学校や職場で「存在感が無いよね…」と言われるのも、「あの人、自分を頑張ってアピールしてイタい…」と冷ややかな目で見られるのも、どちらもできたら避けたいもの。
バラエティー番組の「アメトーーク」ではコンビ間で相方よりキャラクターや存在感が無いといわれる人たちが集まり「じゃない方芸人」という回がありました。芸人さんの世界だけじゃなく、日常生活でも「これと言って際立つ特徴がない」「存在感がなくはないが今ひとつ足りない…」など、気づくと「じゃない方」に私たちはなりがちだと明治大学教授の堀田秀吾氏は指摘します。
では、どうしたら無印象でもなく、イタい・ウザい・イマイチというようなマイナスな印象を相手に与えることなく丁度良い存在感を出せるのでしょうか?
「脱!じゃない方」として前出の堀田氏が挙げている例を一部ご紹介していきましょう。
ガチャピンに学ぶ「じゃない方」脱出法
1973年にフジテレビ「ひらけ!ポンキッキ」に登場したキャラクター、ガチャピンとムック。21世紀になった今でも活躍し続け、老若男女に愛されている彼ら。しかしこのコンビにも人気格差があります。フジテレビのwebサイトではガチャピンのゲームやブログがあったりしますが、ムックのものはありません。
そしてガチャピンは130万人以上のフォロワーをもつTwitterもやっています。一方ムックはFacebookのみ。しかもムックのFacebookにも関わらず、高頻度でガチャピンの画像が掲載されガチャピンの人気にあやかっている感はいなめません。
色彩心理学的には、より注意を引きやすいという赤色に身を包んでいるムックですが
なぜここまで人気の差が開いてしまったのでしょうか?
それは二人の見た目だと堀田氏は指摘します。
ガチャピンの特徴といえば、眠そうな大きなタレ目と特徴的な出っ歯。
それに比べてムックは顔自体には特徴的な部分がありません。
人間は他人を認識する際、顔を最も重視するそう。ガチャピンは歯と目だけを描けば、多くの人はそれがガチャピンだと認識できますが、ムックの歯と目を描いても、なかなか分かる人はいないのでは…?
「そもそもムックの歯と目って…?」と書こうとしても手が止まりそうです。
なので、見た目として特徴のある顔をしているガチャピンのほうが、より心に残りやすいのです。
そして、ガチャピンの大きなタレ目は、ムックのつぶらな丸い目と比べると、どこかやさしそうに見えます。また、瞳孔が大きく開いている人に、異性はより魅力を感じるという実験結果があるそうで、ガチャピンとムックの瞳の大きさを比べてもガチャピンの瞳の方が大きいです。
女性の間でかわいく見せようと、タレ目のメイクや黒目を大きく見せるコンタクトレンズが流行っているのも、こうした理由のようです。
ガチャピンに学ぶ共感力
ガチャピンといえば、あらゆることにチャレンジするキャラとしてお馴染みです。水の中だろうと、私たちでさえ躊躇するような高所だろうとヘッチャラな彼。こういった挑戦の過程が逐次放送されているため、視聴者は自然にガチャピンのことを目にすることが多くなります。
心理学の用語で「単純接触効果」といって、人は接触する回数の多い人に好意を抱く傾向があると言われています。ガチャピンがムックよりモテる背景には、この効果の恩恵もあると堀田氏は述べています。
また、そういったガチャピンの挑戦の様子を追いかけることにより、私たち視聴者は共感も覚えます。
ワールドカップやオリンピックなどの競技でがんばっている選手に共感し、好意を抱いて応援する心理と同じ心理が、ガチャピンの姿を見ている視聴者にはたらくのです。
「共感は、好意に結びつきます。親近感を覚えるからです。私たちは、ガチャピンがいろいろなことに挑戦している姿に自分を重ねることによって、さらなる親近感、そして好意を覚えるのです」と堀田氏。
つまりガチャピンのように「いろいろなことに挑戦し、がんばっている姿」を普段から見せることが私たちの生活でも大切なのです。まわりの人の共感をどれだけ得られるかによって、自分の人気が左右されるとなれば、ちょっとしたことでも全力で一生懸命に取り組みたいものですね。
この他にも「なぜ「タモリ論」は売れて「さんま論」は売れないのか?」「なぜ中田は日本代表で浮いて本田は溶け込んでいるのか?」といった人気者たちの自己主張法を学べたり、「こんな自己紹介はいらないという3パターン」など、より実践的に自分の存在感のコント―ロールの仕方を堀田氏の最新刊『なぜか好かれる人がやっている絶妙な存在感の出し方』では学べます。
自分の存在感に自信が無い方は、本書でたくさん紹介されている「さり気なく心に残る人になるため自己プロデュース術」を取り入れてみては?
(文:フムフム編集部)
【文献紹介】
なぜか好かれる人がやっている絶妙な存在感の出し方
著者:堀田秀吾
出版社:大和書房
自己アピールの時に、無難な言い方に終始したり、なぜか自慢や自虐に走ったりと、存在感を間違った形で出していませんか? イタい、ウザい、イマイチという印象を相手に与えてしまうのは避けたいし、アツい人間にもなりたくない。ほどほどで、ポジティブな存在感をアピールできれば、もっと楽しく、もっと生きやすくなる。コミュニケーションを研究している著者が、言語学、心理学、脳科学などさまざまな学問の研究成果を応用しながら、有名人の例などを通して、絶妙な存在感を出していく方法について考察。さり気なく心に残る人になるため自己プロデュース術を紹介!