マンガを集めている、というと、同じタイトルのマンガを全巻揃える様子を思い浮かべるのではないだろうか。けれど、実はテーマを決めてマンガを集めるというコレクション方法もあり、やってみるとかなりディープに楽しめるのだ。
コレクションテーマ
私の娘は女子高生ながら、双子をテーマにしたマンガを何十冊も持つコレクターでもある。なぜなのか双子に強い憧れがあり、双子が出てくる映画もチェックしている。映画だと『シャイニング』に出てくる双子の少女が「2人並んでそこにいるだけで怖さが倍増する」から1番のお気に入りだ。
マンガだと志摩ようこさんの『わたしが死んだ夜』が最高なのだという。1979年の少女漫画で、1人の男を巡って美人双子が争うのだ。しまいには拳銃をこめかみに当てるロシアンルーレットを始める事態にまで発展してしまう。このドロドロ感がたまらないそうだ。
コレクションとこだわり
ちなみに私もテーマを決めてマンガを集めている。すべてではないけれど、ホストクラブが出てくるマンガは結構持っているのではないだろうか。このテーマは男性漫画と女性漫画で、全くといっていいほど描かれかたが違うところが面白い。
男性漫画だと、ホストクラブはいわゆるアメリカンドリームものとして描かれることが多い。1人の男がホストクラブで武者修行をして、やがて億を稼ぐナンバーワンへと成長する。もちろん彼の周りにはそれを支える美女指名客が何人も寄り添っている。女も金も地位も手に入るという達成感こそがキモである。
しかし女性漫画だとパターンは真逆のことが多い。街で偶然に出会ったイケメンは最初からナンバーワンホストだ。そして2人は店を通さず外でのデートを重ね、ラストは彼がホストクラブを電撃退店し「もうお前以外の女はいらない」とヒロインにプロポーズしてくる。並みいる女を蹴落とし、自分だけがイイ男を独占できる快感こそがキモなのだ。
比較の楽しみ
娘が集める双子漫画にも性差があるという。女の双子の場合は大抵は同じ男を巡って陰湿な闘いを繰り広げるものだ。しかし、男の双子の場合はそうはならないことが多いという。どちらか一方が体が弱く、もう一方が守って支える、というBL的設定になりやすいのだそうだ。
娘は女の双子が男を取り合う事に強い関心を持ち、友人の双子姉妹に、同じ人を好きになることはあるのかと聞いてみたそうだ。すると男性の好みが全然違うのでそれはない、と断言され、漫画とリアルは違うと肩を落としていた。一体何を期待していたのだろう。友人姉妹のドロドロなのだろうか。
星新一さんのコレクション
『手塚治虫の漫画の描きかた』(手塚治虫・著/手塚プロダクション・刊)によると、作家の星新一さんは、無人島のマンガをコレクションしていたという。それは素晴らしいショート・ショート作りのヒントになるからだろう、と手塚治虫さんは考えていた。
無人島というスペースや、登場人物に制限がある設定の中では「どんなアイデアのひろげ方もできる」のだそうだ。確かに、普通の恋愛物語も無人島でふたりきり、という設定にしただけでスリルいっぱいになる。殺人事件が起きたら犯人候補はわずかしかいない。地球上の究極の密室が、無人島なのかもしれない。
テーマを深めること
ちなみに手塚治虫さん自身のテーマは「愛と死」なのだそうだ。その中でも『火の鳥』はかなり深いところまで描いた作品だったという。確かに手塚さんの作品には、愛も死も入っているものが多い。明確なテーマ性を持って作品を作り続けていたのだ。
テーマに沿った漫画を読むうちに、深い理解や新たな気づきも得られるようになるし、それをブログに綴ればそのテーマの漫画についての詳しい人としてコメント依頼も来るかもしれない。テーマを決めてマンガを集めると、自分自身の専門性やオリジナリティーにもつながるのだ。
【著書紹介】
手塚治虫のマンガの描き方
著者:手塚治虫
出版社:手塚プロダクション
まず絵を描くということはどういうことか、という基本的なことを幼児の絵を参照しながら語り、マンガを描くための道具、その選び方を教える、という実践に即した入門書となっています。この本を通してマンガの描き方を学んだ、というプロもたくさんいる、そんな名著です。