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2019/1/3 21:45

2019年は「文章」で人間関係を円滑にする――『きちんと!伝わる! 文章の書き方』

何事につけ向上心のない私だが、年の初めともなるとさすがに怠慢な生活態度を反省し、今年は少しはましな人間になるよう努力しなければと思う。

 

毎年、今年度の目標を決めるのが年初の恒例になっている。それはたとえば、ダイエットだったり、ダンスの練習だったり、着付けを習いに行ったりだったり……。うまくいくものもあるし、教室を探すだけで終わるときもあるが、決心するだけでいいのだと、一人開き直っている。

 

今年の決心、あなたは何でしょう?

今年の決心はというと、「文章を書き始めたときの気持ちを見直す」ということだった。子どものころから作文の授業が好きで、書くことを職業にして今年で30年になる。好きなことを仕事にできた喜びを感じ続けた30年だが、果たして原稿料に見合うものを書いているのか不安になるときも多い。

 

まして、特別な先生についたこともなく同人誌に寄稿した経験もない。ただただ、自己流に書いて投稿し、たまたま賞をいただいたのがきっかけで本を出版することができた。ここで一度、自分は文章を正しく書いているのかどうか確認したくなったのである。

 

 

きちんと思いを伝えるために

考えた末に選んだのが、『きちんと! 伝わる!文章の書き方』(澤野 弘・監修/学研プラス・刊)という本だ。日本サービスマナー協会の理事長である澤野 弘さんが、文章によって円滑な人間関係を築くことができるようにと願ってできた本だという。

 

私たちは日常の生活のなかで、それぞれの目的で文章を書く。仕事関係の方に自己紹介をする場合もあれば、思いを寄せる人に恋心を伝えるときもある。相手によって口調が変わるのと同じで、文章もそれぞれだろう。

 

しかし、共通するものはある。それは正しい文章でないと円滑に事が進まないということだ。

 

 

書き言葉の基本、6つのルール

『きちんと伝わる文章の書き方』は、書き言葉の基本として6つのルールを設け、そのルールにのっとってひとつひとつマスターしていく方法をとっている。まず書き言葉の基本として押さえておきたい6つのルールは次のようなものだ。

 

1 話し言葉と書き言葉は違う
2 「だ・である」「です・ます」をそろえる
3 「ら抜き」」「い抜き」言葉を使わない
4 できるだけやさしい漢字を使う
5 漢字とひらがなを使い分ける
6 漢字とカタカナ、ひらがなを使い分ける

 

上の6つのルールは簡単なようでいて難しい。どれもきちんと意識していないと不確かな文章になる。ひどい場合は誤解を生み、人間関係を破綻させる場合もある。

 

クッション言葉をマスターする

とくに私が感心したのは、気持ちを伝えるための文章表現のコツである。普段、私は注文を受けて原稿を書いているが、私事で手紙を書くことも多い。何かを頼みたいとき、私たちはメールやファックスや手紙など様々な通信方法を使うが、文章を書くことに変わりはない。相手が喜ぶような文章を書くことは、その後の人間関係をまったく違ったものにするだろう。

 

たとえば、何かを頼むときや反対に断るとき、人間同士には軋轢が生じがちだ。それを回避するためにクッション言葉を使うことが大切だというのである。クッション言葉とは次のようなものだ。

 

「来月の同窓会を楽しみにしております。○○さんもぜひご出席ください」という文章があったとしよう。それは決して間違いではない。しかし、以下のように書くと柔らかで思いやりのある表現となる。

 

「来月の同窓会を楽しみにしております。ご多忙中とは存じますが、○○さんもぜひご出席ください」

 

ふたつの文章を並べてみると、上の文例は間違ってはいないものの心がこもっていない印象がある。ところが、「ご多忙とは存じますが」とひとこと添えるだけで、「ああ、自分のことを気にかけていてくれているんだな」と、思うのではないだろうか。

 

 

断るときの文章

何かを断るときに文章を使うことも多いだろう。口頭で断るよりも確実だ。しかし、これほど難しい文章はない。とくに仕事の依頼を断るときは、難しいを通り越してどうしていいのかわからないこともある。そんなときはどうしたらいいのか?

 

それは、「次回があることを連想させる言葉を入れて断る」ことが大事だという。なるほど…。今回はお受けできないけれど、次回はお役に立ちたいと伝える技術を習得すると世界が変わる。断るのがつらくて一日延ばしにしている案件があったら、是非この術を使っていただきたい。

 

ただ「お引き受けできません」と書くのではなく、「今回はお引き受けできそうにありません」とすると、今回はやむなく断るけれど次回は引き受けたいという思いをこめることができるのだ。

 

 

文章の力を信じて

毎日文章を書いて暮らしていながら、私は果たしてプライベートの文章に工夫を加えていただろうかと反省しないではいられなくなった。嫌なこと、言いにくいことだからこそ、文章の力に頼るべきだったのではないだろうか。

 

今までも一応努力してきたつもりだが、これからはさらに心を研ぎ澄まして文章に向かいあわなくては。これが今年の私の目標である。昨年、なんだかうまく事が運ばなかったと思っている方がいたら、文章を書くことで人間関係を円滑にできるのだということを力としたらいかがだろう。きっと、この一年をうまく乗り切ることができるはずだ。

 

 

【書籍紹介】

きちんと!伝わる! 文章の書き方

著者:澤野弘
発行:学研プラス

「敬語と言葉づかいマナーの便利帖」「ものの言い方伝え方マナーの便利帖」に続くシリーズ第3弾が登場! NG→OK実例で簡単に身につく!社会人にとって必要な文章の力をさくっとレベルアップする「大人の生活実用書」です。

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