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2018/7/27 6:00

【朝の1冊】ベンチャーウイスキーとソメスサドルが世界進出できた理由とは?――『世界ナンバーワンの日本の小さな会社』

染谷昇を知っていますか?

『世界ナンバーワンの日本の小さな会社』に描かれるもう一人の主人公・染谷昇の半生も、肥土伊知郎に負けるおとらず波瀾万丈だ。

 

染谷は北海道の歌志内の生まれである。かつては炭鉱の町として栄えた町だが、閉山によって一気に人口が減ってしまった。何とか新しい産業をと模索した結果、白羽の矢が立ったのが馬具作りの会社だった。炭鉱で働くことができなくなった人々に技術を指導し、日本産の馬具を世界に広めようというものだ。

 

地元の人々が相談を重ねた結果、染谷昇の父政志が、既に馬具製造輸出業であったオリエントレザー社の社長に就任することになった。社長とはいっても、実態は億単位の負債を抱えた会社を引き受けた形となった。このオリエントレザー社が、後にソメスサドル社として躍進すると、この時、誰が想像したであろうか?

 

当時、染谷はまだ学生だった。東京の大学でアルペンスキーの選手として活躍していたが、父のために、そして、故郷のために会社を手伝おうと決心する。そこから始まるひたすらの前進。馬具も革も商売のノウハウもわからないまま、染谷昇はただ若さにまかせて、行動した。

 

 

様々な出会いを経て

ここで染谷がとった行動は、がむしゃを通り越してめちゃくちゃに見える。しかし、奇跡としかいいようのない素晴らしい人々との出会いが染谷を成長させていく。

 

たとえば、鞍のことを勉強しようと、紹介状もないまま飛び込んだ名門乗馬クラブでの出会い。追い返されても当然だが彼に何かを感じ取ったのだろう。乗馬クラブのオーナーが「居候していけ」と勧めてくれた。染谷は染谷でそのままキャンピングカーに住み込み、乗馬と馬具について教えを受ける。

 

また、馬に関連があるだろうと飛び込んでみたウエスタンスタイルのバーでのこと。歌手として一世を風靡した尾崎紀世彦と染谷は自然と知り合いになった。その店の常連は乗馬好きの人が多く、あるとき「馬具屋ならサドルバッグを作ってくれないか」という依頼を受けた。染谷はすぐに工場へ発注し、それが後にバッグ作りへとつながっていくのだからまるでおとぎ話のようではないか。

 

 

馬具とバッグで世界に打って出る

ソメスサドル社は馬具とバッグを2つの車輪として成長を続けた。馬具は、最初ヨーロッパに追いつくこともできない有様だった。しかし、今では外国人ジョッキーが「ソメスの鞍を」と注文するほどのクオリティを誇る。

 

さらに、馬具づくりはもちろん大事だが、馬具だけでは会社として安定しないと染谷は考えた。もう1つの看板商品として製造を始めたバッグは、品質の高さから2008年の洞爺湖サミットでG8各国の首脳夫妻への贈り物として選ばれるまでになった。

 

とはいえ、順風満帆な毎日だけが続いたわけではない。借金返済から始まった会社を建て直すべく奔走する毎日、鞍のことも革のことも、一から必死で勉強した若い日々、ようやく経営が安定したとほっとしているところに襲ったリーマンショックと、その後の景気の低迷。

 

それでも染谷は負けなかった。工夫と努力と情熱と、何よりも周囲の支援を得て、どうにか乗り切ってきたのだ。

 

 

2つの会社を追いかけたい!

「ベンチャーウイスキー」と「ソメスサドル」2つの会社を見ていると、結局、商売は人の力で行うものだとよくわかる。

 

そこにあるのは、人柄であり、真心であり、努力そして明るさだ。ノウハウを学ぶより、人間力から得るものを大事に行動することが何より大切なのだろう。これからも先行きを見守り続けたいと心から思う。日本製品はこうした会社によってそのクオリティを失わずにいるのだと、私は信じている。

 

 

【書籍紹介】

世界ナンバーワンの日本の小さな会社

著者:山本聖
発行:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

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