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2019/5/1 18:00

高級コンデジの代名詞、最強のスナップシューター……「GR III」、それは数々の異名をもつカメラ

シンプルで高品位なデザインと、高剛性なマグネシウム合金製の外装。そして、高画質設計の広角単焦点レンズ。そんなリコーのGRシリーズは、多くのズームコンパクトデジカメとはひと味違う、スナップ派カメラマン用に特化された(と感じられる)、通好みの高性能コンパクトデジタルカメラである。今春に登場したGR IIIは、1/1.8型センサーを採用する「GR DIGITAL」からは7代目。APS-Cサイズの大型センサーを採用する「GR」からだと3代目のモデルになる。

↑歴代GRシリーズ(GR DIGITALシリーズも含む)のボディデザインや操作性を踏襲する「リコー GR III」。内蔵フラッシュは非搭載に変更され、横幅は前モデルのGR IIよりも7.6mm短くなった。実売価格は11万7090円
RICOH デジタルカメラ GR DIGITAL III GRDIGITAL3

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前モデルの「GR II」からは、レンズ、イメージセンサー、画像処理エンジン、といった主要デバイスが一新されている。そして、機能面での最大のポイント(進化点)は、待望の手ブレ補正機構”SR(Shake Reduction)”が搭載されたことである。

 

AFも進化している。高速なAFが特徴の像面位相差AFと、ピント精度に優れるコントラストAFを組み合わせた「高速ハイブリッドAF」が搭載されたのだ。また、タッチ操作に対応した液晶モニターも採用されて、AF枠の移動などが直感的に行えるのも魅力的である。こういった機能の進化や追加によって、スナップ撮影時などでの速写性がより高まってくる。

↑一見すると、横幅が小さくなった以外は、前モデルGR IIと大きな変更は見られないGR IIIボディ。だが、よく見ると、モードダイヤルから緑色アイコンの「オート撮影モード」が消えている。この簡単に撮影できるモードの省略も“通好みのカメラ”と言える要素だろう

 

APS-CのGRシリーズでは初! 待望の手ブレ補正機構”SR”を搭載

一般的なコンパクトデジカメにはズームレンズが採用されていて、手ブレ補正機構も搭載されている。だが、歴代のGRシリーズの多くは、小型軽量ボディと高画質を両立させる狙いもあって高性能な単焦点レンズが採用されており、多くのモデルは手ブレ補正機構を搭載していなかった(広角レンズなので、そもそも手ブレが目立ちにくいため)。

 

だが、今回のGR IIIでは画素数がアップしたこともあってか、1/1.7型センサーを採用する「GR DIGITAL IV」以来、APS-Cセンサーを採用する機種では初めて、センサーシフト式の手ブレ補正機構”SR(Shake Reduction)”が搭載された。3軸方向の補正に対応し、シャッター速度4段分の補正効果が期待できるのである。特に、光量の関係でシャッター速度が遅くなりがちな室内や夕景・夜景撮影といったシーンで活躍してくれるだろう。

 

一般的に、手ブレが起きない低速側の限界シャッター値は「焦点距離分の1秒」と言われている(※35mm判換算)。だから、28mm相当の広角レンズを搭載するGR IIIの場合、手ブレ補正なしで安全なのは1/30秒までくらい。だが、そこに4段分の手ブレ補正効果が加わると、撮影状況などもあるがだいたい「1/4秒くらいまで」が安全圏内になる。その効果によって、撮影領域や表現が拡大する。

昼間でも薄暗い古い日本家屋で、囲炉裏に吊り下げられた鉄瓶を撮影。ISO1600まで感度を上げても、得られたシャッター速度は1/15秒以下。だが、手ブレ補正機構”SR(Shake Reduction)”によって、シャープに写し止めることができた/リコー GR III 絞り優先オート F2.8 1/13秒 WB:オート ISO1600

 

また、このカメラには、光量を2段分減らせる「NDフィルター」が内蔵されている。その機能を設定すれば、明るい場所で開放絞りが使用できたり、あえて通常よりも遅いシャッター速度で撮影できたりする(露出オーバーにならない)。シャッター速度が遅くなるぶん手ブレしやすくなるが、ここでも手ブレ補正の効果が活きてくる。

ゆっくりと回転する水車の動きを、低速シャッターで表現(動体ブレ)したいと思った。通常、日中の明るさだとあまり低速に設定できないが、NDフィルターと手ブレ補正機構”SR(Shake Reduction)”の組み合わせにより、思い通りの低速シャッター表現が実現できた/リコー GR III シャッター優先オート F6.3 1/2秒 -0.3補正 WB:オート ISO100

 

新GRレンズと24.2Mセンサーが高画質を生み出す

リコーのGRシリーズでは、28mm相当の広角単焦点レンズの搭載が代名詞ともなっている。ただし、今回のGR IIIに搭載されるGRレンズは、前モデルGR IIのモノとは異なる新開発レンズである。

 

焦点距離やF2.8の開放F値は同じだが、4群6枚構成の薄型光学系を採用している(GR IIのレンズは5群7枚構成)。そして、高屈折低分散ガラスや高精度ガラスモールド非球面レンズを最適に配置することで、歪曲収差(直線の歪み)や色収差を極限レベルまで抑制。それにより、歴代のGRレンズを凌ぐシャープネス性能を実現したとのこと。また、逆光撮影時のゴーストやフレアの発生も低減。そのあたりの描写の特徴は、今回の実写結果からも十分感じられた。

 

もちろん、レンズが作り出す映像を受け止める撮像センサーも重要になる。GR IIIに搭載されるAPS-CサイズのCMOSイメージセンサーは有効画素数約2424万画素で、高解像・広ダイナミックレンジが特徴。そして、画像処理エンジンには、新開発の「GR ENGINE 6」が採用されている。これによって、繊細なディテール描写などを可能にする。

鮮やかな青空に、白いハクモクレンの花が映える。こういった細かい絵柄では、どうしても細部の描写が気になってくる。こういった被写体でも、GR IIIに搭載される新規構成のGRレンズは、画面の隅々までシャープかつクリアに描写してくれた/リコー GR III 絞り優先オート F8 1/640秒 WB:オート ISO200

 

お稲荷さんの祠に取り付けられた鈴に注目しながら、F2.8の開放で背景をぼかす。ピントを合わせた鈴の質感描写が見事! また、適度にぼけた背景の描写もクセがなくて好印象である/リコー GR III 絞り優先オート F2.8 1/30秒 WB:オート ISO200

 

画面内に、眩しい太陽をアクセントとして取り入れる。かなり厳しい逆光条件になるが、ゴーストやフレアが目立たずクリアな描写が得られた/リコー GR III 絞り優先オート F8 1/500秒 WB:オート ISO200

 

↑細かい絵柄の被写体だと、本来は存在しない色が発生する「偽色」や、不自然な干渉模様が生じる「モアレ」が、気になるケースも出てくる。そういう場合には、手ブレ補正機構を利用して、露光中にイメージセンサーを細かく動かす「ローパスセレクター」が有効。この機能により、偽色やモアレが抑制できるのだ。もちろん、高解像なGRレンズの本来の描写力は、この機能をオフにすることで得られるのだが

新しい仕上がり調整機能「イメージコントロール」

写真の色鮮やかさやメリハリを調整する機能は、一般的には「仕上がり設定」と呼ばれている。文字通り、この絵作り機能の設定によって、写真の仕上がり具合や雰囲気は大きく変わるのである。

 

従来のGRシリーズでは、「画像設定」が仕上がり設定に相当する機能だった。また、それとは別に、特殊な作画効果が得られる「エフェクト」機能も搭載されていた。

 

今回のGR IIIでは、新たな画像調整機能として「イメージコントロール」が搭載された。これは「画像設定」と「エフェクト」を統合した機能である。スタンダード、ビビッド、モノトーン、ソフトモノトーン、ハードモノトーン、ハイコントラスト白黒、ポジフィルム調、ブリーチバイパス、レトロ、HDR調。この10種類のモードが基本になるが、各モードの彩度や色相やコントラストなどを細かく調整することも可能だ。

「ビビッド」で撮影。色鮮やかでメリハリのある仕上がりになるモード。公園内の植物や、青空などが鮮やかさに再現された/リコー GR III 絞り優先オート F8 1/320秒 WB:オート ISO200

 

「レトロ」で撮影。古い写真のような仕上がりになるモード。空の青色や門の朱色などの彩度が抑えられている。コントラストも低めで柔らかい印象を受ける/リコー GR III 絞り優先オート F8 1/200秒 -0.3補正 WB:オート ISO200

 

マクロモードの最短撮影距離が6cmに短縮

画角が広くて遠近感が強調される広角レンズでは、近くの被写体に肉薄することで、その被写体の存在感や印象が高められる。だから、どの距離までピントが合うかの“最短撮影距離”の数値が気になってくる。

 

GR IIIは、通常のモードで約10cm(被写体からレンズ先端までの距離。以降も同様)までピント合う。そして、マクロモードに切り換えると、約6cmまでピントが合うようになる(約12cm~6cmの範囲で)。ちなみに、前モデルのGR IIは、通常モードだと約30cmまで、マクロモードで約10cmまで(いずれも無限遠から)という数値だった。

<通常モードで撮影(約10cm)>

 

<マクロモードで撮影(約6cm)>

春の野原を彩るホトケノザの花。約6cmまで接近すると、広角レンズの画角でも“マクロ撮影らしい写真”になる。“約10cmまで”という値も、APS-Cサイズのカメラとしては立派だが、広角レンズでの4cmの差は、予想以上に大きな絵柄の差になる/共通データ:リコー GR III 絞り優先オート F2.8 WB:オート ISO100

 

夕暮れの都会の公園で見かけた菜の花の群生。そのなかの1本に注目して、マクロモードの最短近くで狙う。背後の点光源ボケが、夕暮れ時の雰囲気を伝えてくれる/リコー GR III 絞り優先オート F2.8 1/30秒 WB:オート ISO400

 

画角を変えられる2種類のクロップモード

レンズの開放F値が明るめで小型化もでき、画質面でも破綻が少なくて高画質。また、ズームレンズとは違って画角を変える手間がかからない。そういった点が、単焦点レンズの特徴である。リコーGRシリーズのカメラがスナップ派カメラマン向きである理由はそんな所にある。

 

とはいえ、被写体や撮影状況によっては、28mm相当ではなく「もう少し狭い画角で、被写体を大きく写したい」と思うこともあるだろう。そんな時には「クロップモード」機能が有効だ。2400万画素クラスのイメージセンサーの周辺部をカットして、内側部分の映像が記録される機能である。設定できるクロップの画角は、35mm相当と50mm相当の2種類。

 

当然、クロップ設定時には記録画素数が減少する。35mm相当では約1500万画素、50mm相当では約700万画素になる。この画素数をどう評価するかは、人によって違うだろう。個人的には、1000万画素を下回るのは少し抵抗を感じるが、1500万画素確保できる35mmクロップは「積極的に使ってみたい」と感じる。

<28mm相当で撮影>

 

<35mm相当で撮影>

 

<50mm相当で撮影>

共通データ:リコー GR III 絞り優先オート F8 1/640秒 +0.3補正 WB:オート ISO200

 

“GRイズム”を保ちながら着実に進化

プロユースにも堪え得る高画質。一瞬を切り取るスナップに最適な、直感的に操作できる小型軽量ボディ。それが歴代GRシリーズ(フィルムカメラ時代も含めて)の基本コンセプトである。モデルチェンジは最小限に抑え、ファームウェアのアップデートで機能や操作性の完成度を高める。また、モデルチェンジをしても、外観や操作性は極力変えない。そのあたりが、他のコンパクトカメラとは違う“GRイズム”である。

 

もちろん、モデルチェンジの際には、前述のようなコンセプトを守りつつ、新機能の搭載や操作性の変更などが行われている。今回の「GR III」では、タッチパネル機能、センサーシフト式手ブレ補正機構、ハイブリッド方式のAFシステムなどがそれにあたる。

 

また、レンズ一体型のカメラではあるが、撮像センサー前面の光学部材に超音波振動を加えてホコリなどを除去するDR II(Dust Removal II)が新たに搭載されている。こういった点も、安心感を高めてくれる重要な要素である(レンズ交換がなくても、長期間の使用でホコリが混入する恐れはあるので)。

 

GR IIIは長年培われたGRイズムを継承しつつ、着実に進化を遂げたモデルといえるだえろう。

↑内蔵フラッシュ非搭載で、よりコンパクトになったリコー GR III。だが、基本的な撮影機能や仕様はより充実し、高画質化に向けての取り組みも進歩している

 

リコー

GRⅢ

実売価格11万7090円

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