俳優・小日向文世さんは、蛭子さんとおなじ芸能事務所に所属している。
漫画家やバラエティタレントに思われがちですが、蛭子さんには個性派俳優の一面もあります。デビュー公演は劇団東京乾電池。2時間ドラマシリーズ「おばさんデカ 桜乙女の事件帖」では市原悦子さんの相手役を好演していました。
1980年代のTVデビュー以来、30年以上も芸能界で生き残っている御年70歳の賢人からは、たくさん学ぶことがありそうです。『蛭子能収のゆるゆる人生相談』(蛭子能収・著/光文社・刊)という本をオススメします。
夫がソシャゲ課金をやめてくれない
【相談者】47歳女性・農業手伝い
夫が、スマホゲームにはまっている。食事中も、運転中も、いつもいつも。毎月の課金額も多い。やめてほしいと言ったらケンカになる。どうすれば?
パートナーの不満に対する、蛭子さんの回答は──
オレの女房は一時期、パソコンでやるゲームにはまって(中略)「まったくバカなことをしている」と思ったけど、注意はしませんでしたね。
だって、ゲームをしていないときは、オレのことを怒るからね。だから、その間は、叱られずにすむと思って熱中させていました。
(『蛭子能収のゆるゆる人生相談』から引用)
理由はともかく、奥さまのことを尊重する。ジェントル!
蛭子さんといえば「マイペース」のイメージがあります。それは自己を確立するだけにとどまらず、相手の考えかたも尊重しています。蛭子さんのような人こそ「自立した大人」です。
夫の母親がイヤなやつで困っている
【相談者】43歳女性・主婦
同居している夫の母と、うまくいかない。夫に相談しても、うやむやにされる。もう耐えられない。どうすれば?
嫁姑問題の悩みごとに対する、蛭子さんの回答は──
どうせ先に死ぬんだからと諦める。そして心の中で優位に立っていればいいんですよ。
小言を言われても「あーすみませんね、お義母さん……もうすぐ死んじゃうけど」と適当に流せるんじゃないですか。
(『蛭子能収のゆるゆる人生相談』から引用)
もうすぐ死んじゃうけど! 消極的な呪い!
蛭子さんは、熱湯風呂に突き落とされたり、ドッキリを仕掛けられたり、クズ呼ばわりされたり、バラエティ番組でさんざん笑いものにされて、あらゆる恥辱を受け流して生きてきました。その結果、いまでは1億円の邸宅(4LDK)に住んでいます。年収が数千万円というウワサも。蛭子さんのアドバイス=成功者の金言です。
本書『蛭子能収のゆるゆる人生相談』は、人生の辛酸をなめてきた苦労人だからこそのアドバイスが収録されています。でも、やはり蛭子さんの回答だけあって、やたらと「競艇」のたとえ話になります。
ギャンブラーならではの珍回答
【相談者】65歳女性・主婦
定年退職した夫と、長崎旅行に行くつもり。長崎出身の蛭子さんに「長崎ならではのオススメ観光スポット」を教えてほしい。
蛭子さんの回答は──
大村競艇場がいいですね。長崎空港から車で15分くらいと近いので、真っ先に行くべきですね。この競艇場の特徴は、なんといっても、インコースが強いことです。インコースを軸に舟券を買えばいいんです。
(『蛭子能収のゆるゆる人生相談』から引用)
ザ・ベスト・オブ・蛭子さんのお悩み回答!
公営ギャンブルのなかでは、競馬よりも競艇(きょうてい)が好きなようです。理由は、1レースあたりの出走数が6人(6コース)なので、競馬よりも選択肢が少ないから。
じつは、この人生相談は「競艇場」でおこなわれることが多かったようです。お昼ごはんを食べながらだったり、レースとレースの合間だったり、多忙にもかかわらず蛭子さんがわざわざ時間を作って、読者からの人生相談ハガキに目を通しています。
制約のなかで生きる覚悟をもて!
【相談者】18歳・高校生
通っている高校の校則が厳しい。いまどき、スマホや携帯電話が見つかると没収されてしまうほど。やってられない。こんな校則は間違っている。そう思いませんか?
管理教育への反抗に対する、蛭子さんの回答は──
オレは、こう見えて、ルールをしっかり守ります。自分でも恥ずかしいくらい、基本的には世の中の規則に従いますね。
(中略)
高校生は店に入ってはいけないルールがあるので、卒業式の帰りにまっすぐパチンコ店に行きました。競艇も、無性に行きたかったけど、法律で認められている20歳の誕生日を迎えた、その日に行きました。
(『蛭子能収のゆるゆる人生相談』から引用)
品行方正ギャンブラー。それが蛭子能収!
1998年に賭け麻雀をおこなって警察沙汰になったときは、連載マンガに「ギャンブルの収支報告を載せていた」ことが決定的証拠でした。いまでは反省して「健康マージャン」を楽しんでいます。本人いわく、テレビ収録に遅刻したこともなければ、マンガ原稿の締め切りを破ったこともないそうです。
人生相談に答えることは、おのずと自分の人生経験を語ることになります。
本書『蛭子能収のゆるゆる人生相談』では、長崎から上京するきっかけになったエピソードや、ダスキン練馬で8年勤めていたこと、つげ義春や横尾忠則への憧れ、麻雀や競艇にまつわる哲学などを大いに語っています。読みごたえのある1冊です。お試しください。
【書籍紹介】
蛭子能収のゆるゆる人生相談
著者:蛭子能収
発行:光文社
「回答がおかしすぎるwww」(ネットの誰か)/「蛭子さんなのにいいこと言ってる!」(ネットの誰か)/……などなど、良くも悪くも大反響の「女性自身」ゆるゆる連載コラムが、まさかの単行本化。“世間体”などおかまいなし、どんなときも本音で生きる蛭子さんだからこその名(迷?)回答の数々に、悩んでいるのがバカバカしくなること間違いなし。他人にどう思われようと、楽しく自由に生きるヒントが、ここにある!