リーズナブルな価格ながら高品質なサウンドを発揮しながら、優れたデザインと機能性を合わせ持つイヤホンが、ソフトバンクのグループ会社であるソフトバンクC&Sから発売されて注目されている。それが、ソフトバンクセレクションのハイレゾ対応イヤホン「SE-5000HR」と、Bluetooth対応のノイズキャンセル機能付イヤホン「WS-7000NC」だ。
実はこの二つのイヤホン、同社が手掛ける正真正銘のオリジナルモデルである。一般的に、携帯キャリアが手掛ける製品といえば、他メーカーの既製品をベースにしたOEM製品と思われがちだが、この製品は企画からデザイン、音のチューニングにいたるすべてを自ら手掛けている。
ソフトバンクC&SのSBS事業本部SBビジネス本部SBS商品統括部商品企画部部長の石川純二氏は、まずその経緯から話してくれた。
「ソフトバンクセレクション事業は8年ほど前に立ち上げ、当初はOEM製品ばかりでした。しかし、販売を重ねていくうちにお客様のご要望に応えられていないのではないかと感じるようになり、ならば自ら製品開発を行って、我々が思う最良のモバイルエクスペリエンスをお客様に受けていただこうと考えたのです」(石川氏)
とはいえ、“ハイレゾ対応”というハイエンドなサウンド再生に対して、携帯キャリアが自らトライするとは驚きだ。
「きっかけは昨年6月に発売したエントリー向けイヤホン『SE-1000』でした。開発過程でデザインを含めて一年半以上かけてトライ&エラーを繰り返し、商品検討サンプルは100個ぐらいは作ったと思います。この対応は通常エントリー向けではあり得ないですね。ただ、その過程でイヤホンに対する知見をたくさん積み重ね、それがハイレゾ対応モデルの開発へとつながっていったのです」(石川氏)
上位機をまず開発し、そのデチューン版として下位機を開発するのはよくあること。ハイレゾ対応の「SE-5000HR」はその逆の過程から生み出された、“逆流からのモノ作り”を進めてきたというのだ。
「弊社は音響メーカーとしてのお客様の印象は薄い。まずは我々が得意な価格帯でまずスタートしたわけです。でも、ボディはすべて3ピース構造のアルミ削り出しですし、塗装もアルマイト仕上げになっています。ケーブルも表裏で色を違えたフラットケーブルを採用し、実売2400円! これで上級機とも戦える製品としました」(石川氏)
得意とする普及価格帯で技術を蓄積し、上位モデルでさらに磨きをかけたといわけだ。このへんの発想は、新たに市場に打って出る同社ならではの戦略といえるだろう。
金管楽器をイメージしたハイレゾ対応イヤホン
続いて、本題のハイレゾ対応イヤホン「SE-5000HR」と、Bluetooth対応のノイズキャンセル機能付イヤホン「WS-7000NC」のお話を伺おう。SE-5000HRは密閉タイプのカナル型イヤホンで、ドライバーは直径8mmのダイナミック型を採用。再生周波数帯域は5Hz-45kHzと広く、日本オーディオ協会が定めるハイレゾロゴも取得済みだ。
SE-5000HRで女性JAZZボーカルを聴くと、女性ボーカルは瑞々しさを感じさせ、ピアノのタッチも透き通るように余韻までを再現。決してガンガン迫ってくる音ではないが、聴きやすくバランスの良いサウンドだ。そして、ハイレゾ音源ではレンジ感がグンと広がる。低域に力が加わり、女性ボーカルの伸びやかさがさらに増してくる。これはひとクラス上のイヤホンと比べても遜色がないレベルと言っていい。
「それは我々が狙った音なんです。音楽を聴いている時に電話がかかってきても、相手の声がしっかりイヤホンで聞こえるよう、とくにボーカルには気を遣いました。工場へ直に出向いてチューニングを重ね、そのトライ&エラーは数百例を下らない。ハイレゾ対応として高域が45KHzまで確実に再生できていることも測定でも確認しています」(石川氏)
SE-5000HRの構造体については商品企画部企画2課の小宮義徳氏が次のように解説する。
「SE-5000HRはデザインモチーフこそSE-1000と同じですが、ボディはまったく別筐体で、外形寸法もシリンダーの容積もサイズアップしています。また、SE-1000からスペックアップしたドライバーを採用し、低域の量感を増やすためにもドライバーから後ろの容積を増やしているんです。ハイレゾを聴くために音質へ徹底してこだわり、特にシリンダ形状はフラッターノイズ(折り返し歪み)を極力抑える構造とし、その実現のためにケーブルの接続をボディエンドで取り付ける工夫も施しました」(小宮氏)
ここでプロダクトデザイン室の大平浩之氏がその裏話を打ち明けてくれた。
「実はボディにケーブルを取り付ける部分に最もコストがかかっているんです。それでもこれにこだわったのは、求める音を実現するためもあったのですが、使っている時のアイキャッチャーとしての効果も考えました。そのために表面処理にもこだわって、着けた時にキラッと光るようなそんなイメージに仕上げました」
SE-1000のカラフルなラインナップと比べ、SE-5000HRのデザインはブラック、ゴールド、カッパーの3色。明らかに落ち着いたラインナップだ。
「ターゲットユーザーは大人のイメージでしたから、落ち着きのある中にもキャッチーなカラーリングが欲しいということでこの3色を選びました。そのデザインイメージはSE-1000と同様、金管楽器として統一感を持たせています。表面をアルマイト仕上げとすることで、満足いく光沢感が表現できたと思っています」(大平氏)
「消す音・消さない音」にこだわったノイズキャンセルイヤホン
次は、Bluetooth対応のノイズキャンセル機能付イヤホン「WS-7000NC」について。このモデルは、Bluetoothに対応しながら同社初のアクティブノイズキャンセル型イヤホンとなった。イヤホンの外側にはマイクが備えられていて、周囲のノイズと逆位相の信号を出すことでノイズを積極的に打ち消す。その効果は-25dBと最大級の効果を発揮するが、それでいて車内アナウンスなどはきちんと聞こえる。そのメリットはどこにあるのか。
「消しにかかっている雑音の周波数帯域が、我々のお客様にフィットする部分となっていることです。主として街の中の雑踏、電車内での騒音などを対象としていますが、一方で車内アナウンスはしっかりと聞こえなければならないと思っています。とくに電話の着信もありますから、“声が聞こえる”ということに対してはこだわりました」(石川氏)
操作系でも徹底した造り込みを行ったようだ。
「各スイッチ類を指触りで判別できるように工夫をしています。電源スイッチとBluetooth設定スイッチをスライドで行えるのは、コストよりも使い勝手を優先した結果なのです。長押しという方法もありましたが、それだと電源の切り忘れなどもありそうですし、Bluetooth設定時でもスライド状態が自動復帰することで使いやすさを認識できるよう、コストが高めであっても敢えてこのスイッチを採用しました」(石川氏)
確かに文字はやや小さめながら、スイッチごとに操作方法に変化を与えることで、いちいちスイッチを目で確認しなくても操作できるようになっている。これなら混雑している電車の中でも簡単に操作できそうだ。特にスイッチは正面から一切見えないデザインとしているのは、誤操作の発生をなくすことが目的。デザイン面もすっきりシンプルで、大人が使っていても違和感のないものに仕上がっている。
「WS-7000NC」のサウンドはどうか。音を再生すると、ゆったりとした低音が耳から伝わってくる。ややボーカルは控えめとなるが、全体に量感があって、ロック系のパワフルなサウンドにも充分に応えてくれる。石川氏は、「この音作りこそノイズキャンセル機能とも関係している」と話す。「通常はある程度の音量を上げないと低域は出にくいですが、ノイズキャンセル機能があると音量を上げなくても充分な低域が出るように設計されています。この辺の効果が音量を上げた時に違いとなって出るんだと思います」(石川氏)
「WS-7000NC」を使えば、通勤や通学途中の電車内のノイズはキャンセルされ、聴きたい音楽が周囲に邪魔されることなく楽しめるようになる。それでいて、必要な情報はきちんと反映させる。ノイズを完全シャットアウトする欧米型と違い、その意味で「WS-7000NC」は日本国内で使用するのに最適化されたイヤホンとして誕生したとも言える。
ソフトバンクセレクションオリジナルのラインナップも拡充し、今夏から今秋にかけて、さらなる新製品も登場する予定とのこと。本格的なオーディオ製品のサプライヤーとしても頭角を表し始めたソフトバンクC&Sの今後の展開に期待したい。
【URL】
ソフトバンクセレクション http://softbankselection.jp/
Smart Quiet WS-7000NC http://softbankselection.jp/special/smartquiet/
SE-5000HR http://www.softbankselection.jp/onlineshop/campaign/se-5000/