パンツに付けるヘルスタグで継続的な測定
イベントでは7つのセッションが行われましたが、今回注目したのは「ヘルスケア・セッション」で紹介されたヘルスタグです。みなさんはヘルスケアに関するデバイスを使ったことはあるでしょうか。私は腕にはめるタイプをいくつか使っていました。運動不足を痛感する日々で運動量が目標値に達したとき、専用アプリに褒めてもらえると、とても嬉しいものです。また、睡眠の深さや時間を記録できる機器を使ったときは、お酒を飲んだ時の方が睡眠が浅いなど、自分にとって質の良い睡眠を取るためには日中どんな過ごし方をすべきか大変参考になりました。
ところが、活動量計には「付け忘れる」という弱点があるのです。お風呂に入るときや着替えるときに、いったん外してそのままになるケースは活動量計を使っている人なら誰でも経験があるでしょう。私は寝るときに腕に何かが付いている状態にどうしてもなじめませんでした。服に付けるタイプの活動量計を使ったこともありますが、こちらには落としてしまう、または服と一緒に洗濯してしまうという落とし穴がありました。常に計測しているからこそデータとして役割を果たすのに、これではもったいないですよね。
そんな問題を解決してくれそうなヘルスケアデバイスが、「Spire Health Tag」です。このヘルスタグは、下着や洋服に付けられるだけでなく、洗濯機や乾燥機に入れても問題ありません。バッテリーも1年半もつそうです。
計測されるデータは、呼吸、睡眠、ストレス、心拍数、カロリー、歩数など。ヘルスタグはシールのように貼り付けるタイプで、男性はパンツのウエスト部分に、女性はブラジャーやパジャマに付けると良いそうです。計測されたデータは、iOSアプリで確認できます。Spireの技術はスタンフォード大学7年間の研究によって支えられているとのことで、米国では2018年9月にAppleストアでも発売を開始、国内では12月よりAppleストアでの販売が予定されています。現在はヘルスタグをひとつ、または複数個をパックにした販売が行われていますが、日本での販売形式はどうなるでしょうか。
セッションに登壇したSpire Co-founder CEOのJonathan Palley氏は、「ヘルスケアにおいて、患者が自宅にいるときの状態を知ることはとても大切」だと語りました。「患者に家でも計測するように言っても、付けない場合があります。しかし、衣服に付けておけば継続して計測されるため、高品質なデータを意識することなく得られます。」(Palley氏)
Palley氏は今後日本の企業ともパートナーになっていきたいこと、慢性疾患の患者に役立ちたいことなどを語りました。日本でヘルスケアデバイスといえばダイエットや運動管理に留まりますが、Spireは連邦政府と臨床治験を行い、慢性疾患の改善に役立てる機器を開発していくとのこと。日本では法律の違いなどもあり、そのまま転用することは難しいかもしれませんが、「大切なのはテクノロジーではない。結果を出さなければ意味がない」と語るPalley氏の方針が日本でも活かされることを願います。
保守的になりがちな日本の風土に、シリコンバレーのスピード感あふれる熱さがどう響いていくのでしょうか。日米のベンチャーの橋渡しとなるScrum Venturesは、これからも新たな刺激を私たちに与えてくれることを確信した一日でした。