年齢を重ねてくると、どんな服を着たらいいかと迷う人も少なくありません。白髪やシワやシミが増え、老いを感じると、今までと同じようなファッションをすることに抵抗を感じる人もいます。どのようにしたら老いを受け入れ、自分らしくファッションを楽しめるようになれるのでしょうか。
老いを明るく受け止める
『老いてきたけど、まぁ〜いっか。』(野沢直子・著/ダイヤモンド社・刊)は、もうすぐ還暦を迎える野沢直子さんのエッセイです。そこにはお笑いタレントとして人々を楽しませている彼女が、老いをあるがままに受け入れていく様子が描かれています。
といっても、彼女はまだ59歳ですからまだまだお若いとは思うのですが、人生を100年と考えれば、すでに折り返していると感じたそうです。そして、平均寿命的にはあと30年ほどは「見た目も中身も劣化してきた自分」と付き合わなくてはならないという現実を痛感されます。
年齢を重ねると、体のあちこちに不調が出てきます。けれど野沢さんは聞いたことがないような病名の症状に見舞われても「ネーミングセンスが酷すぎる」などと突っ込んだりして、明るく受け止めています。普段と変わらぬノリで自分の状態を受け入れていこうとされているところがとても素敵です。
服装や髪型を明るくする
エッセイには、野沢さん流の老いを味わいつつ暮らす様子が書かれています。なかでも「なるほど」を連発したのが、ファッションに対する考えかた。以前からビタミンカラーの髪色や個性的なデザインの服が多い印象でしたが、老いを迎えた際にそれが役に立っているようです。
野沢さんは髪をブリーチして、オレンジなどの色を入れていますが、これで白髪もカバーできるそうです。さらに洋服にも明るい色を使うことで、相手はそちらに目を奪われ「私の老いに目が行かなくなる」ことを狙っているのだとか。これを「明るい色で老いごまかし作戦」と作戦名までつけているところが可愛らしいのです。
自分が着たい服を着る
何歳になっても自分が着たい服を着ると決めている野沢さん。英語のメッセージが入ったロックなTシャツを着ていたり、カウボーイ風ハットをかぶっていたりと生き生きした格好をしていることもあります。現在アメリカに居住中ということもあり、その姿がとてもカッコ良く見えます。
ポイントは、流行に合わせるのではなく、自分が着たいという感覚を優先していること。「『若い子が着ているから着ている』というのと、『この洋服が着たいから着ている』というのとでは心意気が全然違う」というのは、とても素敵な考えかたです。
上質かどうかにとらわれない
ファッション誌などで「年齢を重ねてきたら上質なものを」という表現をよく見かけます。そこには高価な品をまとって微笑む熟年モデルの姿があることもしばしば。しかし野沢さんは「申し訳ないが高価なものを売りたいファッション業界の戦略なのではないかと思っている」とバッサリ斬っています。
野沢さん自身は高価な品に興味を持てず、安い、おもちゃみたいなアクセサリーをつけているのだとか。「自分の胸元や手元を見た時に心が躍る」ものを選んでいるそうです。自分がワクワクするかどうかは、おしゃれをするうえで大切な指標かもしれません。
自分の「好き」を見失わない
野沢さんのInstagramには、日本とアメリカを行き来しつつ、日々を楽しむ姿が投稿されています。そこに出てくる彼女はさまざまなファッションをしていて、そしてどれも、とても楽しそうで、フォロワーが数万人もついているのも頷けます。
このInstagramを見ると、老いにひるんで着る服に遠慮をするようになるのはもったいないことだと痛感します。野沢さんが実践する「自分が着たい服を着る」ことこそが、ファッションの真髄なのではないでしょうか。これからは、服を選ぶ際に「これを着たいかどうか」と心に問いかけるようにすれば、自分なりの答が出てくるかもしれません。
【書籍紹介】
老いてきたけど、まぁ~いっか。
著者:野沢直子
発行:ダイヤモンド社
もう、良性のわがままになろう。人生の最終章を思いきり楽しむための、野沢直子流「老いとの向き合い方」。