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2020/1/15 18:00

今年は「AirPods Pro」のライバルが一気に増える! CESで決定的になった2020年のオーディオトレンド

2020年のCESでは、様々なオーディオメーカーが新製品や新技術を展示しており、今年のオーディオ業界のトレンドをいち早く感じることができました。特に、これまでのトレンドアイテムだった「完全ワイヤレスイヤホン」にノイズキャンセリング機能を付与したモデルが各社から登場し、2019年に発売され大ヒットとなったアップル「AirPods Pro」を追随する姿勢を見せています。

 

また、ソニーが独自の立体音響技術「360 Reality Audio」を自社開発の自動運転車に搭載すると発表したように、「モビリティとオーディオ」の関係に新展開が。このほか、オーディオブランドであるJBLがゲーミングヘッドセット「QUANTAM」シリーズを発表するなど、e-sports分野におけるオーディオメーカーの展開にも注目です。

↑ソニーが立体音響技術「360 Reality Audio」を次世代モビリティのためのエンターテイメントとして展開していくことを明らかにしています。CESに展示したデモカーも大盛況

 

テクニクス/パナソニックから完全ワイヤレスイヤホン登場

パナソニックのプレミアムオーディオブランドであるテクニクスが、初の完全ワイヤレスイヤホン「EAH-TZ700」を発表しました。テクニクスらしい音へこだわりが盛りだくさんで、アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能も搭載しています。北米モデルの予価は279(約3万円)ドルと発表されていますが、日本での導入時期は未定。

↑テクニクス初の完全ワイヤレスイヤホン「EAH-TZ700」

 

↑カラバリはブラックとホワイトの2色。ANC機能を搭載します

 

アクティブ・ノイズキャンセリング機能はフィードフォワードとフィードバックのハイブリッド方式に加え、アナログとデジタルの回路でノイズを打ち消す「Dual Hybrid ANC」が大きな特徴。外音取り込み機能も抜かりなく載せています。

 

10mm口径のドライバーによるサウンドは肉付きが良く、低音の量感も充実しています。試聴した製品が試作機でしたが、発売までに中高域がもっとブラッシュアップされて、テクニクスらしいバランスの取れたサウンドに仕上がってくるものと思います。

 

また、送り出し側の機器の種類を問わず、左右独立の信号を受けて再生できる機能を備えているそうです。チップセットの種類も公開されていませんが、送り出し側がSnapdragonシリーズのSoCを載せたスマホに限られないとパナソニックの開発担当者が説明していました。

 

本体のリモコンはタッチセンサー方式。IPX4相当の防滴性能を搭載し、内蔵バッテリーで約6.5時間の連続音楽再生が可能。カラバリはブラックとホワイトの2種類が揃います。日本でも発売されれば話題をさらいそうです。

 

パナソニックブランドからも完全ワイヤレスイヤホン2種類が登場します。特に、ANC機能を載せた「RZ-S500W」が179ドル(約2万円)とお手頃。3万円台のアップル「AirPods Pro」を脅かす存在になれるのでしょうか。

↑パナソニックの完全ワイヤレスイヤホン「RZ-S500W」。こちらはANC機能付き

 

↑ANC機能のない「RZ-S300W」はカラバリ3色を用意

 

オーディオテクニカ「QuietPointシリーズ」からもNCイヤホンが

オーディオテクニカからも初のANC機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホン「ATH-ANC300TW」が発表されました。北米市場向けの価格は229ドルから249ドル(約2.7万円)。春ごろに日本を含む世界各国で発売予定です。

↑オーディオテクニカの完全ワイヤレスイヤホンQuietPoint「ATH-ANC300TW」

 

本機はANC機能を搭載する同社のQuietPointシリーズ初となる完全ワイヤレスイヤホン。開発者が「日常使いの快適さにもこだわった」というANC機能の効果は、実機で試してみると何より音楽再生を優先した自然な消音効果を実感できます。消音効果は3段階から選べて、最も強いAirplaneを選択すると展示会場の喧噪がすっと静まりかえりました。耳の中にぐっと圧をかけられるような不自然なプレッシャーもありません。

 

ドライバーの口径は5.8mm。振動板にはDLC(ダイヤモンドライク・カーボン)コーティングをかけて、滑らかでつながりの良いサウンドに仕上げています。音質も解像感と力強さのバランスが取れていて、特に人の声が滑らかで耳に馴染みます。聴き疲れしないQuietPointシリーズらしいリスニング感が特徴です。

↑遮音性の高いフォームタイプのイヤーピースも付属

 

純正のConnectアプリでイヤホンの設定を変えたり、外音取り込み機能の「ヒアスルー」が選択できます。とっさに話しかけられたり素早く周りの音に耳を傾けたいときには、イヤホン本体のリモコンをタップして外音が即座に取り込めるクイックヒアスルーもあります。どちらもマイクに由来するノイズがなく、ふだん使いの機能として活躍しそうです。

 

「パーソナライゼーション機能」がウリのJBL

ハーマンインターナショナルが取り扱うJBLのブランドは、今年もCESで大量の2020年新製品を発表しています。

 

完全ワイヤレスイヤホンは、外音取り込み機能付きの「LIVE 300TWS」が4月発売。JBLシグネチャーサウンドを継承する上位モデルで、ユーザーの耳の聞こえ方に音をパーソナライズできるJBL独自の測定機能「Personi-Fi」を搭載します。本体はIPX5相当の防滴性能。4色のカラバリを揃えます。

↑JBLの完全ワイヤレスイヤホン「LIVE 300TWS」

 

外音が自然に取り込めるオープン型構造の「TUNE 220TWS」は、デザインもどこか同じオープン型のAirPodsに近く、スティック型としています。価格は99ドル(約1万円)とお手頃。全6色のカラバリが揃います。

↑オープン型のイヤホン「TUNE 220TWS」

 

Indiegogoでクラウドファンディングを始めた異色のワイヤレスヘッドホン「JBL REFLECT Eternal」は、太陽光・環境光で本体のバッテリーを充電し続けることができます。肝はヘッドバンドに搭載したソーラーチャージパネル。冬の晴天時に得られる5万ルクス前後の太陽光を2時間ほど照射させれば約1時間の音楽リスニングが楽しめます。

↑ソーラーチャージで充電し続けるワイヤレスヘッドホン「JBL REFLECT Eternal」

 

ソーラーチャージは以前にフィーチャーフォンなどのモバイル端末に搭載された製品もありましたが、ワイヤレスヘッドホンには前例がないと思います。なるほど、その手があったかと、筆者もハーマンが本機のクラウドファンディングを始めた時に思わず膝を打ちました。クラウドファンディング後には今年の後半に向けて商品化も検討しているそうです。どれぐらい充電しないでも使い続けられるのか、発売が決まったらぜひ試してみたいと思います。

 

このほか、ゲーミングヘッドセット「QUANTAM」シリーズも発表されました。e-sportsに注目が集まるなか、オーディオブランドによるゲーミングヘッドセットの展開も2020年のキーワードになりそうです。

↑ゲーミングヘッドセット「QUANTAM」シリーズ

 

JVCはスポーツタイプ。立体サラウンド対応ヘッドホンも

JVCはヘッドホン再生でスピーカーの音場と定位感を再現する、独自の頭外定位音場処理技術の「EXOFILED(エクソフィールド)」の7.1.4chマルチサラウンド版新製品「XP-EXT1」をCESで発表しました。去年はプロトタイプとして見せていたテクノロジーが商品化にたどり着いた格好です。欧米では春頃に1000ドル(約11万円)で販売を予定。日本でも時期は未定ですが発売を予定している製品です。

↑JVCの「EXOFILED(エクソフィールド)」テクノロジーにより7.1.4chマルチサラウンドを実現したヘッドホン「XP-EXT1」

 

製品はヘッドホンとHDMI入出力を搭載するサウンドプロセッサーを組み合わせるシステム構成。別途用意したUHD BDプレーヤーなど再生機器を接続して、ヘッドホンで映画や音楽を楽しむスタイルになります。プロセッサーとヘッドホンとの間は5GHz/2.4GHz併用のデジタル無線接続です。

 

最初に頭外定位の効果をユーザーの耳の形状などに合わせた最適化を行います。プロセッサーとヘッドホンをケーブルにつなぎ、さらにモバイルアプリを使って測定を実行。一度測定したデータは本体に保存されます。

↑EXOFIELDのセットアップはモバイルアプリから行います

 

EXOFIELDの効果はオン・オフを選択可能。CES会場でデモを体験してみたところ、EXOFIELDのサラウンドは強調感がなく、自然な感覚で音に包まれる心地よさが特徴的でした。聴き疲れしないサラウンド。S/Nがよく、透明な空気感を見事に再現しています。既にシアタールームをお持ちの方でも、夜中に音量を気にせず映画や音楽ライブを楽しみたい時のサブシステムとしておすすめできます。

 

もちろんシアターシステムを買う予定はないけれど、NetflixやAmazonプライム・ビデオの動画配信をもっといい音で楽しみたいという方の、初めてのサラウンドヘッドホンシステムとしてもXP-EXT1はよい選択肢になりそう。ステレオ音源からの7.1.4chアップミックス機能もあるので、テレビの放送やゲームなどもたっぷりの臨場感を加えて楽しめると思います。

 

JVCはほかにも完全ワイヤレスイヤホンの新製品「HA-AE5T」を展示。IP55相当の防塵・防滴性能を備えるスポーツタイプのイヤホンです。価格は150ドル(約1.6万円)を想定しています。

↑スポーツタイプの完全ワイヤレスイヤホン「HA-AE5T」

 

Klipschは“世界最小サイズ”推し

アメリカのKlipsch(クリプシュ)は完全ワイヤレスイヤホンの新製品を一気に4機種発売します。北米での発売は夏以降に順次予定しているそうです。

 

最上位の「T10」はクリプシュの名機と呼ばれるイヤホン「X10」を思い起こさせる、スリムなイヤホンノズルを継承したBA型ドライバー搭載の完全ワイヤレスイヤホン。イヤホン本体が“世界最小サイズ”であることを特徴にうたっています。しかもハイブリッド方式のマイクを搭載するANC機能付き。ブースに試聴用のデモ機がなかったため音は確認できませんでしたが、レーシングカーのマクラーレンのオーディオ部門とコラボしたスペシャルモデルも登場するそうで、期待が持てそうな新製品です。充電ケースのフタはガルウィングスタイルで開く仕様。想定価格も649ドル(約7.1万円)と、完全ワイヤレスイヤホンとしては高級機になりそうです。

↑クリプシュ「T10」のマクラーレンコラボモデル。フタがガルウィングスタイルで開く仕様

 

「T5 ANC」もANC機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホン。頭を動かして楽曲再生を操作したりジェスチャー操作機能が搭載されるそうです。ケースはQi規格のワイヤレスチャージに対応。外音取り込みも付いて、米国の販売予価は299ドル(約3.2万円)。

↑ノイズキャンセリング機能を搭載する 「T5 ANC」

 

ほかにはIP67相当の防塵・防水性能を持たせたスポーツタイプのイヤホン「T5 SPORTS」、エントリークラスの「T5 II」も登場。

↑IP67防塵・防水機能を搭載した「T5 SPORT」

 

↑エントリークラスの「T5 II」はカラバリが3色

 

クリプシュからはANC機能を搭載するワイヤレスヘッドホン「KLIPSCH OVER-EAR ANC HEADPHONES」も夏以降に発売を予定しています。価格は399ドル(約4.4万円)。

↑「KLIPSCH OVER-EAR ANC HEADPHONES」のマクラーレンコラボモデル

 

今年のCESではソニーとゼンハイザーがカーオーディオで楽しむ立体音響に、それぞれの独自技術をベースに本気で展開することを発表しました。クリプシュとマクラーレンのコラボも単なるブランドイメージの共用にとどまらず、マクラーレンがオートモーティブの側から、そしてクリプシュが得意とするスピーカーやステージ音響側の技術をそれぞれに持ち寄って5Gの時代到来に合わせたカーエンターテインメントを一緒に実現しようとするスケールの大きな試みであると捉えるべきでしょう。

↑マクラーレンとの協業をアピールしていたクリプシュのブース

 

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