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カメラ
2019/1/4 19:00

まさに性能最優先。プロを魅了するペンタックス“新・スターレンズ”珠玉の1本

解像感は? ボケは? HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AWを実写チェック

続いては、HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AWの描写性能をさまざまな角度から検証してみたい。

 

<F1.4開放時の描写性能>

↑こちらの画像の中央部と周辺部をそれぞれ部分拡大して検証/ペンタックス K-1 MarkⅡ HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW 絞り優先オート F1.4 1/1000秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO100 三脚

 

画面中央部

 

画面左上

 

F1.4の絞り開放時の画質。そのあたりが、既存の50ミリと最新光学設計の50ミリとの違いだったりする(まあ、既存の50ミリの開放付近の少しソフトな(アマい)描写も、持ち味として作画効果に利用する場合もあるが……)。

 

しかし、このHD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4の開放画質は、画面の中央から周辺部まで、乱れもなくて非常にシャープである。また、にじみやフレアっぽさも感じさせないクリアさにも感心した。

 

<背景ボケの印象>

ペンタックス K-1 MarkⅡ HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW 絞り優先オート F1.4 1/125秒 -0.7補正 WB:太陽光 ISO100

 

“解像力の高さ”は、レンズ設計時における重視な要素だが、その代償として“ボケ描写の汚さやかたさ”が気になるレンズも少なくない。開放F値の明るいレンズは、ボケを生かした撮影に使用されることも多い。それだけに、単にシャープなだけでなく、ボケ味にも気を配った設計のレンズが望ましい。

 

その点、HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4は、従来の★(スター)レンズ以上の解像性能だけでなく、ナチュラルなボケ味も追求した製品である。変形ガウスタイプの後群に加えて、前群に補正レンズ群を配置することで、汚い描写になりがちな“二線ボケ”の元になる収差を補正している。これにより、エッジ部分が強調されないナチュラルなボケ味が得られ、点光源の“玉ボケ”も全体が均質な明るさになり、その輪郭のエッジも強調され、やわらかい印象になるのである。

 

上の写真の場合も、ピントを合わせた柱の右奥にある柱のボケ具合などを見ると「とても自然で柔らかなボケだなぁ」と感心する。

 

<F1.4開放時の周辺光量>

F1.4・周辺光量補正/オフ

 

F1.4・周辺光量補正/オン

 

開放付近の絞りで撮影すると、画面周辺部(特に四隅)が暗く落ち込む“周辺光量低下”が目立つレンズは多い。特に、青空のような全体がフラットな被写体や背景だと、その落ち込みが顕著にあらわれてしまう。

 

このレンズも、F1.4の開放で青空を撮影してみたところ、周辺部が暗くなる様子が確認された。しかし、その落ち込み具合はあまり大きくないので、こういったフラットな被写体でなければ気にならない場合も多いだろう。

 

また、K-1 MarkⅡに搭載されているレンズ補正機能の「周辺光量補正」を使用すれば、その周辺部の落ち込みも劇的に改善される。

 

<逆光撮影時のクリアさ>

ペンタックス K-1 MarkⅡ HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW 絞り優先オート F2.8 1/200秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO100

 

逆光撮影時に、ゴーストやフレアの発生が目立つか?クリアな描写が得られるか? このあたりも、古いレンズと新しいレンズで差が出やすい部分である。

 

HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4は、優れた低反射特性を持つ最新のエアロ・ブライト・コーティングⅡやHDコーティングなど、独自のレンズコーティング技術を採用。それによって、逆光でもゴーストやフレアの発生を抑えた、クリアでコントラストの高い描写を得ることができる。

↑画面内に強い光源が入る場合は別だが、多くの逆光時でゴーストやフレアの抑制に役立つレンズフード。本レンズには大型で花形のレンズフードPH-RBB72が付属する

 

描写力を生かした作例いろいろ

次に、本レンズの描写力を存分に生かした作例をご覧いただこう。

 

【作例①】

木の幹に絡む、色づいたツタの葉。その多くの葉のなかから、先端部に小さな穴のある一葉に注目し、その葉にピントを合わせる。F1.4の開放で撮影したので、後方にある葉は適度にボケていき、それが“立体感”を感じさせる。画面右側に写り込む、細い幹のボケ具合も自然で好ましい。

ペンタックス K-1 MarkⅡ HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW 絞り優先オート F1.4 1/60秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO800

 

【作例②】

深い緑色の葉のなか、明るくて鮮やかな黄色のバラの花が、その存在感を見せつける。背後には木漏れ日のような明るい部分もあり、それが“玉ボケ”状に描写される。こういった部分が画面周辺部にある場合、開放付近の絞りで撮影すると、丸いボケが楕円状に変形する「口径食」が発生する。まあ、本レンズは口径食が目立ちにくい設計になっているようだが、万全を期して1段ほど絞って撮影した。円形絞りも採用されているので(F2.8まで)、角の出ない美しい玉ボケが得られる。

ペンタックス K-1 MarkⅡ HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW 絞り優先オート F2 1/200秒 WB:太陽光 ISO200

 

【作品③】

公園の芝生すれすれの高さにカメラを構え、芝生越しに公園内の木立にピントを合わせた。F1.4開放によって大きくボケる芝生が何だが幻想的……。また、画面右上に夕日を写し込んだが、クリアでヌケの良い描写に感心した。ピントを合わせた木立ちの枝や葉のシャープさも好ましい。

ペンタックス K-1 MarkⅡ HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW 絞り優先オート F1.4 1/800秒 +0.3補正 WB:太陽光 ISO100

 

新スターレンズの実力を見せつける“珠玉の1本”

カタログなどに掲載される「HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW」の製品画像。そして、仕様表に記載されているサイズや質量。それらを目にしたとき、正直、少し戸惑いを覚えた。「どんなに光学性能が優秀でも、ここまで大きくて重い標準レンズだと、快適に使えないのでは?」と。

 

しかし、前述のとおり、使用ボディがボリューム感のあるK-1 Mark Ⅱということもあり、不思議と大きさや重さは気にならなかった。また、使用感の良さも気に入ったし、何よりも“描写の素晴らしさ”に感心した。絞り開放から画面全体がシャープでクリア、二線ボケを抑制し玉ボケも美しい、無限遠から最短40cmまで安定した光学性能……。使い込むほど、その描写の良さに魅了された。

 

大きさと重さ以外に“価格が高め”というハードルも待ち受けている。しかし、この「HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW」は、その価格に見合う実力を備えた“珠玉の1本”と呼べるレンズだと、自分は思う。

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