1998年に刊行された『完全ヒモマニュアル』(鍵英之・著/アドレナライズ・刊)が、20年の時を経た2018年に電子書籍として復刊した。この本では極意として「生き地蔵戦術」が紹介されているが、それはどのような手法なのだろうか。
専業主夫願望の増加
20年前よりも働きたい男性は減っているようだ。女性の就業率は上がり、東京都の平均婚姻年齢は30歳を超えた。小金持ちの独身女性は少なくない。そうした女性の収入を頼りにしているのか、今年の新成人男性のうち専業主夫願望を持つものは15.7%もいた(2018年、オーネット調べ)。これは前回調査よりも5%も増加しているという。
著者の鍵英之さんによると、男性にお金を出してくれやすい女性は看護師だという。「忙しい」「友達が少ない」「勤務時間が不規則」の3拍子が揃うと、寂しさからヒモ男に依存しがちになるようだ。確かに私も出張ホストから看護師の指名が多いと聞いている。また、バリバリ働く女性も、忙しく、友達と会う余裕もなく、深夜までハードに仕事をするので、条件に当てはまるという。
画期的? 生き地蔵戦略
鍵さんは、女性に好かれるための数多くのテクニックを持っている。女性に長く好かれ、しかもお金まで出してもらうのだから、よっぽどマメに尽くしているのではないだろうかと思う人も多いだろう。けれど、彼がとった作戦のひとつ「生き地蔵戦術」は、実は何もしない、というもの。確かに、余計なことをしたり一言多いがために女性から敬遠される男性はいる。むしろ何もしないほうが減点にならないのだ。
著者の理論はこうである。お地蔵さんは何も喋らない。お参りに来る人が自分の悩みや願い事などを語りかけてくるだけだ。お地蔵さんはただ黙って聞いているだけである。それだけなのに、お賽銭までもらえるのだ。妙に納得できてしまう理屈である。「ひと言ふた言、相手の心が落ち着くような言葉をかけてあげる」とさらに満足感を与えられるという。ではその気の利いた言葉とは、どういうものなのだろうか。
絶対自力説法
これは、因果応報なのだと女性に考えさせる説法だ。自分でなんとか解決しなくてはという気持ちを起こさせるものである。頑張ろうとする女性を温かく見守ることが、彼女のパワーとなるはずだ。
(例)
「君のフラフラした態度が相手を揺るがせているんじゃないかな」
(『完全ヒモマニュアル』より引用)
絶対他力説法
こちらは逆に、自分の力ではこの情勢を変えられるものではないということを説くものである。大いなる運命に翻弄されている中、すぐ近くにすがれる男性がいるのは大きな支えとなるものだ。
(例)
「この世のことって、結局自分ではどうにもならないことも多いと思うんだ」
(『完全ヒモマニュアル』より引用)
絶対時間説法
これは時が解決してくれる、というものだ。時期を待つというのは、果てしなく感じるほど長くつらいものだけれど、一人ではなく、そばに寄り添ってくれる男がいたら、どれだけ慰められることだろうか。
(例)
「だいじょうぶ。すべてとは言わないまでも、かなりの部分は時が解決してくれるよ」
(『完全ヒモマニュアル』より引用)
相手が貢ぐまで待つ
結果を急ぐ男は「アレを買ってよ」などと女性に直接ねだってしまいがちだけれど、プロのヒモ男は「アレいいなあ」とつぶやくだけだ。それを聞いた女性が「プレゼントしようか?」と言ってくるまで、表現をあれこれ変えながら願望を何度も口に出し続けるのである。
著者は「北風と太陽」という童話も例に出していた。旅人のコートを脱がせるために、北風は冷たい風を吹き付け剥ぎ取ろうとした。しかし旅人は寒がり、かえってコートをしっかり着込んでしまった。けれど太陽が温かく照らしたら、旅人は暑がり、自らコートを脱いだのだ。女性が「お金を私が払いたい」という気持ちになるまでイライラせずに待てる男こそ、長く貢がれるヒモ男になれるのではないだろうか。
【著書紹介】
完全ヒモマニュアル
著者:鍵英之
出版社:アドレナライズ
ルックスは十人並、どちらかといえばダメ男、そんな著者がなぜ脱サラしてまで“ヒモ”という生き方を選び、現在いかにして複数の女性からのサポートで生活しているかを紹介。本書を読めば「これなら自分でにもできる」と、自信と勇気がわいてくるはず!? 1998年に刊行されて話題騒然、雑誌・テレビなど多くのメディアに取り上げられた「伝説のヒモ指南書」が電子化されて復刊! 時代が変わっても男と女の恋愛ハウツーテクニックは不変!? 当時の風俗・世相を知る上で貴重な資料でもある。