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2018/10/5 22:00

ぱっと開いたページにひらめきのヒントが隠されている――『いつもの仕事と日常が5分で輝く すごいイノベーター70人のアイデア 』

偉人や有名企業家からヒントをもらい、自分の日常に生かせば、良い変化が起きてくるのではないか。そんなコンセプトの本を見つけた。『いつもの仕事と日常が5分で輝く すごいイノベーター70人のアイデア 』(ポール・スローン・著、中川泉・訳/TAC出版・刊)だ。

 

 

ブームに乗るきっかけとは

私は2000年代にケータイという媒体で書き下ろし小説を発表し始めた。それは私にとって苦肉の策だった。一般小説誌で発表できる枠は決まっていて、私のような無名作家にはなかなか書かせてもらえない。だとしたら発表できる他の場を探さなければ、と思ってのことだった。

 

当時、他の作家さんたちはケータイ小説を一過性の流行と考えていたのか、ほとんどそこで書き下ろしてはいなかった。そんな時『恋空』などのケータイ小説ブームが巻き起こり、プロ作家として参加していた私のところにも取材依頼が殺到した。私は新しい媒体に属していたことで、思いがけない利益を得たのだった。

 

 

イノベーターのポイントとは

本の中には70人のイノベーターがひとりずつ紹介されている。特筆すべきはその実績とともに「彼らの何が新しかったのか」と「彼らから得られるヒント」が記され、その数は200を超える。単なる偉人伝にとどまらず、その発想法や行動力を自分たちの生活に応用できるようになっている。

 

本の冒頭には「本書を1ページ目から読む必要はない」とある。何か困り事を抱えた時に、インスピレーションで開いたページに出ていた人物のアイデアを自分の問題に置き換える事ができるか試してみてほしいのだ、と。もしその人物にピンと来なかったら、見つかるまで何度でもやってみることだ、とある。

 

 

誰もやっていないことをやる

試しに私もやってみた。ポップアートアーティストのロイ・リキテンシュタインが出た。この人の絵はもちろん知っているけれど、どんな人かは読むのは初めてだった。なんとあのコミック風アートは、彼のお子さんからの一言から始まったのだという。彼の息子さんがミッキーマウスの絵を見て「パパはこんなにうまく描けないね」と言われ、コミックをアートに取り入れることを閃いたというのだ。

 

コミック風の彼のアートは、当初は「低俗」「中身がない」などと酷評されまくっていたという。安価で読めるコミックをわざわざ高級なアートに仕立てることに嫌悪感を抱く人もいたようだ。しかしリキテンシュタインは、あえてそれを描き続けた。「無名の存在であるよりも、悪名でも名の知られるほうを選」び、やがてその絵はポップアート運動の広がりにより、人気が出たのだった。

 

 

イノベーションのヒントとは

リキテンシュタインの生きざまには、感じるものが多々あった。私自身、ケータイ小説を書くことに多くの非難があった。「絵文字まじりのケータイ小説は果たして小説と言えるのか」という論争もあった。けれど、かつて紫式部が『源氏物語』を発表した際にも、かな文字だらけのその文体に「これは読み物なのか」と論争が起きたという。型を変えられることを嫌がる人が大勢出るもののなかに、イノベーションにつながるきっかけが隠れているのかもしれない。

 

リキテンシュタインから学べるアイデアとして「人よりうまくなることではなく、人と違っていることののほうがより重要である」「たとえ否定的な反応でも、何も反応がないよりはましである」などが書かれていた。すでにブームが来ているものではなく、これからブームになりそうで自分が夢中になれそうなものを見つけること、人が反応してくれそうなことはとても大切なことなのだと気づかされる。どうやらこの本はこうやって使うらしい。何か新しいひらめきを得たい時に、この本を開いてみると、素敵なアドバイスを得られるかもしれない。

 

 

【書籍紹介】

 

いつもの仕事と日常が5分で輝く すごいイノベーター70人のアイデア

著者:ポール・スローン(著)、中川 泉(訳)
発行:TAC出版

偉人を真似て行動すれば、自分は変えられる! 時代をつくるアーティスト、ニーズを先取るビジネスリーダー、便利さを生み出す発明家――。誰もが知っているあの偉業、あの商品は、「ほんのちょっとの差」から生まれた。本書には、リスクを避けて過去にうまくいったことを繰り返し、変化のない毎日から抜け出せないあなたが、新たな一歩を踏みだせるようなアドバイスがたっぷりつまっています。イノベーター一人につき5分で、読めばいつもの仕事や日常が変わります。

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