの周りが見えているので横などから入ってくる被写体を確認できる

 

さらに連写モードには「プリ撮影」が新たに搭載された。これはシャッターボタンを半押しすると画像の仮記録が開始され、全押しすると押した瞬間から遡って20コマが本記録される機能。例えば、鳥や昆虫などの飛ぶ瞬間などを撮る際に通常の連写モードでは大抵の場合、人間の反応速度ではシャッターを押し遅れる。しかしプリ撮影モードなら遡って記録されるため撮り逃しがない。

↑シャッターボタンを全押しした瞬間から遡って20コマを記録する「プリ撮影」機能を搭載

 

Xシリーズの“色”をさらに深める「カラークロームエフェクト」

Xシリーズの特徴はなんといっても“色”の美しさにある。その色再現をさらに深める「カラークロームエフェクト」機能がXシリーズとして初めて搭載された。

↑深みのある色再現、階調再現を可能にする「カラークロームエフェクト」機能を新搭載

 

本機能は鮮やかな赤や黄色など色飽和を起こしやすい色のトーンを抑え、より濃厚で階調豊かな発色を実現する機能。Xシリーズで初といったのは、富士フイルムの中盤デジタルカメラ「GFX 50S」に搭載されている機能だからだ。GFXも使用している筆者としてはこの色再現を非常に気に入っており、Xシリーズにも欲しいと思っていたので今回の搭載は色再現が統一されるのでうれしい限り。

 

また、GFX 50Sでの本機能は撮影後に約1秒ほどの処理時間を要したが、X-T3はX-Processor 4の高速な画像処理により処理時間が0秒になるどころか連写モードでも使用できるようになってしまったのだから驚くほかない。

↑展望台から撮影した諏訪湖の夜景。街灯の明かりがカラフルな景色だが、カラークロームエフェクトを「強」にすることで色飽和することなく色鮮やかに描かれている/富士フイルムX-T3 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR マニュアル F11 60秒 ISO640 WB:2950K

 

【まとめ】Xシリーズの新しい表現域を押し広げる渾身の一台

X-T3の進化には驚愕した。X-T2も非常に優れたカメラであったがX-T3の性能は一回りも二回りも向上している。特にAFの進化はこれまでは難しかったような動きの激しい被写体でさえも容易に撮影できるようになった。

 

ルックスはフィルムカメラを彷彿とさせるスタイリッシュなものだが、電源を入れた瞬間にX-T3はモンスターマシンとなる。どのような撮影シーンでも期待以上の結果を残してくれることは間違いない。

 

Xの美しい色で世界のありとあらゆる被写体を捉えたい。そんな貪欲なユーザーにぜひとも使ってもらいたい一台だ。