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2022/5/25 18:30

ソニー、穴があいてないほうのイヤホン「LinkBuds S」を発表! ノイキャン搭載の狙いとは?

ソニーが新しい完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds S」を発表しました。春に発売されて話題となった“穴の空いたイヤホン”、LinkBuds(リンクバッズ)も販売を継続。2機種によるシリーズに発展しました。今度は穴のないデザインになったLinkBuds Sの特徴と、本機が開発された背景を新製品発表会から取材レポートします。

 

↑穴のあいていない密閉型ハウジングを採用する「LinkBuds S」

 

ソニーのセンシング技術を満載したワイヤレスイヤホン

今春に登場したLinkBudsは、耳に挿入する本体の中心に穴があいているデザインとして、耳を塞がず自然に外音が取り込める使用感を特徴としています。ソニーストアの販売価格は2万3100円(税込)です。

↑LinkBuds

 

シリーズに新しく追加されるLinkBuds Sは、本体色がブラック/ホワイト/エクリュ(ベージュ系)の3種類。価格はオープンですが、2万6000円前後での販売が予想されます。

↑LinkBuds Sに追加された新色「エクリュ」

 

型名の「S」にはSilence/Superior Sound/Seamlessなどの意味合いが込められています。LinkBudsとの主な違いは、本体ハウジングを穴の空いていない密閉構造として、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載したことです。外音取り込み機能も付いています。

 

イヤホンに内蔵するセンサーにより、ソニーのアプリ「Locatone(ロケトーン)」などのコンテンツを再生した時に、ユーザーの頭の動きに対して音の定位をコントロールするヘッドトラッキングに対応します。

 

また、座った状態から立ち上がって歩き出すといったユーザーの「行動の変わり目」をセンシングして、スマホを触らずに各機能を切り替えられるスマート機能もLinkBuds Sから搭載します。本機能を活用するための「Auto Play」アプリはAndroid版から配信を開始。続いてiOS版にも展開予定です。

 

ほかにも上位の完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」などが対応する、ユーザーの行動パターンをペアリング中のスマホで判別、イヤホンの外音取り込みやノイズキャンセリングのパターンを自動で切り換える「アダプティブサウンドコントロール」にLinkBuds Sも対応します。

↑Sony Headphones ConnectアプリからLinkBuds Sの各機能を設定します

 

筆者もLinkBuds Sの実機を試しました。イヤホンは片耳の質量が約4.8g。ソニーのANC機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホンの中で最小・最軽量サイズで、とても軽いです。装着した時に本体が耳から飛び出て見えないようにデザインも良いと思います。

 

ケースもコンパクトで軽いので、ふだんから持ち歩く荷物を最小限にしたい人に最適なワイヤレスイヤホンです。充電ケースを合わせると最大20時間のリスニングができますが、イヤホン単体での連続再生はANCオン時約6時間、オフ時は約9時間。LinkBudsの「1日中身に着けて使えるイヤホン」というコンセプトを実行すると、若干スタミナが心配な感じもします。

 

音質・ノイキャン性能の実力は?

筆者がLinkBuds Sについて気になった「音質」「ANCと外音取り込み」「デザイン」についてファーストインプレッションを報告します。

 

LDACに対応するソニーのXperiaにペアリングして聴くと、解像度の高い濃厚なサウンドが楽しめます。上位モデルのWF-1000XM4に比べると低音の量感が落ち着いて、音色はややフラットであっさりとしています。全体にナチュラルバランスなので、BGM的に音楽を長くゆったりと聴いていたい時にはLinkBuds Sは最適な選択肢といえそうです。

↑密閉型ハウジングにANC機能を載せて、イヤーピースによる耳栓効果も得られるため、かなり静かな環境で音楽リスニングが楽しめます

 

ノイズキャンセリング性能は、環境ノイズがしっかりと消音される印象です。消音性能はWF-1000XM4の方が高いそうですが、「LinkBuds Sは飛行機の中など大きな騒音に囲まれる場所でも十分に高い消音効果が得られた」と、発表会に登壇したナイアンテックの代表取締役社長 村井説人氏がコメントしていました。

 

本体が密閉型構造であり、付属するシリコンイヤーピースによるパッシブな耳栓効果も十分にあります。イヤホン本体がコンパクトなので、耳の小さい方も安定したフィット感が得られると思います。アプリに搭載されている「イヤーピース測定機能」で、耳に合うイヤーピースのサイズを選んで正しく身に着けるとよいでしょう。

 

LinkBuds SにはWF-1000XM4と同じソニー独自の「V1」プロセッサーが乗っているので、ノイズキャンセリングと外音取り込みのバランスを環境に合わせて最適化したり、風切りノイズの低減機能などがスマートに動作します。

 

外音取り込み機能については、穴が空いている元祖LinkBudsのリスニング感に近づけられるよう「外音の取り込み量を増やしている」とソニーは説明しています。確かにLinkBuds Sを身に着けて音楽を再生してみると、従来のソニーのイヤホンに比べてやや多めに外音がきこえる感じはします。でもやはり「外音の中で音楽がしっかりときこえる」ようなLinkBudsのリスニング感とは正反対です。LinkBud Sにとっての主はやはり「コンテンツの音」です。

 

本機を試した時点で「Sony Headphones Connect」アプリが連動していなかったため、すべての機能を正確に試せていません。音質やノイキャン性能については、またあらためてしっかりとレポートします。

 

外観のデザインはやはり元祖LinkBudsに大きなインパクトがあったので、比べるとLinkBuds Sはやや大人しい印象を受けてしまいます。本体、ケースともに飾り気を極力排しているので、ややもするとソニーのイヤホンであることも遠目にはわかりづらいかもしれません。LinkBuds Sにはイヤホンを装着しているこめかみのあたりを指でタップして操作する「ワイドエリアタップ」の機能もありません。

 

元祖LinkBudsに革新性を感じた方々は、新しいLinkBuds Sを見て、「案外ふつうのワイヤレスイヤホンじゃんか」と感じるかもしれません。本機の企画・開発に携わったソニーのスタッフは、LinkBuds Sにどんな思いを込めたのでしょうか?

 

未来を見据えて密閉型・ノイキャン搭載としたLinkBuds S

LinkBudsシリーズの商品企画を統括するソニーの伊藤博史氏は「LinkBudsをより多くの方々に、様々な場面で色々なコンテンツを楽んでもらいたいと考えてノイズキャンセリング機能を搭載した」として、“穴の空いていないLinkBuds”のコンセプトを説明しています。

↑ソニーがLinkBuds Sの記者発表会を開催しました

 

LinkBuds Sのように密閉型構造を採用し、アクティブノイズキャンセリング機能を載せた完全ワイヤレスイヤホンは既に多くのメーカーが発売しています。ソニーの伊藤氏は、WF-1000XM4を含むほかの製品と比べた際のLinkBuds Sの魅力は「常時身に着けて“ながら聴き”を楽しみやすいコンパクトなサイズと軽さ」であるとも語っています。

 

完全開放型の元祖LinkBudsは、騒々しい環境で使うと確かに音が聴きづらく感じられることがあります。音楽をBGM的に楽しむのであれば良いのですが、映画やゲームのセリフ、ハンズフリー通話など「人の声」の輪郭がつかみにくくなるため、コンテンツによっては遮音性の高いイヤホンを選びたくなります。

 

筆者はLinkBuds Sにも搭載された「センシング機能」が、近い将来に本機の個性を輝かせるカギを握っていると考えます。ソニーはナイアンテックのARゲームプラットフォームである「LIGHTSHIP」に参加して、独自のARエンターテインメントコンテンツを提供することを発表しています。

↑ナイアンテックのゲーム「INGRESS」は今年の夏にLinkBudsのヘッドトラッキング機能を使って楽しめるようになります

 

↑ソニーもいま、LIGHTSHIPのARゲームプラットフォームに向けて独自のコンテンツを開発しています

 

LinkBuds Sの発表会ではLinkBuds Sのヘッドトラッキング技術や、ソニー独自の立体音楽体験360 Reality Audioを合わせて活かしたARゲームコンテンツを体験しました。ゲームなどのコンテンツに没入して楽しむ際にノイズキャンセリングをオンにして、屋外で歩きながら音楽を聴きたい時には外音取り込み機能に素速くスイッチすることを選べるLinkBudsはきっと重宝すると思います。

 

ソニーは前述のARアプリ「Locatone」により、音で楽しむAR体験を積極的に発信しています。今年の夏に向けて、アプリ上に一般のクリエイターが制作したコンテンツをアップできるように「Locatone Creator」ツールを公開し、さらに公募による「Locatone Creator Contest 2022」を実施するそうです。LinkBudsシリーズを使って様々な没入型コンテンツが楽しめるようになると、開放型とノイキャン付き、ふたつのLinkBudsが両方ともほしくなりそうです。

↑Locatoneのコンテンツを簡単に制作できるPC用ツール「Locatone Creator」。リリース当初はエントリー制でユーザーを募ります

 

↑Locatoneに対応する音のARエンターテインメントを募集するコンテストも実施。6月15日に詳細が発表されます

 

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