お宅の水道料金はいくらですか?
ひとり暮らしの我が家は、1ヶ月あたり約2,400円です。料金明細を見ると「水道」「下水道」という項目がありました。
『下水道のひみつ』(ひろゆうこ・漫画、YHB編集企画・著 構成/学研プラス・刊)によれば、汚水処理だけではなく、道路や家屋が浸水しないための「雨水のはけ口」としての役割も果たしているそうです。
下水道といえば「悪臭」や「不潔」というイメージがありますが、臭くて汚いのは、わたしたちの排泄物や生活排水です。見て見ぬふりをせずに、もっと下水道について考えてみませんか?
トイレよりもキッチン排水のほうが多い
生活で使ってよごれた水の割合
台所 約40%
トイレ 約30%
ふろ 約20%
その他 約10%「ひろげようきれいな水のある暮らし」環境省
(『下水道のひみつ』から引用)
環境省によれば、トイレ汚水よりもキッチン汚水のほうが多いという調査結果があります。
皿を洗えば、よごれた水がたくさん発生します。洗剤を含む排水だけではなく、飲み残した牛乳や味噌汁なども「汚水」に含まれます。キレイな水の基準は「魚が生きられるか?」です。
天ぷら油を排水口から流してはいけない。誰でも理解できます。しかし、飲み残した「お茶」や「コーヒー」、お刺身を食べたときに使い切れなかった「小皿の醤油」、残ってしまった「煮物の汁」や「おでんのカラシ」など、わたしたちは悪気のない「汚水」を垂れ流している、という現実があります。
牛乳やお茶の飲み残しなんて、簡単に浄化できるだろう……という認識はまちがいです。
たとえば、賞味期限が過ぎてしまった牛乳200mlを排水口に捨てたとしたら、そのよごれてしまった水を「魚が生きられる」水準にするためには約3トンのキレイな水が必要になります。ほかにも、炊飯1回あたりの「米のとぎ汁」ですら、浄化のために約1.2トンの水を必要とします。
下水道は「雨」を排水するためにある
下水道管は少しずつ下に向かっておる。水は上から下へ流れるからのう。下水道管にはかたむきが必要なんじゃ。
(中略)
下水は下水道管を下ってはポンプでおし上げられ、また下ってはおし上げられ、下水処理場に運ばれているんじゃ。(『下水道のひみつ』から引用)
下水道の流れは「時速2~5km」に抑えられています。人が歩く速さと同じくらいです。流れが遅すぎると「詰まり」の原因に。流れが早すぎると「破損」の原因になるからです。
下水道は、汚水だけでなく「雨水」の通りみちでもあります。下水道が整備されていなければ、大雨が降ったときには家屋や道路が水びたしになるからです。
雨そのものは汚くありませんが、空から降ったあとには道路の汚れやゴミ(タバコの吸い殻など)を巻き込んで「汚水」になります。そのまま川や海に流してしまうと汚染されてしまうため、下水処理施設が必要というわけです。
知っておきたい下水道処理の仕組み
家庭や工場で使われてよごれた水は、下水道管を通って下水処理場に入ってくる。これを流入水という。
流入水は、沈砂池、最初沈殿池を通り、活性汚泥の入った反応タンクでよごれが取りのぞかれて、最終沈殿池で処理水として生まれ変わる。
(『下水道のひみつ』から引用)
沈砂池(ちんさち)は、その名のとおり「砂」や「小石」などの大きなゴミを取りのぞくための水槽です。そして、最初沈殿池(さいしょちんでんち)では、さらに小さなゴミを取り除くことができます。
つぎの処理は「反応タンク」です。活性汚泥(かっせいおでい)と呼ばれる各種微生物をつかいます。クマムシやヴォルティセラなどの微生物は、汚水に含まれるゴミを食べるのが好きです。微生物の生態をうまく利用して6時間~8時間かけて浄化します。
最終沈殿池(さいしゅうちんでんち)では、お腹いっぱいになった微生物たちを3時間~4時間かけて沈めます。ここまでくれば濁っていた水がキレイになっています。塩素・紫外線・オゾンなどをつかって消毒したあとに、川や海へと還します。
学習まんが『下水道のひみつ』は、人類7000年の水道の歴史、マンホールにまつわる楽しい知識なども解説しています。たかが下水道だと思っていましたが、一般に知られていないことが多くて、とても好奇心をくすぐられました。
【著書紹介】
下水道のひみつ
著者:ひろゆうこ(漫画)、YHB編集企画(構成)
出版社:学研プラス
下水道はみんなの生活を支え、地球の環境を守る大切なものだよ。例えば、トイレやお風呂で使った水、道路にふった雨はみんな下水道に流れていくんだ。いったい下水道はどんなことをしているのだろう?この本を読めば、下水道のひみつがよくわかるよ。