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2020/7/17 19:30

キヤノンの“第二世代”フルサイズミラーレスカメラに抱いた期待感

キヤノンは2020年7月9日に開催したオンライン発表会にて、フルサイズミラーレス一眼カメラや交換レンズなど複数の新製品を一挙に発表。その内容は、販売台数の落ち込みや新型コロナウイルス感染症によるイベント中止など昨今なにかと暗い話題の多かったカメラ業界において、久々に大きな期待感と高揚感を感じさせるものでした。本稿では、ついに全貌が明らかになったハイスペックフルサイズミラーレス機や、“隠し玉”的に発表された注目モデルなどを中心に、新製品の概要について紹介します。

 

キヤノンの最高峰、ここにあり! ハイエンドモデル「EOS R5」

今回の新製品の目玉は、なんといっても新型フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でしょう。2月に開発発表されたあと、少しずつスペックや外観などが明らかにされ、正式発表をいまかいまかと心待ちにしていたカメラファンも多いはず。

 

ここで少し、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラの歩みについて振り返っておきたいと思います。キヤノンがそれまでソニーの独壇場だったフルサイズミラーレスカメラ市場に参戦したのは、2018年秋のこと。同時期にニコンも新規参入し、さらに翌年にはパナソニックやシグマも加わるなど、カメラ業界でいま最も盛り上がっているカテゴリだといえます。

 

キヤノンは2018年10月に初号機となる「EOS R」を発売。翌2019年春には廉価版「EOS RP」を投入し、フルサイズ機とは思えない低価格で一気に普及を狙うなど戦略的に製品を展開していました。そこから約1年後に開発発表されたのが、同社ミラーレスシステムにおけるハイエンドモデル「EOS R5」です。

 

今回正式に発表されたそのスペックを見てみると、EOSシリーズ史上最高の解像性能を謳う有効約4500万画素の撮像素子と新映像エンジン「DIGIC X」、最高8.0段分の手ブレ補正、8K30p動画撮影機能(4Kでは120pにも対応)、電子シャッターによる最高約20コマ/秒の高速連写(メカシャッター時は12コマ/秒)などなど、ハイエンド機にふさわしい驚きの数字が並んでいます。当然、防塵・防滴にも対応。既存のユーザーにとっては特にEOS初となるボディ内手ブレ補正がうれしいニュースかもしれません。

 

AF性能も大幅に強化されており、独自のデュアルピクセルCMOS AFは「デュアルピクセル CMOS AF II」に進化。瞳検出・人物検出では精度の向上に加え人物の瞳・顔・頭部、動物 (犬・猫・鳥) の瞳・顔・全身検出にも対応します。

 

背面モニターはバリアングル式、電子ビューファインダーは約576万ドットの有機ELパネルを採用。気になるカードスロットは、CFexpressカード (Type B) とSDメモリーカード (UHS-II 対応) のデュアルスロット。

 

操作性もブラッシュアップされており、EOS Rで導入されたマルチファンクションバーは廃止されて、代わりに直感的なAFフレーム選択操作が可能なマルチコントローラーが搭載されています。

 

キヤノンがいまもてる技術をすべて詰め込んだという印象で、製品名に一眼レフ機の中核を担う「EOS 5D」シリーズなどで使われている「5」という数字を使っている点などからも、同社が本機に懸ける期待の高さがうかがえます。

 

発売は2020年7月下旬予定で、キヤノンオンラインショップの価格は46万円 (税別) となっています。

 

一般ユーザーはこちらに注目! 新・スタンダードモデル「EOS R6」

EOS R5の正式発表に関しては多くの人が予想していたと思いますが、想定外だったのが新たなスタンダードモデル「EOS R6」の発表です。こちらはEOS R5より約1か月あとになる8月下旬の発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格はEOS R5より15万5000円安い30万5000円 (税別)となっています。

 

気になるEOS R5との違いですが、これだけ価格差があるとかなりスペックも抑えられているのかと思いきや、ボディ内5軸手ブレ補正や連写性能など多くの部分でEOS R5と同等の性能を備えています。

 

目立って異なる部分としては、センサーが有効約2010万画素であること、動画が8K対応でないこと(4K 60pに対応)などが挙げられます。その他、メディアスロットがSDカードのデュアルスロットであること、上面の表示パネルが省かれていること、EVFが約369万ドットであること、外装の素材などなど、細かな部分で違いはいくつかあります。

 

とはいえ、センサーは同社一眼レフのフラッグシップ機「EOS-1D X Mark III」のセンサーをカスタマイズしたものということで、信頼性は十分。むしろ画素数を抑えたことで低輝度合焦限界や常用最高ISO感度など暗所での撮影に関わるスペックではEOS R5を上回っている部分もあります。

 

8K動画や4500万画素の解像感、という点にこだわらないのであれば、価格差を考えてもEOS R6はかなりお買い得に思えます。キヤノンはEOS R6をR5の廉価版ではなく、フルサイズミラーレスにおける“新標準”モデルと位置づけていますが、この仕様を見れば納得です。

 

待望の超望遠ズームなど新レンズも続々登場!

今回の発表では交換レンズの新製品4本も発表されました。

 

1本目は、超望遠ズームレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。一眼レフ用EFレンズのなかでもプロ・ハイアマ層から特に人気の高い「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」のミラーレス版ともいうべき存在ですが、あちらよりも焦点距離を100mm延長し、より幅広い撮影領域に対応しています。鏡筒に刻まれた赤いラインが目印の、キヤノンのレンズラインナップのなかでも特に高品質な「Lレンズ」の1本です。

↑RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM。2020年9月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は33万5000円 (税別)

 

続いて紹介するのは、小型軽量を新コンセプトにした超望遠単焦点レンズ「RF600mm F11 IS STM」と「RF800mm F11 IS STM」です。絞り値をF11固定とすることで、RF600mmは930g、RF800mmは1260gとおよそ超望遠レンズとは思えない軽量化を実現。小型なミラーレスボディとも相性がよく、手持ちで手軽に超望遠撮影を楽しみたいというユーザーにぴったりなレンズです。

↑RF600mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は8万8000円(税別)

 

↑RF800mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は11万3000円(税別)

 

これら3本のレンズに対応したエクステンダーとして、焦点距離を1.4倍に伸ばす「エクステンダー RF1.4×」と、2倍に伸ばす「エクステンダー RF2×」もあわせて発表されました。

↑エクステンダー RF1.4×(左)とエクステンダー RF2×。どちらも2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は「RF1.4×」が6万3000円、「RF2×」が7万5000円

 

最後の1本は、中望遠単焦点レンズ「RF85mm F2 MACRO IS STM」です。最大撮影倍率0.5倍、最短撮影距離0.35mに対応したハーフマクロレンズ。F2.0の明るさを生かしたポートレート撮影などにもおすすめです。

↑RF85mm F2 MACRO IS STM。2020年10月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は7万6000円

 

“第二世代”の登場でますます注目度が高まるフルサイズミラーレス

2018~2019年にかけてカメラメーカー各社が相次いで市場に参入したことで、一気に「フルサイズミラーレス」というカテゴリの注目度が高まりました。しかし、実力が未知数だったこと、専用レンズが少なかったことなどから、一眼レフからの買い替えは少し様子見しようというカメラファンも少なくなかったはず。結果、各社健闘してはいるものの、先駆者でありレンズラインナップも充実しているソニーの優位は変わらずといった印象でした。

 

ところが、ここにきてキヤノンが早くも第二世代を投入。その飛び抜けたスペックと完成度は、大きな衝撃を与えました。レンズラインナップが参入当初に比べて充実してきたこともあり、次のカメラはフルサイズミラーレスに……と検討するユーザーは一気に増えそうな予感がしています。

 

もちろん、キヤノン以外のカメラメーカーがこのまま黙っているはずはないので、今後ますます業界が盛り上がることにも期待したいですね。