こだわり。思索を突き詰めることによって導き出された「ひとつの解」。卓越した「こだわり」は、わたしたちの人生を豊かにします。
『その「おこだわり」、俺にもくれよ!! (2)』(清野とおる・著/講談社・刊)という本があります。『東京都北区赤羽』シリーズの著者が、こだわりを極めた「おこだわり人」を取材した1話完結のドキュメンタリー漫画です。
薄皮パンの男
おこだわり人は、41歳・建設作業員の男性です。肉体労働なので、1日の終わりにぐったり疲れることがあります。そんなときは、仕事帰りにヤマザキ『薄皮クリームパン』とDole『濃縮還元アップルジュース(200ml)』を買い求めるそうです。
甘いパンと甘いジュースの組み合わせ。せっかくの甘味を打ち消してしまう、と思いきや……薄皮パンの男は「おこだわり」によって甘さの対消滅(ついしょうめつ)を回避してみせます。
薄皮パンを食べる前に まずドールのアップルジュースを一期に飲み干します
(『その「おこだわり」、俺にもくれよ!! (2)』から引用)
甘いジュースを飲み干す→甘いクリームパンを食べる。ただし、逆順はNGです。クリームのほうが甘いため、直後にアップルジュースを飲むと「すっぱい」と感じます。
半信半疑で試してみたところ、先に飲んだアップルジュースの甘さが舌に残っていても、薄皮クリームパンの甘さをしっかり感じ取ることができました。「おこだわり」の精神は、わたしたちの日常をエキサイティングに変えてくれます。
梅つぶの男
おこだわり人は、27歳・製薬会社にお勤めの男性です。梅の酸っぱさが大好きなので、「ビン詰めの梅干し」を持ち歩いていた時期もありました。そんな「梅干し好きの男」がたどりついたのが、アサヒフード『梅干し純』という商品です。
『梅干し純』は、フリーズドライの梅干しをタブレット状にしたものです。梅干パワーで百人力を得た「梅つぶの男」は、行動をエスカレートさせていきます。
よく行く駅前の安立ち呑み屋があるんですけど
入店直前に「純くん」を2粒 お口に仕込み(中略)素知らぬ顔で入店して「純くん」を肴(さかな)にして呑むのです
(『その「おこだわり」、俺にもくれよ!! (2)』から引用)
「持ち込み厳禁」の立ち飲み屋であるにもかかわらず、口の中に『梅干し純』をそっと忍ばせながら、米焼酎のお湯割りだけを注文します。「口内の持ち込みがバレるかも……」という背徳感がたまらないそうです。
本書『その「おこだわり」、俺にもくれよ!! (2)』には、飲み食いする以外の「おこだわり人」にも取材しています。
土日、人に会わぬ男
おこだわり人は、27歳・印刷会社にお勤めの男性です。「誘われたらイヤと言えない性格」を変えたいと思っていました。そこで、休日には誰とも会わず1人で過ごすことを決意します。
まず、金曜日の夜はニンニクたっぷりの料理を食べます。退路を立つためです。強烈なニンニク臭を取り込むことによって、あえて「反社会性」を身にまとう。もしも誘いを受けたときに「NO!」が言いやすくなります。
週末の2日間は、誰とも会わないだけでなく電話にも出ません。親族・友人はもとより、恋人からの着信やメッセージも無視するほどの徹底ぶりです。だからといって、「土日、人に会わぬ男」は人間嫌いではありません。
月曜出社して人に会った時 たまらなく愛おしく感じます
いつも以上に楽しく 人との会話に花を咲かせる事ができます
(『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!(2)』から引用)
48時間も他人と会わなければ、人恋しくなります。だから、休日明けの月曜が楽しみでたまらないそうです。「土日、人に会わぬ男」をマネすれば、憂鬱なブルー・マンデーをハッピーに変えることができるかも。お試しください。
「おこだわり」が人生を楽しくする!
紹介しきれませんでしたが、本書『その「おこだわり」、俺にもくれよ!! (2)』には、著者が出会った10名を超えるおこだわり人のドキュメンタリー漫画を収録しています。
ムダに3時間しか寝ない人。中国産うなぎを圧倒的においしく食べる方法を見つけた人。変わった読書法の人……等々。マンガだけではなく、おもしろ写真や対談テキストなどが盛りだくさんの内容です。お試しください。
【書籍紹介】
その「おこだわり」、俺にもくれよ!! (2)
著者:清野とおる
発行:講談社
「おこだわっちゃえば、いいんじゃない?」――昨今、老若男女の間で交わされる奇妙な挨拶の起源がこのマンガ作品にあるのだという。この巻でも、薄皮ミニパンの「魔法の食べ方」、乾燥梅干しを悪用した「立ち飲み屋テロ」、中国うなぎの「錬金術」、「シアワセの寝ぬ生活」、著者の清野ですら絶望した「前代未聞の読書術」などの「おこだわり」を紹介している。あにはからんや、読んだとたんに実践したくなってしまうとは……。