ビジネス
2019/3/28 17:30

【いまさら聞けない】「接待交際費」で覚えておきたいこと6つ

その4:ゴルフ場会員券は接待交際費になる?

――その関連で言うと、リベートはどうでしょうか?

 

木下 これは接待交際費ではなく、販売促進費として計上することが多いです。あらかじめ「何割」という設定に基づいて支払うわけですから、これは接待交際費ではないんですね。

 

――ほかに接待交際費のようでいて、実はそれで落とせないものはありますか?

 

木下 ゴルフ場の会員権ですね。ゴルフは接待や交際の側面もあり得るものですが、ゴルフ場の会員権は、株式のように時価で取り引きされているもので非償却資産という扱いになるので、少々勝手が違うんですよ。なので、ゴルフ場の会員権の場合は、まず法人で購入し、資産に計上します。そして、それとは別に「年会費」や「ロッカー代」といった費用部分のみ接待交際費として計上するというものですね。

 

――野球場の年間ボックスシートや、相撲のます席を年間で買っている企業もあります。

 

木下 接待を目的として購入していて、基本的には、社外の接待に使いながらも、空いているときに役員や従業員が利用するという場合は全額を接待交際費として計上することができます。

 

でも、その年間予約席を、役員や従業員しか使わない場合は、それらの者に対する現物支給の給与とみなされ、所得税の対象になるので、これはダメです。

 

――ゴルフや観劇の際の送迎タクシー代は?

 

木下 得意先や仕入先を接待するための送迎のタクシー代は交通費ではなく交際費としての扱いになります。また、実費ではなく御車代として出して場合でも、それが妥当な額であれば交際費となります。

 

その5: 福利厚生費との違い

――福利厚生費と接待交際費は具体的に何が違うのでしょうか?

 

木下 言うまでもなく、これは社内の士気を上げるためのもので、接待交際費とはまったく違います。会社としては無駄な経費はとにかく削減したいものです。でも、あんまり絞り過ぎると、会社員のモチベーションは下がりますから、そこで福利厚生費として忘年会をやったり、社員旅行をやったりして、社内の親睦を深めるためにかかるお金が福利厚生費ということになります。

 

――そう考えると、接待交際費というのは、あくまでも社外の人との飲食であり、それも見返りのあるものでないと会社としては認められないという、ごく当たり前の仕組みになっているということですね。

 

木下 はい。当たり前の話ですね。でも、この接待交際費を巡っては、会社員の側、経営者の側で思いが全く異なることは興味深いところだと思います。

 

その6:接待交際費はどこまで削るべき?

――経営者は接待交際費をどこまで削るべきでしょうか?

 

木下 会社が軌道に乗ってきて、売上が上がるようになると節税に熱心になる経営者の方はとても多いです。しかし、意識が節税に対して向きすぎると、会社にとって本当に大切なキャッシュフローの最大化という目的とは離れていってしまうことがあります。

 

極端な例ですが、年間の利益が2000万円出るとして、急いで節税のために交際費を使い800万円を計上するとします。すると、税引前当期純利益が1200万円になるので、法人税を40%としたら、納税額は480万円になる。一方、交際費を一切使わないと、納税額は800万円になります。

 

しかし、前者の場合は会社のキャッシュフローとして720万円になるのに対して、後者の場合は、納税額は多いのですが、1200万円のキャッシュフローを確保することができます。一見、納税額が320万円減って節税できているように見えるので喜んでしまいがちですが、キャッシュフローという点で考えると、逆に480万円も減少しているという点に注目が必要です。

 

このように節税に熱心になり過ぎて、本当に大切な会社のキャッシュフローに対する意識が下がるようだとよい経営者とは言えません。

木下勇人 | Hayato Kinoshita

相続・事業承継に専門特化した公認会計士・税理士。自らも不動産投資や起業をしている。税理士向け・一般向けセミナーを全国各地で年100回以上講演しており、ダントツでわかりやすいと評判。http://www.leding.or.jp

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