子育てとは、正解のないテストを日々繰り返しているようなものだ。子どもの癇癪(かんしゃく)やグズりが続くと、こちらもイライラが募ってどうしようもなくなったり、はたまた妙に冷静に対応できる日があったり。なんだか、人間としての度量を試されているように感じることもある。
時には、「私の子育て、間違っていたかしら……」などと悩むことも。深い迷いの中でさまよっていると、子育てにおける成功者のアドバイスを聞いてみたくなるものだ。
今回は、メディアでも活躍している「天才三兄弟を育てた母」大野智恵子さんの著書『子どもの未来は親が決めなさい』(学研プラス・刊)から、大野ママ流・子育ての秘訣を覗いてみよう。
我が子とよその子と比べなさい
自分の子どもと他人の子どもを比較することは、オーソドックスな子育て論ではNGとされることが多い。確かに、「○○くんは手先が器用なのに、うちの子はホント不器用で」などと、自分より出来る子と比較されるほど気分が悪いことはない。
だが、大野ママは「どんどん比べなさい!」と断言する。
たとえば、子どもたちが遊んでいる様子を見ながら、「あの子は運動神経がいい」「面倒見がいい」「人の物を欲しがるタイプ」「一人で黙々と制作している」などと、自分の子どもと比べて観察してみる。すると、我が子の特徴がよく見えてくるのだという。比較対象が多ければ多いほど、気づきも増える。だからこそ、同級生だけでなく、年上や年下の子どもの様子もしっかり観察することが大切なのだそう。
そういえば、先日取材した元小学校教員の情報学博士の方も、同じようなことを語ってくれた。遊んでいる姿をしっかりと観察することで、子どもの興味関心がどこにあるのか、好きなことは何か、長所や短所がハッキリと見えてくるのだと。
ただし、よその子の優れたところばかりを見て、我が子のできない部分だけが目につくようでは逆効果だろう。まずは、子どもの中にある「天才のタネ」を見つけることが大野ママ流子育ての第一歩。公園で遊ばせているときも、ママ友との会話に夢中になっている場合ではないようだ。
続いては、大野ママが提案するユニークな子育て理論について見てみよう。
幼児期ほど厳しく育てなさい
独自のユニークな子育て論を多く発信している大野ママ。そのひとつが「パンティストッキング理論」だ。
パンストは、足首のあたりがきゅっと締まっていて、ふくらはぎから足のつけ根にかけて緩くなり、またお腹やウエストあたりでキツくなる造りだ。これを子育てに重ねるのだと、大野ママ。足首周辺にあたる幼児期にしっかりと厳しく育て、思春期へ進むに従って緩く、子育ての仕上げである就活期に最後の締めを!という理論である。
最近、叱らない子育てが話題になったり、放任主義を主張したりする親が増えている。だが、まだわからないことが多く、自分自身で判断することなど難しい幼児期こそ、もっとも厳しく育てるべきだと大野ママは語る。
命に関わるような危険なことはもちろん、ルール違反、人としての礼儀などは決して手を抜かず、厳しく教えること。教えれば教えただけ、スポンジのようにすべて吸収する時期だからこそ、なあなあで育ててはいけないのだ。
さらに、パンストは一箇所つまむと、周辺も一緒に持ち上がる。子育ても同様で、ひとつ天才のタネが育って能力や才能が伸びていくと、ほかのことまで底上げされてくるのだとか。幼児期は叱らず、とにかく褒めて育てよう!と思っていた人は、パンスト理論を取り入れてみてはいかがだろうか。
子どもの夢を育てる「子育て年表」を作りなさい
大野ママは、子どもの夢を叶えるために子育て年表を作るべきだと述べる。特徴的なのは、「逆算式」だということ。
叶えたい夢を設定したら、3年ごとのスパンで何をしたらよいかを年表に書き出し、ひとつずつクリアしていくというものだ。たとえば、こんな仕事をさせたい! という夢ができたら、そのためにはどこの大学に入って何を専攻させるか。高校は? 中学校は? 塾はどこに通わせる? 小学校は?というように、逆算していって細かく目標を決めていくことがコツ。
確かに到達点が定まれば、自ずとそこまでの道が見えてくる。実際、大野家は長男「東大への道」、次男「建築家への道」、三男「テニスプレーヤーへの道」を掲げ、それぞれの逆算式子育て年表を作成。途中で道を修正しつつも、しっかりと夢へ到達している。
100%真似したい!と思える子育て法などない
ほかにも、「兄弟を同じ土俵で戦わせない」「就活は戦略的家族力で」など、私自身3人子どもがいるので、参考になる内容ばかり。「子育ても戦略」などと言われると、条件反射で拒否感が出てしまう人もいるだろうが、日々ビジネスシーンでさまざまな戦略を練っているパパたちこそ、大野ママの子育て論に共感できる点が多いかもしれない。
とはいえ、なかには「いやいや、それはどうかな!」と思うものや「これは私には無理だな」という教えがあったことは事実だ。だが、それでいいのだと思う。だって、まったく同じ子育てなどありえないし、どんなに素晴らしい子育て論を掲げている人だって、100%正しい!と思えることはないのだから。
大切なのは、自分の信念をまげないこと。子どもとしっかり向き合うこと。
そのうえで、いろいろな子育て法からいいと思う部分だけ取り入れていけばいいのではないだろうか。
それにしても、本書を読み進めていくうちに、大野ママが松岡修造氏に重なってきた。と思ったら、自身のブログで「子育て界の松岡修子」と称していたので、やはりと納得。熱~い大野ママの子育て論、一読の価値がある一冊だ。
【著書紹介】
子どもの未来は親が決めなさい
著者:大野智恵子
発行:学研プラス
「子どもは本気で叱れ!」「子どもの好きにさせるのは、親の怠慢」「幼児期ほど厳しく育てる!」……3人の子どもの学力・芸術・スポーツの才能のタネを見つけて夢を叶えた著者の子育て論。杉山愛ママ(杉山芙沙子氏)・内村航平ママ(内村周子氏)推薦!!