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2019/3/20 19:45

旅行・出張が多い人にオススメ! 自然なノイキャン効果が魅力の「ATH-ANC900BT」どっぷりレビュー

オーディオテクニカのノイズキャンセリングヘッドホン「QuietPoint(クアイエット・ポイント)」シリーズがデビューから早くも12年を迎えました。今回はシリーズ史上・最高の静寂を実現したという新製品「ATH-ANC900BT」を日常生活の色んなシーンで使ってみたので、レポートしたいと思います。

↑オーディオテクニカ“QuietPoint”シリーズの最新ノイズキャンセリングヘッドホン「ATH-ANC900BT」(実売価格3万7250円)

 

ATH-ANC900BTは左右ハウジングの内外側に1基ずつのマイクを配置して環境音をきめ細かく拾い、デジタル化した音声信号からノイズ成分を高精度に抽出。逆位相の音をぶつけてノイズをクリアに消音する“デジタルハイブリッド方式”のノイズキャンセリング技術を採用しています。

 

今回のモデルでは独自開発のモバイルアプリ「Connect」を使ってノイズキャンセリング効果の強度を変えたり、外音を取り込みながら音楽が聴ける「ヒアスルー」機能を調整できる機能なども搭載しています。ちなみにConnectアプリは昨年発売の完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW」「ATH-SPORT7TW」、Bluetoothヘッドホン「ATH-SR50BT」など他のモデルと共通のコンパニオンアプリです。ユーザーインターフェースがとてもシンプルで、使いたい機能にすぐリーチできるところが良いと思います。

↑本体の設定に使うモバイルアプリ「Connect」

 

装着スタイルは耳を覆うアラウンドイヤーで、クッションの柔らかいイヤーパッドとあいまって装着感はとても快適。デザインは無駄な装飾性がなく極めてシンプル。カラバリも今のところブラック1色だけなのでやや味気ないようにも思いますが、スーツと一緒に着こなしやすいので、ビジネスパーソンの通勤スタイルによく合いそうです。

↑長時間使用時の心地よさを追求した柔らかなイヤーパッド

 

内蔵バッテリーは1度のフル充電からBluetooth/ノイズキャンセリングの両方をオンにした状態で最長約35時間持つという驚異のスペックを実現しています。パリ―東京間を飛行機で往復しても無充電でおつりが来ますね。まあ実際には途中で充電してしまうと思いますが、信頼の置ける底力です。それにしても昨年発売のBluetoothヘッドホン「ATH-SR30BT」のフル充電からの連続音楽再生は約70時間にも到達しているし、最近のオーディオテクニカのBluetoothヘッドホンは優れたバッテリー性能にも要注目です。

↑ATH-SR30BT

 

バッテリー関連でもう一つ触れておくと、ATH-ANC900BTは15分間の急速充電で約3時間の音楽リスニングが楽しめるそうです。出かける直前にちょっと充電しておけば、往復の電車の中でバッテリーが切れる悲劇などからも解放されるのではないでしょうか。

 

ハイレゾにも対応した素直で伸びやかなサウンド

ノイズキャンセリング機能の実力を屋外でフィールド検証をする前に、素の音の実力を静かな室内でチェックしておきましょう。本機はaptX/AAC/SBCの各Bluetoothオーディオのコーデックに対応しているヘッドホンです。筆者はふだんスマホで音楽を聴くときはiPhoneの方が多いのですが、一応Google Pixel 3 XLでaptXの音も確かめてみました。

↑iPhoneでATH-ANC900BTのワイヤレス再生の音を確認しました

 

元音源のディティールを描き込むところ、力強さを前面に打ち出すところの両方がとても素直にありのまま引き出せるヘッドホンです。自然な音楽がすうっと体に馴染んでくるような手応えがありました。DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施した振動板の効果がクリアできめの細かい高域によく表れています。女性ボーカルの伸びやかさ、ピアノの繊細な輪郭の再現力などにも富むと思います。音場も広く、ゆったりとした余裕を感じさせます。

 

そしてとても驚いたのは、ノイズキャンセリング機能のオン・オフを切り替えても音の聴こえ方が一切変わらないところ。もちろんスイッチは手動でオンにするし、ボイスガイドがオンになったことを知らせてくれるのですが、例えるなら「いつのまにか静寂に包まれている」ような自然な使い心地はとても好感が持てました。

 

ちなみに有線接続時にはハイレゾヘッドホンになります。ノイズキャンセリング機能による変な色付けもない音なので、ハイレゾ対応プレーヤーにも相性が良いのではないでしょうか。

↑有線接続時にはハイレゾ対応のヘッドホンとして活躍します

 

ノイキャンを使っても自然な音楽再生を実現

続いてノイズキャンセリングヘッドホンとしての実力をいくつかのシチュエーションで試してみました。本機はアプリからノイズキャンセリングの強弱効果を3段階で切り替えることができます。最強が「Airplane(飛行機)」、中程度が「On the Go(街の中)」、そして最も穏やかな「Office/Study(室内)」です。

↑ノイズキャンセリングとヒアスルーの設定画面

 

↑ノイズキャンセリングの効果は3段階から選べます

 

「Airplane」モードは2月末から3月頭にMWC19のイベントを取材するためバルセロナへ向かったときに往復の飛行機で試しました。「シリーズ史上最高の静寂」がどれほどのものなのかと、多少身構えながらテストにのぞんだのですが、消音効果は意外に穏やかな感じがしました。ノイズキャンセリングヘッドホン独特の、空気が耳を塞ぐような圧迫感も非常に少ないため、長時間のフライト向きだと感じました。

↑取材のため海外に訪れた際にATH-ANC900BTを飛行機の中などで試してみました

 

あるいは本機を試したら「もっとグッと抑え込まれるような感じのノイキャン効果が好きだ」と答える方もいるかもしれません。でも筆者は最近のノイズキャンセリングヘッドホンのトレンドは「強い消音効果」よりも、「自然な音楽再生能力」を重視する方に向かっていると感じています。その点では、このATH-ANC900BTは最先端の流行を押さえていると思います。

 

「On the Go」は近所の街を歩いたり、電車に乗りながら試しました。あまり「Airplane」と差がないようにも感じたので、筆者は電車やバスの中で使うなら「Airplane」を選ぶと思います。そして歩きながら使う時にはヒアスルーをオンにしてしまうでしょう。

 

本機は左側のイヤーカップにコントローラーが集中しています。イヤーカップの表側はタッチパネル、側面に電源スイッチやクイックヒアスルーを切り替えるためのサブスイッチボタンがあります。イヤーカップを手で覆って約2秒間ホールドするとノイズキャンセリング>ヒアスルー>オフ(BT再生のみ)が循環します。ヒアスルーとクイックヒアスルーの違いは、ヒアスルーの方が音楽のボリュームはそのままに環境音がミックスされます。

↑左側イヤーカップの側面パネルがタッチコントローラーになっています。ロゴの上下の位置あたりをタップすると音量が上下します

 

↑左イヤーカップの側面にある電源スイッチをオンにすると自動的にペアリングモードで起動します。となりにあるのがクイックヒアスルーを起動するためのサブスイッチボタン

 

↑左のイヤーカップを手のひらで覆うとノイズキャンセリング/ヒアスルー/オフが切り替わります。アプリの中には詳細な操作方法の解説があります

 

3つめの「Office/Study」はカフェで試しました。周囲の人が話している“雰囲気”が適度に伝わってくる聞こえ方です。エアコンの運転音など低めのノイズはほどよく消されます。ただ、他のモードと同様にむやみな消音効果は感じられません。しっかりと耳障りな音は消しているのですが、長時間使い込むユーザーにストレスを与えない独自の「QuietPoint」に辿り着いた、ヒトに優しいノイズキャンセリングヘッドホンとして評価したいと思います。

 

聴き疲れしないノイズキャンセリング効果が魅力

本機の価格はオープンですが、本稿執筆時点での想定売価は3万円台半ばほど。最新のノイズキャンセリング機能を搭載するBluetoothワイヤレスヘッドホンに求められる機能を一通り備え、音楽再生を重視した聴き疲れしないノイズキャンセリング効果という特徴を備えていることを考えれば、本機はとてもオススメできる選択肢だと思います。

 

あえて気になった点を挙げるとすれば、ひとつ左イヤーカップのタッチセンサーに関わる部分でしょうか。正円形のパネルの中心にあるブランドロゴが音楽の再生/一時停止操作のボタンになっていて、その上下が音量のアップダウンに割り当てられているのですが、慣れないうちは操作に反応するエリアが手探りで探しづらかったです。あとは黒以外のカラフルなバリエーションも欲しいですね。

 

本体はコンパクトに折り畳むことができて、パッケージにはキャリングケースも付属しています。筆者もしばらくはこのヘッドホンが旅のお供として欠かせなくなりそうです。