新緑の季節を迎え、これから夏に向けて様々な催しが行われていくはずですが、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の影響で、今年も思うように外出できない日々が続いています。そんな中、今年の夏こそは「おうち時間」を充実させよう、自宅で映画やスポーツを大画面で楽しもう、と思っている人も多いはず。
そんな中でいま注目を集めているのが、「プロジェクター」。スマホやタブレットなどで観ていた動画配信サービスを大画面で楽しめるだけでなく、家の中を自由自在に持ち運べるコンパクトで軽量なプロジェクターは、テレビ離れが進んでいると言われる若い世代からも熱い視線を浴びているデジタルデバイスです。
そこで今回は、ViewSonic(ビューソニック)が今年2月に発売したスタイリッシュなデザインが魅力の最新モデル「M2」をご紹介、最新プロジェクターの“いま”に迫っていきたいと思います。
【今回紹介する製品】
ビューソニック
Full-HD スマートポータブルLEDプロジェクター
オープン価格
今年2月に発売された最新LEDプロジェクター。1080p(1920×1080)のフルHD解像度で、Harman Kardon(R) スピーカーや縦横台形補正機能、また独自のCinemaSuperColor+テクノロジーなどを搭載。外形寸法は224×224×51mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約1.32kgという軽量コンパクトボディ。
【ビューソニック「M2」を写真で紹介!(画像をタップすると閲覧できます)】
ビューソニックは画質にこだわったアメリカの映像機器メーカー
ビューソニックは創立から30周年を迎えたアメリカの映像機器メーカー。誕生から今日までPC用の液晶ディスプレイ、プロフェッショナル向けの大型モニターからホームシアター用途のプロジェクターまで幅広いカテゴリーの製品を展開しており、日本市場への本格進出は2015年から。映像の画質、操作性と設置性にも富むコストパフォーマンスの高いプロジェクター製品群を多数揃えて勢いに乗る、いま注目のメーカーです。
そのビューソニックから発売されたプロジェクターの最新モデル「M2」は、音質にもこだわるスピーカーシステム、Wi-Fi機能とアプリを追加できるスマートOSまで一体化したオールインワンスタイルのスマートプロジェクターで、オープンプライスですが実売価格の見込みは79,800円前後。このあと多彩な機能と画質・音質について詳しく触れていきますが、先に結論を言ってしまうと、大変にコスパがよく満足度の高いホームプロジェクターでした。
ポータブルプロジェクターを選ぶ際の「3つのポイント」
ビューソニック「M2」と価格が近く、ポータブルタイプのプロジェクターとしてコンセプトや使い勝手も似ている製品は数多くありますが、手に入れるべき製品を比較検討する際には、主に「3つのポイント」に目を向けてほしいと思っています。
まず、ひとつ目のポイントは、本体のサイズ感。大きさだけでなく、家族が皆、使いたい時に家の中を自由自在に持ち運び、視聴が終わったらすぐ片付けられる「手軽さ」も大事です。
2つ目は、明るさの性能。「映像」は解像度や色合いもさることながら、昼夜を問わず広い時間帯で使えるように、明るさの性能に優れているほうが望ましいです。
最後のポイントは、様々なコンテンツ再生機器とつなげる「接続拡張性」が確保されていること。パソコンに手軽に接続できれば、仕事のプレゼンテーションなどビジネスシーンでも使うことができ、満足度アップにつながります。
【サイズ感・設置性】かんたん手軽で柔軟性高!「置くだけで大画面」を実現できる
今回、筆者はビューソニック「M2」を実際に自宅で体験してみました。
M2は本体の縦・横サイズが約22cm、高さは約5cmで質量が1.32kgと、ノートパソコンなみに軽いポータブルプロジェクターです。寝室や仕事部屋にM2を持ち込んで、壁面に映像を投写しながらドラマやゲームを大画面で観ることが、とても簡単にできます。
テーブルの空きスペースやカウンターチェアーの上にM2をポンと置けるスペースさえあれば、そこからのセッティング調整もシンプルかつ柔軟。M2には本体の底面から引き出して、映像の投写角度を自由に調整できるスタンドがあり、少し低いテーブルに置いた状態でも壁面に動画が映せます。
映像を投写するスクリーンや壁面に対して、プロジェクターを真正面に置けない場合も考えられますが、M2には投写面に対して斜めの位置にプロジェクターを置いて映した動画をきれいな長方形の画面に整えるためのタテ・ヨコ方向台形歪み、四隅の位置調整機能があります。縦の台形補正とフォーカス合わせはプロジェクターの置き場所を変えるたびに自動で行う機能も搭載しているので、便利です。
レンズは単焦点仕様なのでズームイン・アウトの機能は装備していません。ただ、投写面とプロジェクターの距離を近づけたり、離してみるだけで画面サイズの調整ができるので不自由はないと思います。例えば約1.09mの投写距離を確保すれば40インチ、約1.63mで60インチ、約2.18mで80インチ、約2.72mで100インチといった具合に、一般的な住宅で確保できる投写距離でも十分大きな画面で見られます。
M2は本体にバッテリーを内蔵していません。パッケージに同梱されている電源ケーブルを使って壁コンセントから給電する方法を主として、ほかにも背面のUSB Type-C端子を使う手があります。ここに最大出力45W以上のUSB PD(Power Delivery)に対応するポータブルバッテリーを接続すれば、電源の確保が難しいベランダや庭・テラスなどの場所に立ち上げ式のスクリーンを貼ってシアター環境を作ることが可能で、今後、新型コロナウイルス感染症の影響が収まってきた時には、M2を屋外に持ち出してキャンプやピクニック、家族や友人と楽しむバーベキューパーティーの席でポータブルシアターを楽しむなど、幅広く活用できると思います。
【明るさ・画質】ナチュラルで疲れにくい映像美
続いて、ビューソニックM2の画質を深く掘り下げます。本機は0.33型フルHD対応DMDチップセットを投写デバイスとするDLP(R) プロジェクターです。映像はきめ細かく、シームレスな一体感あふれる心地よさが特徴的でした。ノイズによるちらつきもなく安定感に富んでいます。
LEDランプの明るさは最大1,200ルーメン。映像メニューから明るさを「フル」または「エコ」から選べる仕様としており、昼間でも遮光カーテンを閉めて視聴環境を少し暗くするだけで快適なシアター鑑賞が楽しめます。ポータブルプロジェクターの中にはランプのパワー不足により、明るい環境下では映像がはっきりと見られないものもありますが、M2の映像には十分な明るさがありました。
M2の映像はRec.709のカラープロファイルの約125%をカバーする高い色再現性能を特徴にうたっています。むやみに色を派手にギラつかせることをせず、落ち着いた色合いときめ細かな階調感を再現できているプロジェクターだと感じました。人物の肌色には穏やかな透明感が反映され、青い空、植物の緑、赤い花など原色の再現も違和感がなく丁寧にカラーバランスを整えています。長い時間視聴しても疲れを感じにくいナチュラルな映像が魅力的です。
シリアスな展開の映画や、暗いホールで収録された音楽ライブなど、映像の暗部をもう少し深く沈み込ませたいシーンもありましたが、コンテンツに応じて「カラーモード」の選択を切り換えてみると良い結果が得られました。ユーザーの好みに合う画質設定は2件までプリセットとして保存できるので、明るさや色合いの数値を丁寧に追い込めば期待通りの映像に整います。
【拡張性】スマホからビデオプレーヤーまで様々な機器に接続できる
ポータブルプロジェクターの実力を計るうえで大切な指標のひとつになる「接続拡張性」についても、M2の優秀さには目を見張るものがありました。
本体の背面にずらりと並ぶ端子がバラエティに富んでいます。HDMI 2.0端子はChromecast with Google TVやFire TV StickなどHDMI接続に対応するメディアストリーミングデバイスをつないで、NetflixやAmazonプライム・ビデオのコンテンツを楽しむ用途に最適です。もちろん音楽ライブや子ども向けのコンテンツを収録したDVDやBlu-rayなどのパッケージメディアも、それぞれの再生に対応するプレーヤー機器をHDMIケーブルでM2につないで楽しむことができます。
プロジェクターの底面に配置した端子に専用のドングルを装着すると、Wi-Fi機能が使えるようになります。家庭のWi-Fiルーターを経由して、スマホやタブレットからM2にワイヤレスでYouTube動画などをキャストしながら再生できるので、筆者が最近ハマっているApple Arcadeのゲームも、iPhoneの画面をそのままプロジェクターにミラーリングすれば迫力あふれる大画面で遊べました。iPhoneにBluetoothゲームコントローラーを接続すれば操作も快適。力強いサウンドもWi-Fiを介してスマホからM2に送られます。
M2にはデジタルカメラで撮影した写真や動画が読み込めるUSB端子とmicroSDカードスロットがあり、それぞれのメディアに保存したファイルをプロジェクターから直接読み込める手軽さも、特筆すべきポイントです。
さらにM2は、Androidベースのスマートプラットフォームを搭載していて、プリインストールされているアプリマーケットサービス「Aptoide TV」からAbemaTVアプリをインストールしてテレビ番組を見たり、TuneInラジオアプリを追加すれば世界のラジオ番組やポッドキャストも楽しめ、コンテンツの幅が広がります。
【音質】声が聞こえやすくなるクリアなサウンド
ビューソニックのM2は音質にもとことんこだわり抜いたharman/kardon(R) 製スピーカーを搭載しており、人の「声」がとてもクリアに聞きやすいバランスにチューニングされているので、映画にドラマ、アニメなど家族揃って楽しめるコンテンツの再生時に高い効果がありました。
ただ一方、スリムでコンパクトなプロジェクターに内蔵できるスピーカーユニットのサイズには限界もあるため、視聴するコンテンツによっては音の厚みがもう少しほしくなることも考えられます。例えば音楽ライブ系のコンテンツを再生する場合など、低音域の肉付けをしたい時にはひとつ「オーディオイコライザー」を使う方法があります。
ホームメニューの「設定」から「詳細設定」に入ると「オーディオモード」が選べ、さらに「ユーザー」モードを選択すると「オーディオイコライザー」が立ち上がるので、好みのバランスに音合わせをしてもよいでしょう。ユーザー設定値は1件をプリセットとして登録できます。
また、「設定」の「基本設定」メニューから「Bluetooth設定」に入ると、M2で再生しているコンテンツの音をBluetoothオーディオ機器に飛ばして楽しむこともできます。あるいは本体背面に搭載するアナログオーディオ出力を使って、手持ちのPC用スピーカーやサウンドバーにM2をつないで音の迫力を足すことも可能。これらの外部オーディオ機器を活用できる拡張性も含めて、ビューソニックはM2のオーディオパフォーマンスを徹底追求したポータブルプロジェクターであると言えそうです。
【まとめ】誰もが使いやすいポータブルプロジェクターの決定版
筆者は、M2のユーザーインターフェースの出来映えがとても良かったことにも満足しました。
本体に付属する専用リモコンのレスポンスも良好ですが、iOS/Android対応の純正モバイルアプリ「vCastSender」を使うと、あたかもプロジェクターで投写している映像を指でタッチしながら操作しているような感覚で、スマホのタッチパネルによる直感的なメニュー操作が可能になります。コンテンツ検索の文字入力などもかなり楽になるので、ぜひ試してほしいです。
冒頭に「3つのポイント」として触れたポータブルプロジェクターを選ぶ際に重視したいポイントのどれを取っても、ビューソニックのM2はベストインクラスの製品としておすすめできます。価格だけを見れば似た使い方ができる、より安価なポータブルプロジェクターも販売されていますが、長く使い込むほどにM2の細部にまで気を配った使いやすさと安定感が身に染みて実感されるはずです。
一例として、駆動時に本体内部にこもる熱を逃がすための空冷ファンから聞こえるノイズが、同クラスのポータブルプロジェクターと比べて静かなことを挙げておきたいと思います。シリアスな映画やドラマを見ている時に、プロジェクターが発するノイズが大きすぎると没入感が得られません。最後に大事なポイントとして付け加えておきます。
観たいコンテンツをいつでも・どこでも楽しめるポータブルプロジェクターによる大画面エンターテインメントには、4Kテレビとはひと味違う「感動」が味わえる良さがあります。またプロジェクターは壁やスクリーンに動画や写真を映し出して見るデバイスなので、テレビやパソコンのように目にダメージを与えるブルーライトが発生しません。家族の目に優しいシアター環境を実現できることも大きな特徴です。さらにM2は、メタリックとマットブラック仕上げのスタイリッシュなデザインも大きな魅力。
きっとビューソニック「M2」は、“大画面のある生活”の素晴らしさを実感させてくれるに違いありません。
撮影/我妻慶一