ビジネス
2019/1/28 17:30

これからは二足のわらじが当たり前! 税理士が考える「副業」の選び方

働き方が多様化する現代。終身雇用が崩れる一方、ギグエコノミーという新しい働き方が広がっています。副業も変化しており、「複業(複数の仕事を生業とする)」という考え方も発展しています。読者のなかにもすでに副業をされている方がいるかもしれませんが、私たちはこれからどうやって副業をしながら働いていけばよいのでしょうか? お金の問題に詳しい税理士・木下勇人さんに副業の意義や選び方、収入の管理、納税についてお話を聞きました。

↑税理士法人レディング 公認会計士・税理士、木下勇人さん

 

副業の意識がないと取り残される時代に

――社員の副業を認める企業は増えているのでしょうか?

 

木下勇人さん(以下:木下) リクルートキャリアが行った2018年の調査では、28.8%の企業が副業や兼業を容認・推進していることが判明しました。これは17年の調査から5.9ポイント増加しているのですが、逆に言うと、71.2%の企業は副業や兼業を禁止しています。「新しさ」を掲げる一部の上場企業やIT企業が、PRの一貫で副業を認めるケースが少し出てきましたが、全体的には「副業はダメ」というのが企業や国の考えだと思ってよいでしょう。

 

労働基準法でも決められているのですが、サラリーマンは雇用されている企業に対して「誠心誠意、会社の収益確保に従事する」ということを守らなければいけません。そうなると、会社外の副業でお金を稼ぐということは、なかなか許してもらえないんです。

 

しかし、個人的には、この流れもやがて変わっていくだろうと思っています。実際、国にしても企業にしても、最後まで国民や社員の面倒を見ることが難しくなっています。生涯貢献した企業の退職金だって少ない。あるいは、企業そのものが倒産する可能性すらあります。また、AIがもっと発展・普及すれば、企業側が雇う社員の数はもっと少なくなるかもしれません。

 

このように考えると、自分で少しずつ稼いでいくしかありません。昔のように「その会社で一生を遂げる」という意識ではダメ。「あれもやりながら、これもやりながら」といった柔軟な姿勢でお金を稼いでいかなくてはいけない時代になっていくはずだと思います。

 

逆に、このような意識がない人はこれから先、取り残されることがあるかもしれません。もしサラリーマンとして、最低限のお金を稼げているのであれば、ローリスクの副業からどんどん始めていくべきだと私は考えています。

 

税理士が考えるオススメの副業とは?

――おススメの副業はありますか?

 

木下 簡単に稼げそうな副業の多くは、すでに人が群がっているんですよね。例えば、アフィリエイト、アドセンス、ネットショップ、YouTuberなどは、いまから始めてみても「ときすでに遅し」で、期待するほど儲かりません。ただし、すべての人がダメという訳でなく、もしかすると感覚的に合う方がいるかもしれません。しかし、早い時期に手を出した人たちが儲けているので、後続の人たちにとってはなかなか難しいと思います。ただ、それでもやらないよりはマシだと思います。

 

まずは、「言われたことしかやらない」という発想から抜け出して、自分の時間を投資する意味でやっておくに越したことはありません。また、会社での仕事以外の視点も得られるので、頭が柔軟になり、気分転換にもなり、会社での仕事によい効果をもたらすかもしれません。

 

――インターネット以外の副業でもよいのでしょうか?

 

木下 もちろんです。オススメはホテルやビルなどの24時間体制の施設での宿直や運転代行です。寝不足にならないように注意しなければなりませんが。

 

――副業に向いていないと思う仕事は?

 

木下 まずはアンケートモニター。パートさんにとっては結構いい仕事みたいですけれど、メールチェックの作業に時間がかかる割に薄給のようです。したがって、時間がないサラリーマンには不向きだと言えます。

 

土日などに働く引っ越しのスタッフもオススメできません。賃金がよく、求人も多いので、魅力的な仕事に映りますが、体力的に相当厳しいでしょう。よほど体力に自信がなければ避けるべきといえます。

 

あとは自らが個人店舗となって「仕入れて転売して稼ぐ」という仕事。一見よさそうですけど、これは普通の卸売り業者と同じように、仕入れと在庫を抱えるリスクが伴います。なので、仕入れ値と利幅、売れ行き動向について見定められないと大変なことになります。素人でも難しい部分もありますし、本業の間にやる仕事としては難しいでしょう。

 

やはり、あくまでも副業ですから、たとえ賃金が低くても、本業に支障をきたさない程度のものがよいと思います。

副業が会社にバレるワケ

――サラリーマンをしながら副業をする際に注意すべき点は?

 

木下 会社に内緒で副業をしていた場合、普通に通帳を分けているつもりでも、給与として収入をもらっていると基本的にはバレます。2か所目の給与が20万円以下であればバレないと思われている方もいますが、「給与」は他の給与と合算であり、申告義務があるためアウトです。

 

バレないようにするためには、給与所得以外の業務委託契約のような「事業所得」又は「雑所得」として収入を受け取り、確定申告書2枚目の下にある給与所得以外の所得に関する住民税の選択方法を「特別徴収(給与から天引き)」ではなく「普通徴収(自分で納付)」を選択する必要があります。

 

なぜ会社にバレるのかと言うと、その原因は「住民税の通知」にあります。なぜならば、副業収入の受取を給与所得以外の業務委託形式で受け取っていたとしても、住民税の支払いを「特別徴収(給与から天引き)」を選択すると、副業分の住民税の支払につき会社へ「住民税の通知」を送ってしまうからです。

 

そうすると、「あなた、会社以外からも収入があるみたいですけど、兼業禁止規定があるでしょう」と本業の経理から怒られます。公務員の方は副業は絶対にダメですが、会社員でも懲戒処分になる恐れもあります。ここはよく注意してください。

 

副業で得た収入は無駄遣いをしないように注意してください。本業以外での収入ですから、パッと使ってしまいがちですが、家族や将来のために少しでも多く蓄えておくことが大切です。普段の通帳ときっちり分けて、貯金や定期預金をして貯めていくのが賢明な判断だと思います。

 

まとめ

日本人の典型的な働き方だった終身雇用制度が多くの企業で破綻している現在、本業と副業の二足のわらじを履くことは、長い人生を生きていくために不可欠なのかもしれません。副業をする場合、本業に支障をきたさない程度にやることがよさそうですが、「複業」という言葉が生まれているように、複数の仕事を本業として行う方もいるでしょう。どんな仕事も大変ですが、これからはもっと大変になりそうです。

木下勇人 | Hayato Kinoshita

相続・事業承継に専門特化した公認会計士・税理士。自らも不動産投資や起業をしている。税理士向け・一般向けセミナーを全国各地で年100回以上講演しており、ダントツでわかりやすいと評判。http://www.leding.or.jp