Beats by Dr. Dreからアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスヘッドホン「Beats Solo Pro Wireless(以下:Solo Pro)」が10月30日に発売されました。今回は最新モデルのチェックポイントについて、Beats by Dr. Dreのプレジデントであるルーク・ウッド氏のコメントを振り返りながら総ざらいレビューをお届けしたいと思います。
音質・デザイン・装着感をブラッシュアップした「まったく新しいSolo」
Solo Proは、ワイヤレスヘッドホン「Beats Solo 3 Wireless」から派生したニューモデル。ウッド氏が「Beatsのラインナップの中で最も成功したSoloのシリーズ名を冠した“まったく新しいヘッドホン”」と称するSolo Proは、Beatsがこだわる「音質・デザイン・装着感」がいずれも高次にブラッシュアップされています。
まずデザインが前モデルのSolo 3から一新されました。本体をコンパクトに折りたためるフォーダブル構造を継承しつつ、ヒンジを展開すると自動的に本体の電源がオンになる機能を追加。再び折りたたむと電源がオフになります。ウッズ氏は「フタの開閉に合わせてスタンバイモードに切り替わるラップトップPC(ノートPC)の機能から着想を得た」と新機能を説明しています。
ヘッドスライダーにはアノダイズ処理を施したアルミニウムを採用。剛性と質感を高めています。柔らかくしなるヘッドスライダーと改良されたイヤーパッドによって最適なクランプ圧(側圧)が得られるため、長時間の音楽リスニングも疲れにくく感じられそう。Solo Proのようなオンイヤースタイルのヘッドホンは側圧を最適化することによって高い遮音性能が得られるため、とても大事な改良点であるといえます。
イヤークッションはSolo 3に比べて耳に近い肌に触れる面積が約70%拡大しています。内部容量も30%ほどボリュームアップしました。ウッド氏は「音楽再生を理想的なバランスに保つためにも、ヘッドホンのフィット感を安定させることに注力した」と述べています。
イヤークッションのフィット感と遮音性能は良好
今回筆者は発売前にSolo Proをじっくりと試せる機会を得ました。まずは装着感の手応えからレポートしたいと思います。
オンイヤースタイルのヘッドホンとしては側圧が強すぎず、快適な遮音性能とクランプ圧のバランスが絶妙です。何度もトライアル&エラーを繰り返しながら設計を追い込んできたというウッド氏のコメントにも納得がいきました。
ヘッドホンを頭に装着した時にスリムなシェイプに見えるように、ヘッドスライダーのカーブ形状も調整されています。筆者の場合、メガネを装着した状態でもヘッドホンがぶつかって気になる感触は特にありませんでした。
本体のヒンジが開閉するアクションが電源のオン・オフと連動する機能は便利ですが、首を通して肩にかけている間もオンのままなので、ほんのわずかながらもバッテリーが消費されていることが気になることもありました。電源ボタンはあってもいいように思います。
アップルのH1チップが実現する便利な接続機能
続いて音楽プレーヤーになるスマホとのBluetoothペアリングです。iPhoneなどiOSデバイスとのペアリングは、Solo Proにアップルが開発した「Apple H1チップ」が搭載されているため、ヘッドホンの電源をオンにして近づけるとオートセットアップが自動的に始まります。画面の案内に従ってステップを進めていくだけで素速くペアリングが完了します。
なおH1チップが載ったことで、同じくApple H1/W1チップを搭載するBeatsのワイヤレス対応ヘッドホン・イヤホン(Powerbeats ProやBeatsXなど)、ならびにアップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」との組み合わせでは、音楽プレーヤーとなるひとつのiPhoneに対して、同時に2台までのヘッドホン・イヤホンをつないで2人一緒に音楽が聴ける「オーディオ共有機能」が使えるようになりました。
本体左側にはこのあとに機能を詳しく紹介するPure ANC(アクティブ・ノイズキャンセリング)とTransparency(外音取り込み機能)のオン・オフを切り替えるボタンがあります。
右イヤーカップ側面のパネルはコントロールボタンになっていて、音楽や通話再生のリモートコントロールが行えます。ボタンはクリック感が軽快で、ヘッドホンを装着したまま操作してもクリック音が邪魔に感じられません。
バランスが良く伸びやかで開放的なサウンド
Solo Proは40mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載しています。本機のためイチから起こしたという振動板は、音の歪みを徹底的に抑えてクリアなサウンドが再現できるように設計、チューニングを加えています。
ウッド氏は「振動板だけでなくDSP(信号処理回路)やアンプまで、従来のSoloシリーズからすべてを一新した」として、本機にしか出せないサウンドにこだわったと話しています。Solo Proはワイヤレスリスニング専用のヘッドホンで、サウンドのチューニングはケーブルリスニングとのバランスを揃えることを考えなくて良かったため、「狙い通りのサウンドに追い込めた」とウッド氏が会心の笑みを浮かべながら話していました。
Solo Proの音質をiPhone 11 Proに接続してApple Musicの楽曲でチェックしました。クリアで見晴らしが良く、ニュートラルなバランスに整えられたサウンドはどんなタイプの楽曲にも素直にフィットするので、とても魅力的。解像度も高く、ボーカルの声やクラシックの演奏では生楽器の音が描く微細なニュアンスの変化を巧みに捉えて聴かせます。
ロックやEDMの楽曲はビートの切れ味に注目すると、低音のインパクトがとても鋭く感じられるヘッドホンということがわかります。鮮やかな余韻は後味もすっきり。嫌みな誇張感がないので、ビートがだぶつかず、音楽の素の表情が顔をのぞかせてくれます。
耳に密着させて聴くオンイヤースタイルのヘッドホンなのに、不思議と開放型ヘッドホンのように抜けの良い音、広々とした音場感が楽しめるところにSoloシリーズの大きな飛躍を感じました。ここがオンイヤースタイルのアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載するヘッドホンが到達した、進化の最先端なのかもしれません。
自然なバランスで効果を発揮するノイズキャンセリングと外音取り込み
アクティブ・ノイズキャンセリング機能は、イヤーカップの表側・裏側の両方にマイクを載せてリスニング環境に由来するノイズ成分を打ち消すハイブリッド方式です。
オーバーイヤースタイルのヘッドホン「Beats Studio 3 Wireless」から搭載が始まった独自のピュアアダプティブ ノイズキャンセリング(Pure ANC)機能が本機にも採用されましたが、オンイヤースタイルのSolo Proに合わせてアルゴリズムは一新されています。自動車のエンジン音や空調機器のファンノイズなど、長く響き続ける低域のノイズ成分だけにフォーカスするのではなく、人の話し声やサイレンなど中高域の気になる生活ノイズを効果的にシャットアウトするチューニングに変更したそうです。
Beatsのヘッドホンとして初めてTransparency(外音取り込み機能)も搭載されました。本体左側のイヤーカップ側面に搭載するボタンをクリックすると、シングルクリックでPure ANCとTransparencyの切り替え、ダブルクリックで両方のオン・オフを一度に変えられます。
Solo ProはノイズキャンセリングとTransparencyの双方にとても自然な効果が得られるヘッドホンです。「私自身がミュージシャンであり、音楽のコンテンツ制作にも関わっているので、どちらの機能も何より音楽リスニングを中心に考えて効果のバランスを追い込んだ」のだとウッド氏が出来映えへの自信を語っています。
アウトドアリスニングの際にはもちろん不要なノイズを強力にカットしてくれるPure ANCですが、機能をオンにしたときに耳を押さえつけられているようなプレッシャーがほとんどないので、例えば飛行機による旅で長時間リスニングに使用しても疲れにくさを実感できるでしょう。
本体に内蔵するバッテリーはPure ANC、またはTransparency機能をオンにして使った場合で最大22時間も持続します。ふたつの機能をオフにすると最大リスニング可能時間が40時間にも伸びます。イヤークッションによるパッシブな遮音性能がとても高いので、静かな部屋の中で使うのであればPure ANCをオフにして使う選択もありではないでしょうか。ただし、ボタンを操作せずにペアリングしているiPhoneなどiOSデバイスの音声アシスタントを呼び出せる「Hey Siri」のハンズフリー機能は、Pure ANCとTransparencyの両方をオフにしている状態では使えないようです。
Solo ProにはApple H1チップが搭載されているため、ワイヤレスリスニング時の接続性能がとても安定していることも補足しておきたいと思います。通勤時間や駅前での待ち合わせなど、大勢の人で混雑する場所で使う時に重宝するはず。
ウッド氏は「アップルとのパートナーシップがスタートしてから、今日まで5年間に渡る共同エンジニアリングの誇らしい成果がここに詰まっている」として、Solo Proを手に取りながら愛おしそうにコメントしていました。筆者もいまSolo Proは最高の音楽体験が得られるオンイヤースタイルのアクティブ・ノイズキャンセリングヘッドホンのひとつとして、本機に太鼓判を押したいと思います。
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