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2019/4/17 21:00

新しい「AirPods」はココが変わった! オススメのタイプも徹底解説

3月末に約2年ぶりのアップデートを遂げて発売されたアップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」のニューモデルをレビューしたいと思います。

↑アップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」が約2年ぶりにアップデート。強化されたポイントをレポートします

アップル AirPods

Apple AirPods with Charging Case

Apple AirPods with Charging Case

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新しいAirpodsのポイントその1: コンパクトなデザインは前モデルを継承

筆者は2016年12月に発売された初代のAirPodsを発売日に購入して以来ずっと使っています。ほかの完全ワイヤレスイヤホンに比べると半密閉型構造のハウジングゆえに開放感のあるサウンドと、まわりの音も聞こえてくる独特なリスニング感がAirPodsらしくて気に入っています。いくつか所有している密閉構造のカナル型完全ワイヤレスイヤホンとAirPodsを、その日の気分に合わせて使い分けていますが、ケースも含めた本体がとてもコンパクトなので、手荷物がとても多い日にもよくAirPodsを選びます。

↑ハウジングに音の通り道になるスリットを設けて開放的なサウンドとしている点がAirPodsの特徴です

 

↑手になじむコンパクトなケース。正面にLEDランプを備えています

 

新しいAirPodsはイヤホン、ケースともに見た目は旧モデルとほとんど変化はありません。発表前にはカラバリを期待する声もありましたが、いまのところは色調も変わらないホワイトの1色展開です。

↑左が新製品、右が従来製品のAirPods

 

装着方法も前のAirPods、そして有線タイプのEarPodsから継承するイヤーチップなどを使わないインナーイヤホンスタイル。装着感が心もとないという声もあるようですが、筆者の耳の形にはちょうどよくフィットしました。初代のAirPodsを使っているころから、不意にイヤホンがポロっと耳から落ちたことは一度もありません。ただAirPodsは本体がツルっとしており、耳から外してケースにしまうまでの間は手を滑らせないように気を付けているので、ハウジングを滑りにくいマット仕上げにするなど、ちょっとした改良も加えて欲しかったと思います。

 

新しいAirpodsのポイントその2: 新開発のH1チップが省電力・低遅延を可能に

新しいAirPodsは見た目には現れない「中身」が大きく進化しています。その中核を支えているのがアップルの独自開発によるワイヤレスオーディオ専用のSoC(システム化されたICチップ)である「Apple H1」です。初代のAirPodsに搭載されていた「Apple W1」チップよりも、ワイヤレス通信の接続性能やパワーマネージメント(駆動時に消費する電力の効率化)が向上しているとのこと。

 

Apple H1チップに関わるイノベーションが体感でわかるものなのか、新旧製品を比べてみました。

 

iPhoneとの初期接続設定はいままで通り。ケースのふたを開けるとiPhoneの画面に製品の画像と接続方法のガイダンスが表示され、ケース背面のボタンを長押しすると自動的に接続設定が完了します。iPhoneとiPadなど、複数のiOS、macOS機器で1台のAirPodsを共用する場合は、1度ペアリングを済ませたあとは、設定からAirPodsを選択するだけでプレーヤー機器をスイッチできます。

↑Bluetooth設定のAirPodsを選択するとセットアップ画面が表示されます

 

ペアリング後に毎度AirPodsをiPhoneと接続する際のスピードがまた一段と速くなっています。いままでは両耳にAirPodsを装着した頃に接続完了を知らせるチャイムが鳴っていましたが、新しいAirPodsは片側のイヤホンを耳に乗せようとした瞬間にもうチャイムが聞こえてきます。ここまで速くなる必要はあるんだろうかとも思いますが、音楽再生を始められるまでにもっと長い間合いのある完全ワイヤレスイヤホンに比べると確かにストレスがありません。

 

接続された後は左右のペアリングが外れたり、ノイズや音途切れが発生することもほとんどありません。この点でも完全ワイヤレスイヤホンとしてのAirPodsの使いやすさは傑出しています。

 

AIアシスタントの音声コントロール機能「Hey Siri」のハンズフリー対応については、便利かどうか意見が分かれるところかもしれません。自宅など室内で使う時には有り難い時もありますが、屋外ではやはり周りに人が大勢いる環境で「ヘイ、シリ」と声に出す勇気を筆者はまだ持てません。確かに音声コマンドへの反応は俊敏ですが、駅のホームや人通りの多い道を歩きながら、または賑やかなデパートの地下食品街などでは少し声を張らないとコマンドが認識されないこともありました。

 

iPhoneのBluetooth設定に並ぶ接続機器からAirPodsを選択すると、AirPodsをダブルタップした時のリモコン操作の設定をいくつかのパターンから設定できます。従来のAirPodsと同じようにダブルタップでSiriを呼び出せるので、筆者は左を楽曲の前方スキップ、右を一時再生・停止に設定しています。早くボリュームのアップダウンを本体の操作でもできるようにして欲しいと思います。現在、iPhoneをポケットやバッグから取り出さずに音量を操作する場合は、いったんAirPodsのSiriに話しかけて「音量を上げて・下げて」と話しかけるしかありません。筆者は声を出す代わりにApple Watchでボリュームを調整しています。

↑本体をダブルタップした時のリモコン操作を左右のイヤホンごとに設定できます

 

Siriのハンズフリー対応を実現するためにはAirPodsに内蔵するビームフォーミングマイクを常時オンにする必要があります。するとイヤホン側の待機時消費電力が上がってしまうことは想像に難くありません。にも関わらず初代のAirPodsから連続再生時間がイヤホン単体で約5時間、ケースを合わせて約24時間と「変わっていない」ことは、実はなかなかスゴいことです。Apple H1チップのパワーマネージメントが以下に効率よく最適化されているかがわかります。

 

アップルのWebサイトの説明によると、Apple H1チップによりワイヤレス接続時の音声信号の伝送遅延も低減されているそうです。iPhone XでYouTubeの映像コンテンツを再生してみると、人物の口元の動きと音声がズレをあまり感じません。ホームラン競争のゲームも操作のタイミングに対して音声が遅れるようなもどかしさもなく、いたって快適。ただアップル純正の音楽制作用アプリ「GarageBand」で電子ピアノを弾いてみたところ、打鍵のタイミングとAirPodsから聞こえてくる音が、特に速く弾くほどに若干ずれて聞こえます。シビアなDTMワークついてはやはりiPhoneやiPadに有線接続のヘッドホン・イヤホンを接続して行った方がいいかもしれません。

 

新しいAirPodsのケースはQi規格のワイヤレス充電に対応しました。従来通りLightningケーブルを接続する方法でもチャージはできますが、例えばiPhone 8以降のワイヤレス充電に対応するiPhoneを使っている場合は毎度ケーブルの抜き差しをしないでも、パッドにデバイスを置くだけでチャージができるので便利です。2つ以上のワイヤレス充電に対応する製品を所有しているとこの便利さがますます感じられると思います。またAndroidスマホのように「片方がUSB Type-C、片方がLightning」といった具合に充電ケーブルの形状が違うデバイスに1つの充電パッドを共用できるようになるといよいよ手放せなくなります。アップル純正のiPhoneとAirPodsが同時に充電できるAirPowerの商品化が見送られたことは残念ですが、サードパーティーからは似たコンセプトの製品も販売されています。

↑Qi規格のワイヤレス充電パッドに対応しています

 

新しいAirpodsのポイントその3: 音質はより明瞭に。買うならワイヤレス充電タイプを

AirPodsの音質は新旧モデルで変わっているのでしょうか。Apple Musicで配信されているスガ シカオのアルバム「Clover」から「月とナイフ」を再生しながら、iPhoneの側で音量を揃えて比較してみました。新しいAirPodsは音のつながりが滑らかになっています。比べて聴くと以前のAirPodsはバンドの楽器の音に対して、ボーカルのバランスが少し立って聞こえる印象があります。小室哲哉の「Digitalian is eating breakfast」から「RUNNING TO HORIZON」を聴いてみても、新しいAirPodsの方が演奏全体をより広くとらえて、シンセサイザーの細かな音の粒までしっかりと楽しませてくれます。低音の鳴りっぷりも力強く、音楽の熱量がアップしています。Apple H1チップのアンプやドライバーの振動板に改良を加えたのかもしれません。屋外で音楽や映画を再生してみても新しいAirPodsは音が聴きやすくなっていることを実感しました。

↑新しいAirPodsのサウンドを確認してみました

 

アップルが発売した2019年モデルの新しいAirPodsには、ケースのワイヤレス充電に対応しているモデルとそうでないモデルの2種類があります。もしこれから“初めてのAirPods”を手に入れることを検討されているなら、その価格差が5000円もあるとはいえ、筆者は迷わずワイヤレス充電に対応している方を選ぶべきだと思います。なぜなら、今後はファーウェイの「Mate 20 Pro」やサムスンの「Galaxy S10シリーズ」のように、スマホからイヤホンなどワイヤレス充電対応の機器にワイヤレスパワーシェアができる機器が増えそうだからです。将来iPhoneからAirPodsへのワイヤレス充電もできるようになると嬉しいですね。

↑サムスンのGalaxy S10シリーズのように、iPhoneも将来AirPodsをワイヤレス充電できるようになると、さらにワイヤレス充電に対応したことが活きてくるのではないでしょうか

 

一方、従来のAirPodsに満足しているという方は、いま急いで新しいAirPodsを買い増し・買い換えなくてもいいかと思います。ワイヤレス充電の便利さを実感したいのであれば、新旧AirPodsに対応する「Wireless Charging Case」の単品販売8800円(税別)を購入する手があります。あるいはApple H1チップの接続性の向上、Hey Siriのハンズフリー対応を試したい方には同じチップを搭載したBeats by Dr.Dreの「Powerbeats Pro」という選択肢ができました。AirPodsにはない耐汗・防沫仕様のイヤホンなので、「ふだん使いはAirPods、体を動かす時にはPowerbeats Pro」といった感じに使い分ければ毎日の音楽リスニングがますます楽しくなりそうです。