インターネットがやめられない。朝起きたら真っ先にスマホでメールを確認する。LINEやTwitterなどのアプリ通知を確認する。ネット銀行の預金口座から不正にカネが引き出されていないことも確認したい。
残高かくにん! よかった。そろそろ顔でも洗うか……と、その前にヤフーニュースをチェックしなければ。(しばらく布団から出るつもりがない)
30分も待てない。仕事中や授業中なのに、どうしても我慢できずにネットニュースや2ちゃんねるまとめブログを見てしまう。政治家や有名人や大企業が失敗したり落ちぶれていく様子が気になって仕方がないからだ。情けないと思いつつ、やめられない。
インターネットやSNSの罠にハマる
世間には、同じような悩みをかかえている人がいるものだ。
三十代の独身女性。職業はフリーライター。原稿を書いて生計を立てている。仕事の都合上、1日のほとんどをパソコンの前で過ごしているから、いやおうなくインターネットの魔力に引き寄せられて、時間をムダ使いすることが多いという。
彼女を夢中にさせるのは、家庭崩壊やご近所トラブルを扱っている2ちゃんねるまとめブログだ。ほかにもFacebookを利用しており、友人知人に「いいね!」を欠かさない。フリーライターは人脈が命綱であり、いつも仕事をくれる編集者や、今後おつきあいを願いたい業界有名人の自慢話にも積極的に「いいね!」を連発していた。
だが、本音を言えば「うんざり」していたという。2ちゃんねるに投稿された他人の不幸話を読みあさっている自分自身に。本当は「うざい」と思っているのに、友人や知人の充実生活アピールを見せつけられるのが苦痛でたまらなかった。
黒ネットと白ネットの見分け方
『節ネット、はじめました。』の著者、石徹白(いとしろ)さんは気づいた。「フェイスブックは私を不幸にしている。インターネットそのものが人生の限りある時間をむしばんでいる」と。
このままではいけないと一念発起して、体にも心にも良くない生活を改善するためにインターネットを「白」と「黒」に色分けした。
黒ネットとは「見たことに対する後悔が大きいもの」だ。タイトルに釣られてクリックするがいつも期待はずれのニュースやブログ。ネット炎上や揉め事のまとめサイト。料理写真や自慢だらけのFacebookも該当する。
白ネットとは「ためになったり面白かったりで後悔はないもの」だ。Wikipediaを筆頭に、行くつもりのない旅行計画を立てたり、やるつもりのない英語上達法ブログを読んでみたり、買うつもりのない高額な電化製品の価格比較をしたり。
Facebookでストレスをためない方法
著者にとって、いちばんの病巣はFacebookだった。思いきって全員の「フォロー」をはずしてみた。すると、フィードに近況が表示されなくなった。Twitterとは異なり「フォロー」をはずしても相手にはわからない。「友達」登録がはずれるわけではないからだ。これで、アクセスするたびに表示される不快なリア充アピールを目にしなくて済むようになった。
きわめつけは、Facebookのパスワードを「hitsuyou?」のようなものに変更したことだ。用が済んだあとには必ずログアウトすることにした。間をおかずにアクセスしようとすれば、再ログインのためにパスワード「hitsuyou?(必要?)」を入力しなければいけない。ハッと我にかえる。
ありのままの自分を認めて、すこしでも改善したら褒める
節ネット(インターネット利用の節制)をするために、ブラウザの「アクセス履歴」を毎日チェックすることにした。検索、ウェブメール、ウィキペディアなど、インターネットという名の樹海を目的もなくさまよっていることが一目瞭然になった。
ムダ知識を蓄積するだけの「白ネット」が多すぎたり、見たあとイヤな気持ちになる「黒ネット」が目立っていたら反省する。ブラウザ履歴は、ネット利用の振る舞いや身だしなみをチェックできる「鏡」の役割を果たす。
節ネットの成果は、毎日欠かさず「手帳」に記録したほうがよい。きのうよりも節ネットを達成できたら「さすが! えらい!」などと自分を褒めるコメントを書く。アクセスの少ないブログを書いたり、リツイートしてもらえないTwitterよりも、「自褒め」は確実に承認欲求を満たすことができる。
見ると後悔したりイヤな気持ちになる「黒ネット」を禁欲することは難しくない。注意すべきは「白ネット」だ。暇つぶしや知的好奇心を満たすためという言い訳を許していたら、いつまでたってもインターネット依存症は治らない。
(文:忌川タツヤ)
【文献紹介】
節ネット、はじめました。「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す
著者:石徹白未亜(著)
出版社:CCCメディアハウス
1日5時間以上もインターネット利用する人が少なくない昨今。わたしたちは人生の貴重な時間をネットに奪われているのでは? とはいえネットは生活に深く食い込んでいて、完全に絶つのは難しい。ならば「節ネット」に挑戦してみよう! そう思い立った著者が試行錯誤の末に見つけた、効率的かつ効果的にネット利用を減らすための方法を紹介。 自覚症状のない人にも、きっと大いにうなずける&役に立つネタが満載です。