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2016/10/30 12:00

マクドナルド創業者から世界的ベストセラー作家まで――“遅咲き”という成功のひとつの絶対的な形について

近頃、暇さえあればDVDを見ている。洋画も邦画も年代もジャンルもアトランダムに、もうほんとに見まくっている。そんな中、キラッとするものを感じた作品を紹介しておきたい。ヒュー・グラント主演の『Re: Life ~リライフ~』だ。

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『Late Bloomers』という本

この映画、相手役のマリサ・トメイのキャスティングとキャラクター設定も含め、確信犯的にラブコメ王道ライン狙い以外の何ものでもない作りである。プロット的にも、よい意味でまったくサプライズがなく、ラストまで思い描いた通りに進んでくれて、さらにインスピレーショナルな要素が盛り込まれる。安心して楽しむことができた。

 

マリサ・トメイの役どころは子育てが一段落して大学に戻ったシングルマザー。大学で脚本のクラスを取っている彼女が、バイトをしている大学のブックストアでヒュー・グラント演じる主人公の元有名脚本家にとある本を見せる場面がある。

 

本のタイトルは『Late Bloomers』(遅咲きの人々)。各界の著名な遅咲き人(〝おそざきびと〟と読んでおきたい)たちのエピソードを集めたノンフィクションだ。単なる小道具だと思ったのだが、どうしても気になったのでアマゾンで調べてみると、実在することが分かったのですぐにキンドル版を買って読んでみた。デザイナーのココ・シャネルやKFCの創始者カーネル・サンダース、そしてマザー・テレサ。いずれも、世間一般の感覚から見れば遅咲きと形容される人ばかりが75人紹介されている。

 

拒否からのスタート

運命や人に恵まれず、まず出発点で拒否される。それが遅咲き人たちの共通点だ。

 

たとえば『ハリー・ポッター』シリーズの作者J.K.ローリングは、シングルマザーという境遇で子育てに追われながらとにかく書き続けた。『ハリー・ポッターと賢者の石』を出版できたのは30代半ばの頃。構想から5年後に書き上げたこの作品は立て続けに12社の出版社から断られたという。出版のきっかけとなったのは、とある出版社の社長の8歳になる娘が第1章を読み、父親に版権を買うよう頼んだことだった。この子は、どうしてもこの物語を最後まで読みたかったのだ。

 

リキッドペーパー(修正液)を発明したベティ・ネスミス・グラハムは、製品をまずIBM社に持ち込んだが、プレゼンはうまくいかず、売り込みに失敗した。そこで自力でのマーケティングに切り替え、自宅の台所で瓶詰め作業を行い、ひと瓶ずつこつこつ売り歩いた。こうした過程を経て、リキッドペーパーは世界中のオフィスで使われるようになった。

 

チャールズ・ダロウというエンジニアは、自分が考えたボードゲームにハマり、絶対に売れると信じ込んであちこちの会社に売り込んだが、まったく受け容れられなかった。そこで、貯金をすべてはたいて5000セットを自主制作で作って売りだしたところ、あっという間に売り切れた。彼が作ったゲームの名前は『モノポリー』。このゲームを知らない人は、おそらくいないはずだ。

 

あのシンガーも、あの有名フランチャイズの創始者も、みんな遅咲き

こうした遅咲き人たちに対するケーススタディをまとめたのが『遅咲きの成功者に学ぶ逆転の法則』(佐藤光浩・著/文響社・刊)である。

 

マクドナルドコーポレーションの創業者レイ・クロックのキャリアのスタートはミルクセーキ製造機のセールスマン。営業旅行の途中、カリフォルニア州のとある街でハンバーガーショップを経営していたマクドナルド兄弟と出会ったことがすべての始まりだった。日本ではプリンのCMでおなじみだったスキャットマン・ジョンがメジャーデビューを叶えたのは、52歳の時だった。世界中でKFCの店頭に飾られているカーネル・サンダースは、なんと65歳で無職になり、そこから世界初のフライドチキン専門チェーン店網を確立した。

 

この本は、『40歳から成功した男たち』というタイトルで出版されていた本に加筆した新装版である。ただ、50代や60代になってから成功のきっかけをつかんだ人たちも数多く紹介されている。となると、世の中には「年齢はただの数字である」と自信を持って言い切れる人たちが存在することを認めざるを得ない。

 

人生に「遅すぎる」はない。攻め続けよう。

本書のエッセンスは、以下の文章の通りだ。

 

“才能があろうがなかろうが、夢があろうがなかろうが、私たちは人生の終わりまで、いつどのタイミングからでも、夢を追うことができるということを、本書は教えてくれます。”

『遅咲きの成功者に学ぶ逆転の法則』より引用

 

「人生に遅すぎるはない」

 

言い古された感が否めないことは認める。しかし、年齢をはじめとするさまざまを理由に諦めてしまうのも、どこまでも頑張ってみるのも人それぞれのチョイスだ。2008年、ハーバード大学の卒業式に招かれたJ.K.ローリングは、スピーチの中に次のような文言を盛り込んだ。

 

「人生には、避けられない失敗があります。何かに失敗しないで生き続けていくことは不可能です。何も失敗しないよう極力気を付けながら生きることもできるでしょうが、そんな生き方はそれ自体が失敗です」

 

悔いを一切残さないために、年齢など気にせず、失敗を恐れず、攻めていきましょう。

 

(文:宇佐和通)

 

【参考文献】

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遅咲きの成功者に学ぶ逆転の法則

佐藤光浩:著

出版社:文響社

 

畑違いのセールスマンから転身し、マクドナルドを成功させたレイ・クロック。新商法で江戸に乗り込み、三井の礎を築いた三井高利。コンプレックスを武器に新たな音楽を創造したスキャットマン・ジョン―。彼らの業績は、40代で迎えた転機が始まりだった!全てを捨て、ゼロから這い上がった不屈の男たちのドラマ!ビジネス・芸術・学問の世界にその名を残した遅咲きの巨人たちから、人生を逆転する法則を学ぶ。

 

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