最近気になっていたアニメ(マンガ)がある。『ぼっち・ざ・ろっく!』(はまじあき・著/芳文社・刊)だ。
僕は日常系のマンガやアニメが好きで、女子高生バンドが出てくる『けいおん!』も好きだった。最近は忙しくてマンガやアニメを観ることもあまりなくなっていたのだが、仕事仲間のライターが「『ぼっち・ざ・ろっく!』おもしろいですよ。「まんがタイムきらら」ですし」と言っていたので、それはおもしろいかもと思い、マンガを読んでみた(『けいおん!』も「まんがタイムきらら」連載のマンガだった)。
コミュ症女子高生、バンドを始める
知らない方のためにざっと『ぼっち・ざ・ろっく!』の内容をお知らせしておくと、主人公の後藤ひとり(名前がもう……)は友達が一人もいない中学1年生。それがテレビで見たバンドに触発され、父親のレスポール(父親は音楽好き)を弾き始める。夢はバンドを組むこと。
ただし、中学の3年間友達が一人もできず、高校に進学。極度のコミュ症で、家で一人押し入れの中でギターを弾き、動画投稿サイトに「ギターヒーロー」の名前で投稿。一人でギターを弾きまくっていたおかげでギターの腕は確かで、そこそこ認知されている(チャンネル登録者数3万人超え)。
そんなひとりが、ひょんなことから町で知り合った女子高生とバンドを組むことになるという話だ。
作者は音楽経験ゼロで連載開始
アニメを見る前に原作を読んだのだが、「まんがタイムきらら」らしく、4コママンガをベースとした展開。「まんがタイムきらら」好きとしては馴染みやすい。
友達のいないぼっち女子高生が主人公だが、日常系のコメディタッチで暗い感じは一切ない。気楽に読める。個人的には、おもしろいと感じた。まあ、実際にバンドをやっていた身としては、こんなにうまくことが運ぶはずはないとわかっているのだが、そこはもう、ファンタジーということで。
作者はバンド経験も音楽経験もなかったようで、この連載を始めるにあたり取材を始め、自分でもベースを始めたとのこと。そのためか、ライブハウスの仕組み(チケットノルマなど)の面も細かく描写されていて、懐かしく感じた(ライブハウスのチケットノルマの仕組みはほんと若いバンドマンを苦しめるのでなんとかしてほしい。まあライブハウスの経営はたいへんなのはわかるのだが)。
バンドの本質はメンバーとの調和
バンド未経験者の作者が書いている割には、バンドの本質をついたことを語っていたりする。最初のバンド練習の際、そこそこギターがうまくて自信があるひとりが、下手くそ認定されてしまう。そこでの説明は以下の通り。
バンドは生身の人間と呼吸を合わせることがとっても重要だけど
コミュ症のひとりは目すら合わせられないので一人で突っ走る演奏をするよ!
一人弾きは最強でもバンドになると
ひとりはミジンコ以下になるのだ!(『ぼっち・ざ・ろっく!』より引用)
そうそう。いくらギターがうまくても、ドラムやベースとしっかりと合わせられないと、意味がない。それがバンド。
大学のときバンドサークルにいたのだが、新しく入ってきた後輩のギタリストが、バンド練習時にまったく周囲の音を聞かず、一人だけ先に演奏を終えて満足そうにしていたのを見て、僕は「倍速ダビング」というあだ名を付けていたことを思い出した。
バンド運営のたいへんさを思い出した
『ぼっち・ざ・ろっく!』は、音楽に詳しくなくてもバンドをやっていなくても楽しめるほのぼの日常系マンガなので、日常系好きなら楽しめるだろう。また、バンド経験者ならバンド運営のあれこれについて「ああ、そうそう」という思うところが多く出てくるので、さらに楽しめるはずだ。
ただ、学生時代に一人で音楽をやっていたライター仲間に言わせれば、「ほんとのぼっちで音楽をやっていた自分からすれば、あんなの『ぼっち・ざ・ろっく!』とは言えない」とのこと。まあ、そこはファンタジーなので。
まだ1巻しか読んでいないが、これは続きも買うしアニメも見る(1話だけ見た)。
なんだかバンドやりたくなってきたなぁ。でも、おじさんバンドはもう『ぼっち・ざ・ろっく!』みたいなキラキラした感じにはならないのはわかってるので、家で一人で80年代のジャパニーズロックでも弾き語りしようかなと思った。
【書籍紹介】
ぼっち・ざ・ろっく!
著者:はまじあき
発行:芳文社
「ぼっちちゃん」こと後藤ひとりは、ギターを愛する孤独な少女。 家で一人寂しく弾くだけの毎日でしたが、ひょんなことから伊地知虹夏が率いる「結束バンド」に加入することに。 人前での演奏に不慣れな後藤は、立派なバンドマンになれるのか――!?全国のぼっちな少年少女に届ける、いま最高にアツい音楽漫画!! 陰キャならロックをやれ!!!