コンパクトタイプのデジカメのなかでも、センサーサイズが1型以上の大型センサーを採用したモデルは画質に優れており、プロでもサブ機として使う人が増えてきています。本記事では、富士フイルム FUJIFILM X70、パナソニック LUMIX DMC-TX1、キヤノン PowerShot G9 Xをピックアップ。今回は画質・ズームではなく、マクロ性能やWi-Fiの転送速度など、使い勝手をプロがテスト。本当に使いやすいカメラを決定しました。
【私が検証しました!】
カメラマン 青柳敏史さん
仕事では一眼を使いますが、日常の記録はコンデジを活用。作品も撮れる大型センサー搭載コンデジに注目しています。
【テスト項目はコチラ】
①起動速度
電源を入れてから、シャッターが切れるまでの時間を計測。カメラの初期設定を基本とし、AFも作動させました。
②AF速度
約5mの位置にピントを合わせた状態から近接撮影。シャッターボタンを押してから撮影完了までを計測しました。
③連写枚数
連写モードでシャッターを押し続け、撮れる枚数をカウント。枚数制限のあるモデルもあるため1分間としました。
④マクロ性能
広角端の最短撮影距離で撮影。色鉛筆を並べ、中央の黄色い鉛筆にピントを合わせて撮影しています。
⑤Wi-Fi速度
カメラ、アプリ共に基本設定で、写真をスマホに転送。1MBのデータを転送するのにかかった時間を計測しました。
※起動速度、AF速度、連写枚数、Wi-Fi速度は5回テストを行い、その平均値を評価しています
【3位】高画質な単焦点レンズとダイヤル操作でスナップに最適な「FUJIFILM X70」
富士フイルム
FUJIFILM X70
実売価格8万4000円
1630万画素のAPS-Cサイズセンサーを搭載。28㎜相当の高性能単焦点レンズを採用しています。ダイヤル操作中心のわかりやすい操作系も魅力。
【SPEC】
撮像素子:23.6×15.6㎜ 1630万画素X-Trans CMOSⅡセンサー
レンズ:28㎜相当F2.8
液晶:3型 104万ドット
サイズ/質量:約W112.5×H64.4×D44.4㎜/約340g
【起動速度:20Pt/20】
1秒強でシャッターが切れた
電源を入れたときにレンズが大きく動かず、すぐ撮影に移行できるのがポイント。計測値で1秒強と最も高速でした。
【AF速度:10Pt/20】
時間はかかるがピントは正確
AFの作動に多少の時間が必要ですが、ピントは正確。センサーサイズが大きく、慎重にピントを合わせている印象です。
【連写枚数:18Pt/20】
1分あたり91枚で不便は感じない
最初1秒ほど高速連写され、その後1秒に2コマ弱の連写が続きました。1分で91コマ撮影でき、不便は感じないレベルです。
【マクロ性能:17Pt/20】
レンズとの距離は開くが大きく撮れる
28㎜相当でレンズ先端から10㎝での撮影となりますが、レンズが薄いため十分な大きさに。1位のG9 Xとの差もわずかでした。
【Wi-Fi速度:11Pt/20】
転送には少し時間がかかった
1MBあたり約6秒を要し、転送にやや時間がかかる印象でした。周辺環境の影響もあるため、結果は参考程度に。
【総合評価:76Point/100】
単焦点レンズ採用で起動が速く、連写にも強いモデルです。ダイヤル中心の操作系のためカメラの状態が素速く視認でき、スナップを軽快に撮影できるのもウリ。
【2位】小型・軽量ボディ&大口径レンズで手軽に高画質で撮れる「PowerShot G9 X」
キヤノン
PowerShot G9 X
実売価格4万6220円
約2020万画素1型センサーを搭載。28-84㎜相当で広角側F2という明るい3倍ズームレンズが特徴です。高感度撮影にも強く、小型ながら高画質。
【SPEC】
撮像素子:1型 2020万画素CMOS
レンズ:28-84㎜相当F2-4.9
液晶:3型約104万ドット
サイズ/質量:約W98×H57.9×D30.8㎜/約209g
【起動速度:17Pt/20】
必要十分な起動速度で撮れる
撮影が完了するまで2秒弱。TX1やX70に比べるとわずかに差を感じる程度で、実用上は十分に高速です。
【AF速度:19Pt/20】
ほぼシャッターを押すと同時
体感的には、シャッターを押すと同時にシャッターが切れました。TX1に次いで2番目の0.17秒だが、差はほとんどありません。
【連写枚数:12Pt/20】
RAW+JPEGでは連写が遅くなる
1分間に47枚撮影できました。最高6コマ/秒で撮れますが、RAW+JPEG記録では1秒間に1コマ弱の連写に。
【マクロ性能:19Pt/20】
TX1よりわずかに小さい
28㎜相当で、レンズ先端から5㎝で撮れます。写る範囲はTX1とほぼ同じですが、黄色い色鉛筆はわずかに小さかったです。
【Wi-Fi速度:20Pt/20】
1MBあたり約1秒と最も高速
1MBのデータを約1秒で転送でき、試したなかでは最も高速。カメラ内で画像が圧縮されて、素速く転送できました。
【総合評価:87Point/100】
28㎜相当でのマクロ性能が高く、AF速度なども高速。加えて、Wi-Fiを使っての画像転送も早いです。大型センサー&大口径レンズ採用ながら小型・軽量で、実売価格が手ごろなのも魅力的。
【1位】起動が速いうえに「4Kフォト」対応でマクロ撮影にも強い万能モデル「LUMIX DMC-TX1」
パナソニック
LUMIX DMC-TX1
実売価格9万2440円
小型ボディながら25-250㎜相当の10倍ズームを搭載。4K動画や「4Kフォト」に対応し、静止画だけでなく動画も高品位で撮れる万能モデルです。
【SPEC】
撮像素子:1型 2010万画素高感度MOS
レンズ:25-250㎜相当F2.8-5.9
液晶:3型 約104万ドット
サイズ/質量:約W105×H64.5×D44.3㎜/約310g
【起動速度:19Pt/20】
1秒台前半の高速起動を実現
電源を入れて1.2秒で撮影が完了しました。順位としてはX70に次いで2番目でしたが、その差はごくわずか。チャンスに強く、現場で使えるモデルといえます。
【AF速度:20Pt/20】
シャッターを押すと同時に撮れる
0.13秒という短時間で撮影。ほとんどシャッターを押すと同時に撮れます。2位のG9 Xとの差はほぼないですが、ごくわずかながらTX1のほうが速い結果に。
【連写枚数:12Pt/20】
1分で57コマはまずまずの数値
1分間で57枚撮影できました。最初の1秒間ほどが高速連写となり、その後は1~2秒間に1コマ程度撮り続けられます。最高で10コマ/秒での撮影が可能です。
【マクロ性能:20Pt/20】
ピント位置の被写体を大きく写せた
25㎜相当でマクロモードにすると、レンズ先端から5㎝で撮影できます。広角で撮っているため周囲も広く写りますが、黄色い色鉛筆は最も大きく写すことができました。
【Wi-Fi速度:17Pt/20】
1MBあたり2秒台後半での転送時間
1MBのデータを転送するのにかかった時間は2秒台後半で、5機種のうち3位。画像縮小はアプリ側で行う仕様のため、アプリを変えると違った結果になります。
【総合評価:88Point/100】
起動が1.2~1.3秒と速く、AFも高速。「4Kフォト」に対応し、シャッターチャンスに強いのも魅力です。広角端が25㎜相当のワイドレンズ搭載でマクロ性能も高く、被写体を大きく撮れます。
【プロの総括】
カメラ自体の性能よりレンズの違いを見極めよう
「最新コンデジの基本性能はどれも優秀で、差は小さい。大きな違いはレンズにあるため、ズーム域やF値を確認してから購入するべきです」(青柳さん)
●カメラの質量は、CIPA基準(バッテリー、メモリーカード含む)で記載
【URL】
パナソニック http://panasonic.jp/
LUMIX DMC-TX1 http://panasonic.jp/dc/compact/tx1/
キヤノン http://canon.jp/
PowerShot G9 X http://cweb.canon.jp/camera/dcam/lineup/powershot/g9x/
富士フイルム http://fujifilm.jp/index.html
FUJIFILM X70 http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/x/fujifilm_x70/