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2018/10/16 19:30

拡大するワイヤレスオーディオ市場――老舗メーカー「オーディオテクニカ」の発表会にも2極化の波

iPhoneやAndroidスマートフォンでヘッドホン端子の廃止が相次いでいることもあり、ポータブルオーディオを中心にワイヤレス化の波が一層強くなっています。オーディオテクニカの調査によれば、2018年度4月~8月のヘッドホンの販売比率(販売金額ベース)は、有線(ワイヤード)タイプが38%だったのに対し、ワイヤレスタイプは62%となっており、売れ筋がワイヤレスタイプに移行したことが数字にも表れています。

↑ヘッドホンの販売比率(オーディオテクニカ調べ)

 

一方、オーディオテクニカの販売数量シェアでは有線タイプが約8割を占めています。有線タイプはバランス化やリケーブルなどがトレンドとなっており、高価格で付加価値を高めた製品が人気となっているため、ブランド力の高い同社では有線タイプが支持されているとみられます。

↑オーディオテクニカの製品機器別販売数量シェア

 

このように、ポータブルオーディオ市場では、広い層に普及しつつあるワイヤレスタイプと、オーディオファンなど音質を重視する層に支持される有線タイプの2極化が進んでいます。2極化の波は、例年より1か月ほど前倒しで開催されたオーディオテクニカの新製品発表会でも見ることができました。さっそく今回発表された新製品を見ていきましょう。

 

満を持して2つの完全ワイヤレスイヤホンが登場

今回発表されたポータブルオーディオ11製品のうち、ワイヤレス製品は4製品とやや少なめ。そのなかで注目したいのは、満を持して登場した2つの完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW」と「ATH-SPORT7TW」でしょう。

↑「ATH-CKR7TW」(11月9日発売/実売予想価格2万7000円前後)

 

↑「ATH-SPORT7TW」(11月9日発売/同2万3000円前後)

 

同社の調査によると、2018年4月~8月のワイヤレス製品における完全ワイヤレスのシェアは43.8%と、約半数にのぼる勢い。それだけに、いま完全ワイヤレスイヤホンをリリースしなければ市場で遅れを取ってしまいかねません。

↑2018年4月~8月のワイヤレス製品における完全ワイヤレスのシェアは43.8%

 

同社は2018年夏に初の完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKS7TW」を発売する予定でしたが、接続性能が基準に達しないことを理由に発売中止となった経緯があるため、今回の2モデルには並々ならぬ意気込みがあるのではないでしょうか。

↑発売中止となった「ATH-CKS7TW」

 

“原音再生”や“高解像度”などをうたう「Sound Reality(サウンド・リアリティ)」シリーズ初の完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW」は、AKM製DAC&ヘッドホンアンプ「AK4375」の採用や、音響エリアと電気エリアを分割し高解像度再生を実現する「デュアルレイヤー・テクノロジー(PAT.P)」など、高音質化技術をふんだんに投入したモデル。

 

 

一方、スポーツ向けラインの「SONICSPORT(ソニック・スポーツ)」では、水洗い可能な防水性能(IPX5)や装着しながら周囲の音も聴くことができる「ヒアスルー」機能などを備えたスポーティモデル「ATH-SPORT7TW」を発売。ユーザーの好みや用途に応じて選べる、個性の異なった2つのラインナップを用意します。

 

 

多機能&ロングバッテリーなワイヤレスヘッドホンも

もうひとつ注目しておきたいのが、同じSound Realityシリーズより登場するワイヤレスヘッドホン2モデル。上位モデルの「ATH-SR50BT」は、環境ノイズを抑えて音を聴きやすくする「ノイズリダクション」機能に加え、音楽を聴きながら周囲の音も再生する「ヒアスルー」、駅のアナウンスなどを聴くために瞬間的に再生音をミュートできる「クイックヒアスルー」機能を搭載。様々なシチュエーションで使える多機能モデルとなっています。

↑「ATH-SR50BT」(11月9日発売/同2万3000円前後)

 

下位モデルの「ATH-SR30BT」は、4色の豊富なカラーバリエーションと、連続再生時間約70時間というロングバッテリー性能が特徴。1回の充電で約1か月使える(1日2時間使用)というのは、ワイヤレスモデルは充電が面倒……と考えるユーザーにとってメリットが大きいのではないでしょうか。

↑「ATH-SR30BT」(11月9日発売/同1万3000円前後)

 

また、「ATH-SR50BT」からノイズリダクション機能などを省いた、ハイレゾ対応の有線モデル「ATH-SR50」もラインナップされています。こちらは、通常の3.5mmステレオミニケーブル(1.2m)に加え、4.4mmバランスケーブル(1.2m)が付属するのが特長。手軽にバランス接続を楽しみたいユーザーにぴったりの製品となっています。

↑「ATH-SR50」(10月19日発売/同1万8000円前後)

 

有線タイプはハイエンド化が進む

ワイヤード(有線)製品は、オーディオテクニカらしさが光る音質にこだわったモデルが充実しています。注目は、音響特性に優れたチタンをハウジングに使用したハイエンド・ポータブル「2000Ti」シリーズ。ヘッドホンやカナル型イヤホンのほか、最近では珍しいインナーイヤー型イヤホンも取揃えています。

 

価格はヘッドホンが14万円前後、イヤホンが5~8万円前後という高めの設定ですが、パーメンジュールを採用した磁気回路やDLC(Diamond Like Carbon)コーティング振動板を採用するなど、同社のハイエンドクラスの製品に使われる技術を採用しており、「外出先でもいい音で音楽を楽しみたい」というユーザーのニーズを叶えるものとなっています。

↑「ATH-AP2000Ti」(10月18日発売/実売予想価格14万円前後)

 

↑左がカナル型の「ATH-CK2000Ti」(10月18日発売/同8万円前後)、右がインナーイヤー型の「ATH-CM2000Ti」(10月18日発売/同5万円前後)

 

このほか、人気の定番ヘッドホン「MSR7」シリーズの最新モデルとして、DLCコーティング振動板の採用などにより進化した「ATH-MSR7b」や、木製ハウジングを本革で覆ったラグジュアリーなヘッドホン「ATH-L5000」、2000円のスポーツイヤホン「ATH-SPORT10」がラインナップされており、ハイエンドモデルを中心に幅広いラインナップとなりました。

↑「ATH-MSR7b」(10月19日発売/同3万円前後)

 

↑「ATH-L5000」(12月14日発売/同46万円前後)

 

↑「ATH-SPORT10」(10月19日発売/同2000円前後)

 

ワイヤレス製品のラインナップで、他社に比べやや遅れを取っていたオーディオテクニカですが、今回発表された完全ワイヤレスイヤホン2モデルを中心に巻き返しを狙うものと思われます。年々シェアを伸ばしていくワイヤレス製品でもこれまでと同様にユーザーの支持が得られるか、注目が集まっています。