――豚肉を扱う飲食店でおススメはありますか?
木下 とんかつ屋さんですね。私の実家が精肉店ということもあって、実は一時私も兄と一緒に真面目に考えたことがあります。
とんかつの作り方って、もちろん下準備や妙はあるにしても、揚げることが主な作業ですよね。つまり、作業量が少なく、比較的小さな店舗でも作れて、回転率もよい。アルコールとも合う料理なので、夜も営業すればお酒も売れるでしょう。それでいて価格を1000円以上に設定することもできます
――とんかつ屋さんを開店する場合、立地はどうでしょうか?
木下 もし私がとんかつ屋を始めるとしたら、撤退リスクも考えて、郊外の小さいテナントにします。郊外はある程度定着したら、競合店が少ない分、お客さんも口コミで広まっていく可能性があります。逆に都会は家賃が高いうえ、競合店も多いので、何か特別な理由がない限りは、合理的な選択肢ではないんですね。
――近年では「いきなり! ステーキ」が急成長しましたね。
木下 このお店は、コンセプトが大当りした一例だと思います。立食かつ小さなテーブルで食べるので回転が早い。設備投資はかかるでしょうけど、ステーキはただ焼くだけ。それでいて利幅は大きい。だから、急成長したのだと思います。
ただし、ステーキチェーンを個人で始めるのは難しいんですね。いきなり! ステーキのような成長を目指すためには、まず資本がいります。そのうえ、牛肉を安定して安く調達するルートもいります。個人であれと同じことをしても、当たったら大資本に真似されて食いつぶされます。この業界の典型的なパターンですね。
500万円を失う覚悟はあるか?
――飲食業はあらゆるビジネスの要素が集約されていますね。
木下 その通りです。一見すると簡単なように見えて、実はすごく難しくて大変なのが飲食業なのです。
個人で始める場合、まず開業資金の面で苦労し、開業してからも苦労し、場合によっては閉店。仮に当たったとしても、大資本に食いつぶされる可能性が高い。しかも、お客さんが飽きないうちに、次の一手を考えておかないといけない。そういう意味で非常に厳しい世界だと思います。
――補助金みたいなものはあるんですか?
木下 中小企業庁には様々な種類の創業補助金があります。きちんと申請すれば200万円くらいの補助金がおりると思います。でも、200万円なんてアッという間に消えてなくなります。やはり最低でも自己資金は500万円くらいはないとダメでしょう。それだけでなく、500万円でさえもすぐに消える可能性があることも覚悟している人でないと、飲食業界ではやっていけないと思います。
まとめ
厳しい飲食業で生き残っていくためには、コンセプト、緻密な計画、そして覚悟が欠かせないことがわかりました。飲食業界に挑戦してみたいと考えている方は、これらについてよく考えてみてください。