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2019/1/8 17:00

【レビュー】ワイヤレス市場に新風を巻き起こすか? 新進気鋭の完全ワイヤレスイヤホン Mavin「Air-X」

2018年はワイヤレスオーディオ市場が急拡大した1年でした。なかでも、左右のイヤホンがケーブルでつながっていない「完全ワイヤレスイヤホン」は、市場拡大をけん引した注目アイテム。そんな右肩上がりのワイヤレス市場に、最新のテクノロジーを携えて参入する新規メーカーも続々登場しています。

 

今回は、新進気鋭のブランドMavinが発売した完全ワイヤレスイヤホン「Air-X」のレビューをお届けします。

↑Mavin「Air-X」/実売価格1万9850円

 

↑カラーはブラック、ホワイト、ブルーの3色が国内展開されます

 

この「Air-X」の最大の特徴は、クアルコムの最新チップ「QCC3026」を採用していること。これにより、イヤホンだけで最長10時間の連続再生を実現したほか、クアルコムのSoC「Snapdragon 845シリーズ」を搭載したAndroidスマートフォンなどと組み合わせることで、「Qualcomm TrueWireless Stereo Plus」(TWS Plus)という次世代のワイヤレス接続方式を利用することが可能になります(※)。

※:再生機のファームウェアの更新が必要。2019年1月7日時点では対応ファームウェアは未配信

 

次世代の通信方式で音が途切れない

このTWS Plusは何がすごいかというと、完全ワイヤレスイヤホンの弱点でもあった通信安定性が大きく改善されると見込まれていること。これまでの完全ワイヤレスイヤホンは、右か左のどちらかが親機となってスマホなどと通信し、親機からもう一方の子機にデータを送るというリレー方式をとっていました。つまりスマホ→親機→子機というようにデータが伝送されているのです。

 

完全ワイヤレスイヤホンを耳に装着したとき、親機と子機のあいだには人間の頭がありますが、水分を大量に含んだ人間の肉体は電波を通しにくく、通信安定性を阻害する要因のひとつにもなっていました。この問題を解決するため、親機→子機間をNFMI(Near Field Magnetic Induction/近距離磁気誘導技術)という、障害物に強い方式を用いて通信する機種も開発されています。

 

クアルコムが提案するTWS Plus方式では、スマホなどの再生機から左右のイヤホンそれぞれに音声データを伝送することができるため、親機と子機の区別が不要となり、ワイヤレス接続時の通信安定性も向上されるとしています。

 

「Snapdragon 845シリーズ」を搭載したAndroidスマホは、ソニーモバイルの「Xperia XZ3」やサムスン「Galaxy S9」、シャープ「AQUOS R2」など続々と登場していますが、まだTWS Plusに対応するためのファームウェアアップグレードが用意されておらず、現時点ではTWS Plus方式を利用はできません。しかし、近い将来にファームアップで利用できるようになることは間違いないので、いまのうちに「Air-X」を選択しておくのもアリでしょう。ちなみに、TWS Plusに対応していない機器でも、通常の完全ワイヤレスイヤホンとして使用できますのでご安心ください。

 

充電ケースは標準的なサイズもややチープな印象

本機はすでに国内のECサイトなどで発売されており、実売価格は1万9850円。完全ワイヤレスイヤホンは、安いものなら5千円台、オーディオメーカーのハイエンドなら3~4万円台のものまであるので、ミドルクラスの価格帯に属するといえるでしょう。ライバルとなるのは2万円前後の「EARIN M-1」やソニー「WF-SP700N」、オーディオテクニカ「ATH-CKR7TW」あたりでしょうか。

 

本機は一般的な完全ワイヤレスイヤホンと同様に、専用の充電ケースとワイヤレスイヤホンがセットになったもの。基本的に、イヤホンを使用しないときはケースに収納して持ち運ぶことになります。

 

付属の充電ケースは、2万円近いミドルクラス機種にしてはプラスチックの質感が少々チープな印象。完全ワイヤレスイヤホンはケースを必ずセットで持ち運ぶものなので、所有欲を満たしてくれるケースデザインかどうかは重要な要素だと思います。同クラスのライバル機はもう少し高級感を漂わせているので、ケースの素材やデザインはもっと頑張ってほしいところ。

 

サイズは手のひらに収まるコンパクトさで、シャツやジャケットの胸ポケットにも入れられます。ケースサイズは公表されていないようですが、手元の物差しで測ったところ、ざっくり横5×縦5.5×厚さ2cmくらいでした。重量はイヤホンを格納した状態で約65g。

 

イヤホンはサイズが公表されており、約17×18×15mmで、重量は1個約4.5g。際立って大きくも小さくもない、という感じでしょうか。ケース、イヤホンのいずれのサイズ・重量とも、完全ワイヤレスイヤホンのなかでは標準的なものだと思います。

 

メリハリの効いた音質。遮音性も優秀

続いて、気になる音質をチェックする前に、まずはペアリングを行いましょう。Air-Xのペアリング方法はやや変わった方式で、ケースにイヤホンをセットしてフタを開けたままの状態で、ケース側面のペアリングボタンを押して行います。初回のペアリングはケースからイヤホンを取り出して行う機種が多いので、お間違えのないように。

↑ペアリングボタンはケースの右側にあります

 

スマホなどの再生機器側のBluetooth設定から、「AirX_L」という機器を選び接続完了と表示されればOK。2回目以降は、ケースから取り出すだけで自動的に接続されます。使い終わったあとはケースに戻せば自動で電源がオフになります。

 

Air-XのBluetoothバージョンは最新のVer.5.0で、コーデックはSBC、AAC、aptXに対応しており、iPhoneやAndroidスマホならより高音質なワイヤレス再生が楽しめます。連続再生時間はイヤホンのみで約10時間、ケースで充電しながら使うと最長約50時間と、一般的なモデルよりもロングバッテリーとなっています。片道1時間くらいの通勤・通学なら、2~3週間はケースの充電不要で使えるのではないでしょうか。

↑ケースの充電にはマイクロUSB端子を使用

 

本機には楕円形(S/Mサイズ)と丸型(Sサイズ)の2つのイヤーピースが付属するほか、セキュアフィットスタビライザという装着性を高めるフック付きのカバーも同梱されています。今回は、楕円形のイヤピースにスタビライザを装着した上で使用してみました。再生機はiPhoneを使用しています。

↑ループ状のフックがついたスタビライザにより装着時の安定性を高めることが可能

 

イヤホンを耳に装着してみると、スタビライザの効果もあってか、かなりしっかりフィットしました。完全ワイヤレスイヤホンにありがちな、「歩いているときや電車に乗っているときに耳から外れないかな……」という不安もありません。遮音性もかなり高いので、地下鉄などの騒音環境下でも低いボリュームで音楽が聴き取れます。

 

イヤホンは、6mm径のドライバーによる「Extra Bass Speaker」を採用しており、従来よりも広い音域の再生を可能にしているとのこと。

 

そのサウンドは、ひとことで言えば「メリハリの効いたパキッとした音」。低音がしっかり出ており、屋外でもノリよく楽しめるチューニングが施されている印象です。低域重視のモデルにありがちな、“低音で中高域がマスキングされる”ということもなく、低音の効いた音楽でもボーカルがちゃんと前に出てくる点が好印象。欲をいえば、もう少し高域が伸びてほしいところですが、移動中や電車の中で聴くならそれほど気になりませんでした。

 

接続安定性は、電車の中やカフェなどの場所ではまったく問題ありませんでしたが、混雑する山手線の駅構内などでは音の途切れが若干発生してしまいました。この機種の最重要ポイントであるTWS Plusについてはまだ試すことはできていませんが、スマホがファームアップにより対応すれば安定性も向上してくれるでしょう。

 

イヤホンには押しやすい大きなボタンが搭載されており、装着しながらでも非常に操作しやすくなっています。操作方法も「ボタンを1回押す」「ボタンを2回連続で押す」「ボタンを長押しする」の3パターンなので、すぐに覚えられます。操作がシンプルなのは、個人的にはとてもいいと思います。

 

基本性能が高く初心者にもオススメ

Mavin「Air-X」は、イヤホンを装着したまま周囲の音を聴ける「外音取り込み機能」やノイズキャンセリング機能などのトレンド機能こそ備えていませんが、音質や操作性などの基本性能はしっかり作られている印象。約2万円という価格ですが、初めて完全ワイヤレスイヤホンを使うという方にも使いやすく、オススメできるモデルです。また、現在、「Snapdragon 845シリーズ」を搭載しているスマホをお持ちの方なら、Air-Xの真骨頂ともいえるTWS Plus方式のワイヤレス接続が利用可能となるため、該当機種をお使いの方にもオススメ。

 

接続安定性が弱点だった完全ワイヤレスイヤホンの流れを変えるかもしれないTWS Plusは、今後要注目のテクノロジーですので、ぜひチェックしてみて下さい。