書評家・卯月鮎が選りすぐった最近刊行の新書をナビゲート。「こんな世界があったとは!?」「これを知って世界が広がった!」。そんな知的好奇心が満たされ、心が弾む1冊を紹介します。
辛酸なめ子さんが女子校の魅力を語る!
ゴールドカードが必須の空港ラウンジ、一見さんお断りの料亭……。ふらっと行っても立ち入り不可の場所は5割増しくらいで興味がそそられますよね。雑誌の袋とじだって、ページが閉じられているだけでつい上から覗きたくなりますから(笑)。
大概そういう場所はお金を積めば入れるものですが、学生時代にひとたびチャンスを逃してしまうともはやフィクションの世界となってしまうのが女子校。身近なのにもっともヴェールに包まれた場所と言えるのではないでしょうか。
今回の『女子校礼賛』(辛酸なめ子・著/中央公論新社・刊)は、女子校の謎と不思議に迫る新書。少子化やジェンダーの問題も絡んで、今後女子校は減ることはあっても増えることはなさそうです。女子校にはどんな校則や行事があって、生徒がどのように過ごしているのか。あれやこれや気になることばかり。
著者は人気コラムニスト・漫画家の辛酸なめ子さん。自身も名門の女子学院出身で、以前その経験から『女子校育ち』という新書も著しています。
今回も第一章では自身の体験談が盛り込まれ、後ろの席の子が社長の娘でお手伝いさんもいて格差を感じたこと、お互いの個性を認め合うためいじめがなく平和に過ごせたこと、先輩に憧れて手紙を書いたこと……といった思い出が語られています。
第二ボタンの代わりは靴ひも!?
第二章「女子校の知られざる真実」では、有名女子校の出身者たちが驚きのエピソードを明かしてくれます。女子御三家の一角・雙葉(ふたば)は、憧れの先輩にもらうアイテムがなんと靴ひもだとか! 「第二ボタン的なイメージ」というその靴ひもをもらいに行くときのドキドキ感は告白にも似ているそうです。
また、お嬢様学校として名高い日本女子大学附属高校は、実は私服OKの自由な校風。授業中にカルボナーラで早弁、お昼休みにピザのデリバリー……!? 慶應女子の出身者もピザのデリバリーを頼んでいたそうで、「女子校」「自由」「お金持ち」の3つの条件が重なると「教室ピザ」が成立するのかもしれません(笑)。
全3章立ての最後は「女子校潜入記」。学習院女子中・高等科の科長(校長)先生へのインタビューや、最難関女子校として知られる桜陰学園の非公開の歓迎会への潜入など、貴重なレポートとなっています。ちなみに私が一番気になったのは、学習院女子の「ごきげんよう弁当」というお弁当(予約制・450円)の存在。味は書かれてませんでしたが、上品なお味なんでしょうね。
本書は女子校を極端に好奇の目で見ておらず、清潔感もあって、さらりと女子校の特徴がわかるのが良さ。受け継がれてきた伝統や校風にも焦点が当たっているので、日常とは少し距離のある異世界ファンタジー的な雰囲気も感じられます。お子さんを女子校に入れたいと思っている親御さんにも向いている本ではないでしょうか。
【書籍紹介】
女子校礼讃
著者:辛酸なめ子
発行:中央公論新社
辛酸なめ子が、女子校の謎とその魅力にせまる!女子校育ちは「あるある」と頷き、受験生とその親はモチベーションがアップする、ポジティブな一冊。卒業生・在校生へのインタビューや、文化祭等への潜入記も充実。
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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。