芥川賞作家が愛飲しているのは?
全くの好みの問題で、どうも自分は飲酒と云えば焼酎、焼酎と云えば甲類。で、甲類と云えば、結句「宝」なのである。
(中略)
カクヤスで、宝焼酎「純」の二十五度、七百二十ミリリットル四ケース(四十八本)を注文。
(『一私小説書きの日乗』から引用)
正解は『25度』でした。
実税価格は、およそ700円。宝酒造『純』シリーズは、割り材によく使われるお酒です。『一私小説書きの日乗』シリーズを読んでいると、誕生日のお祝いとして出版社から『純』1ケースが届けられたこともありました。
賢太先生による甲類焼酎の飲み方については、決定的な記述がほとんど見当たりません。いちど「水道水で割っている」という記述を見かけました。豪快です。外飲みではウーロンハイをよく飲んでいます。
お酒が好きなことは確かですが、文壇バーなどでウイスキーをすすめられたときに吐いてしまったという記述がありました。長年のあいだ甲類焼酎ばかり飲んでいたせいで、それしか受け付けない体質になってしまったそうです。
「聖地」に行けば会えるかも!?
八月十日(水)
十一時起床。入浴。
先日、頓挫してそのままの、次の短篇の復習的メモをポツポツ綴る。しかし、まだ書き上げる自信が湧いてこない。深更、一時にタクシーで鶯谷へ。
「信濃路」で、生ビール一杯、ウーロンハイ七杯。肉野菜炒め、レバニラ炒め、とん汁、チーズ。最後にラーメンライス。(『一私小説書きの日乗』から引用)
信濃路は、東京都台東区の鶯谷にある24時間営業の大衆酒場です。代表作『苦役列車』の主人公・北町貫多の行きつけの飲み屋であるため、西村賢太ファンにとっては「聖地」ともいえる場所です。
文芸誌の編集者と打ち合わせをしたあとには、東京都新宿区の鶴巻町にある「砂場」という蕎麦屋によく立ち寄っています。もつ煮込み、砂肝炒め、ウーロンハイがお気に入り。
『一私小説書きの日乗』シリーズは、既刊5巻を重ねています。掲載誌を幾度も移して、2018年8月現在では「本の雑誌」にて連載中。日々の飲み食い、テレビ出演のウラ側、文芸編集者との心理戦、放液をともなった交遊関係など、ゴシップ興味を満たしてくれる貴重な1冊です。お試しください。
【書籍紹介】
一私小説書きの日乗
著者:西村賢太
発行:角川文庫
2011年3月から2012年5月までを綴った、平成無頼の私小説家・西村賢太の虚飾無き日々の記録。賢太氏は何を書き、何を飲み食いし、何に怒っているのか。あけすけな筆致で綴る、ファン待望の異色の日記文学、第一弾。