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自己啓発
2015/7/3 0:00

50代主婦が東大に合格できた原動力とは

2012年。50歳の主婦である安政真弓さんが、東京大学文科3類に合格した。彼女が東大を目指した理由は一風変わっている。高校生の息子さんが浪人した際に、自分も再び東大を目指してみようかと思い立ったのだそうだ。彼女は若い頃に東大に2度不合格を喫して早稲田に進学したというのだから、元々かなり頭のいいかただったとしても、受験から30年近くも離れての再挑戦は相当大変だったはず。私たちは彼女の合格体験記『普通の主婦だった私が50歳で東大に合格した夢をかなえる勉強法』から前に進むためのたくさんのヒントを得ることができる。

 


 

 

中高年だって大学生したい

 

受験生の子どもに向かって「ママも大学に行こうかな」と母親が言ったら、さぞびっくりされることだろう。しかし中高年で大学に入学する人は、これから増えてくる気がしてならない。先日は萩本欽一さんが73歳にして駒沢大学に入学された。そして女優の石井苗子さんも43歳の時に聖路加看護大学(現:聖路加国際大学)に入学している。さらに私自身も、息子が高校3年の時に、とある私立大の文学部の通信教育課程に学士入学し、実は今、40代の女子大生なのである。大学で年に4回行われる試験では、私より高齢のかたを大勢見かける。

 

私の場合、ゲームばかりしていて全然勉強しない息子を見て思わず「お前はせっかく時間があって勉強を思い切りできるのにもったいない。ママはもしまた大学行けたら今度は文学を真面目に勉強してみたいよ」と漏らしたのが始まりだった。こちらはちょっとしたグチのつもりだったのだけど、息子は「じゃあ行けばいいじゃん」とあっさり言ってくれたのだ。

 

 

子どもがライバル

 

大学といっても私の場合通信制なので、学費も安いし入試倍率も高くはないから行こうと思えばいつでも行けたのだけど、何年も躊躇していたのは英語が必修だったこと。大の苦手なので単位を取れる自信が全くなかったのだ。でも息子が「英語はなんとかなるよ」と励ましてくれたので心が軽くなり「じゃ、やってみる」と入学を決意できた。そして翌年4月、母親は大学生、息子は浪人生という不思議な関係が誕生してしまった(息子は大学に不合格だったから)。

 

著者の安政さんも同じ受験生である息子さんの存在が、かなりの力となったはずだ。センター試験も二次試験も得点開示されることだし、手を抜くわけにはいかなかっただろう。私も息子の手前、単位を落とすのは恥ずかしいので必死に勉強し、たった1年で英語の必修8単位を全部取得することができた。これは自分でも信じられない快挙だった。子どもの目があると、親は時に信じられないほどの力を発揮できてしまうものらしい。

 

 

暗記よりも大切なもの

 

彼女が勉強を再開したきっかけは、お子さんがまだ小さかった頃にママ友達とトラブルが起き、うつ状態に陥ったことだという。当時はフランス語検定だったそうだけど、その合格の喜びが自信になり、立ち直ることができたとあり、とても共感した。私も公園でママ友仲間に入れてもらえず精神的にきつかった時期があったけれど、家に帰れば原稿仕事があり、それが自分を支えてくれた。ただ悩んでいたずらに時間を消費するのではなく、よそで有意義に過ごすよう心がければ、成長すらできる。どこかで不条理な目に遭っても、自分を認めてくれる別の世界があれば、人は強くなれるのだ。

 

50歳といえば記憶力は若者よりも落ちているはずだ。それなのに合格できた理由を彼女は「優先順位の付け方、物事を要領よく進めるコツ、不安な気持ちを抑えてモチベーションを高める方法」だと断言している。主婦業をこなしながらなので勉強時間も一般受験生より少なかったが、集中力でそれを乗り切ったのだ。そのあたりの時間管理、徹底した手帳術などは、本の中に丁寧に紹介されている。暗記力が落ちているなら、効率良く暗記するための工夫をすればいい。彼女を合格に導いたのは、自分の状態に最も合う学習方法を編み出す努力だったのだと思う。

 

 

人生はやり直せる

 

私の息子は1年間の浪人生活を経て、まさかの早慶合格を果たした末に、第一志望の国立大学に進学できた。あれほど好きだったゲームを断ったのは立派だった。「勉強してない親に『勉強しなさい!』と叱られたらうるさく感じるけど、黙って勉強し続けているママを見たら、俺もやらなきゃなって思って」と、あとで息子は話してくれた。安政さんの息子さんも有名難関大学に進学されたという。大学じゃなくても資格試験でもいい、親も学び続ける姿勢は大事だと思う。

 

生涯学習時代とはいえ「なんでその年でわざわざ大学に?」と中高年入学者に呆れる人は少なくない。でも本人が「これこそ自分だ」と思えればそれでいいのではないだろうか。私は「大学は文学部に行けばよかったな」という気持ちをずっと引きずってきた。迷った末に入学してみて、ああ、これこそ自分が学びたかったことだと実感でき、心がとても落ち着き、癒されたとすら感じている。安政さんも、長年の夢を叶え、充実した学生生活を過ごされているという。人生は、何歳であっても、やり直すことができるのだ。

 

 

(文・内藤みか)

 

 

【文献紹介】

普通の主婦だった私が50歳で東大に合格した夢をかなえる勉強法
著者:安政真弓
出版社:朝日新聞出版

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