多読という英語学習方法があります。辞書をできるだけ使わずに英語の本を大量に読むことで英語力をつけるものです。ドキドキハラハラする物語を英文で読んで楽しむのもいいですが、悲しい物語を読んで泣きそうになっている自分がいることに気づくと、なんともいえない感動に包まれるのでおすすめです。
英語多読の楽しみ
拙宅でも子どもが英語を多読で学んでいた時期があり、そのころは私も英語の本を貸し出してくれる有料図書館に通って協力していました。私の語学力で読めるのは児童書がせいぜいで、そうなると科学図鑑や子ども向けのほのぼのとしたストーリーが多いのです。クマが出てくる童話を何冊読んだかわかりません。
私は感情が揺さぶられるような悲しい話が好きなのですが、子ども向けだとそこまでディープなストーリーはなかなかありません。もちろんどろどろのラブストーリーもなく、自分の語学力のなさがいけないのですが、やや物足りなさを感じていました。
英語の喜怒哀楽
喜怒哀楽の中で、児童書に多いのは「喜」や「楽」です。プレゼントをもらって喜んだり、クマさんと遊んで楽しんだりという陽の部分ばかりが取り上げられている本がかなり多いのです。また、英語のジョークの本でクスッと笑う時も、楽しいと感じるからでしょう。
けれど長い人生の中にはやり場のない怒りをおぼえる日も、突然の哀しみに襲われる日もあります。そうした陰の部分の感情も英語で味わいたい。そんな時に出会ったのが 『英語で泣ける ちょっといい話』(ちょっといい話製作委員会・著/アルク・刊)です。なんと、英語が苦手な私でも、初めて英語で泣くことができたのです。
初心者でも大丈夫
この本は、初級レベルの人向けにやさしい英語で書かれた泣ける話が20話収録されたもの。英語学習の本を多数出版しているアルクが版元なので、私のように英語に苦手意識を感じているものでもとても読みやすい表現がされています。
収録されているのは、作者不明の物語たち。誰が書いたかはわからないけれど、とてもいい話だからと人々の間で伝えられている話なので、素敵な内容ばかりです。しかも日本語訳が別のページに付いているので、自分の解釈が合っていたかどうかをチェックすることもできて便利です。
英語で泣くということ
胸にじんとくる話が多いのですが、たとえば収録されている『箱いっぱいのキス』は、父と小さな3歳の娘で暮らしているひとり親家庭の物語です。このつつましい親子が迎えたクリスマス。3歳の女の子スージーは、パパに何か贈り物をと考えました。そしてとても心のこもったものを考えついたのです。
クリスマスプレゼントの物語には、O.ヘンリーの『賢者の贈り物』のように、感動的なものが多いです。愛する人に幸せなクリスマスを迎えてもらいたいというその優しい気持ちこそが、決してお金では買えない素晴らしい宝物だと改めて感じさせられます。
英語で泣くという体験は、なかなか不思議なものでした。スラスラ読める英文だったので、途中から外国語を読んでいるという感覚すらなくなり、物語にのめり込めていたのが良かったのだと思います。しばらく余韻に浸ってから「あ、これ英語だったんだ」と気づき、英語で感動できた喜びが湧いてきました。
英語の物語に親しむコツ
涙が出るくらい別の言語を味わうことができたのは、初めての経験です。今回は日本人の初心者向けにアレンジされたものであったとはいえ、とても大きな自信となり、他の話も読んでみたいという意欲にもつながっています。
AmazonのKindleなどには、無料で読める英語の物語が大量に配信されています。まずは気になる本をダウンロードし、その中から自分にも読めそうなものを選んでいけばいいのです。先日はインドの人が書いた、ファーストデートのショートストーリーを完読しました。英語で書かれた本は日本語よりもずっと多いので、これからはさらに読書の選択が広がりそうです。
【書籍紹介】
英語で泣けるちょっといい話
著者:ちょっといい話製作委員会
発行:アルク
「家族」「友情」「愛情」……。泣ける話、いい話は、歴史・文化・人種・宗教などの壁を超えて心を打ちます。この本では、長年、英語で語り継がれ、読み継がれてきた、20のショートストーリーを紹介。語彙も3000語レベルに抑えてあるので、どんどん読むことができます。