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歴史
2018/5/16 6:00

【今日の1冊】あの偉人達もじつはポンコツだった!?――『しくじり歴史人物事典』

大人がニヤリとする作り

まずは「人生すごろく」。ちょっと気の利いたキャッチフレーズに続き、人生がすごろくになぞらえて説明されていく。ところどころに大きな出来事がちりばめられているので、全体を漠然と眺めるだけで、特に意識して覚えようとしなくても重要な点は頭に入るはずだ。

 

しくじりに関しては、やはり本能寺の変がクライマックス。文章だけでは頭に入りにくいかもしれない情報も、この本のように切り口や角度を変えた形で示されると抵抗がない。締めくくりとして記されるのが、本人による反省の言葉だ。

 

「小さな心のスキが大きな失敗をまねく」

『しくじり歴史人物事典』より引用

 

筆者が一番ニヤリとさせられたのは、3つ目の項目「みんなのコメント」。織田信長その人を評する関係者のみなさんはルイス・フロイス(宣教師)、豊臣秀吉、そして徳川家康。それぞれの立場からそれぞれの言葉を語る。ちなみに、コメントの内容には史実として残されているものにひとひねりアレンジが加えられている。特に刺さったのは、ルイス・フロイスの次のようなひと言だ。

 

「自信過剰で、人の意見を聞かないんです」

『しくじり歴史人物事典』より引用

 

多くの戦国武将たちと交流のあったフロイスは、信長について「傲慢で名誉心が強く、家臣の言うことをほとんど聞かない」という文章を実際に残しているようだ。指導者としてネガティブな要素であることは間違いない。でも、筆者はこのひとことで、信長という人間にさらなる魅力を感じた。古き良きアメリカのロックスターみたいだ。フロイスのコメントには、こんなものもある。

 

「とても清潔でキレイ好き。屋しき内も整とんされていました」

『しくじり歴史人物事典』より引用

 

誰の言うことにも耳を貸さないイケイケ戦国武将が、実は清潔でキレイ好き。家の中もせっせと整理整頓してました。想像すらできないギャップである。歴女と呼ばれる人たちはこういうところに萌えるのかな、なんて思いながら読み進む。

 

 

歴史って、あえて勉強するものじゃないのかも

2022年、高校の歴史教育のカリキュラムが見直されることが決まっている。「歴史総合」という新科目が必修科目として導入される方向性は既定路線だ。

 

「歴史総合」という科目はこれまで別の科目だった日本史と世界史を融合したものになるらしい。その結果、ひとつの科目の中でカバーするべき領域からあふれてしまうものが出てくる。受験のための情報としてのプライオリティを軸にすると、坂本龍馬や大岡忠相、武田信玄、上杉謙信、吉田松陰といった大スター級の人々が漏れてしまう可能性が大きいことが明らかになった。

 

偉人の人間らしさは、受験には直接関係ない。そうだけれども、歴史の面白さの核となるのはまさにその部分に関するエピソードではないだろうか。人間らしさという要素をピックアップして見せる『しくじり歴史人物事典』のアプローチこそが、実は歴史の学習メソッドとして王道なのかもしれない。興味が持つことができれば、さらに知りたいという気持ちも芽生える。

 

何十年か後の時代、「歴史総合」という新科目の導入が“しくじり”として認識されていないことを祈るばかりだ。

 

【書籍紹介】

しくじり歴史人物事典

著者:大石 学(監修)
発行:学研プラス

日本の歴史を動かした“すごい”偉人たち。そんな彼らの思わずツッコミたくなる“しくじり”にスポットをあて、ゆるいイラストとともにゆるく紹介。読めば読むほど、愛すべき人物に見えてくるから不思議です。笑えてじつはタメになる人物事典。

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