いままさに副業解禁時代が到来しており、少額の初期投資で不動産経営をして副収入を得るサラリーマンが増えています。今回は、物件を買わずに始める「レンタルスペース経営」について、不動産経営のプロが解説します。
【教えてくれた人】
星 龍一朗
大手不動産流通会社、不動産投資顧問会社などを経て独立。主に個人向けに不動産投資、賃貸経営のアドバイスを行い、講座・セミナーを通じて資産形成をサポートする。主宰するレンタルスペース運営者のための「不動産みらいコミュニティー」(facebookプライベートグループ。紹介制)には、サラリーマンでありながら複数のレンタルスペース経営を実践するメンバーが多数在籍。リアル・スター・コラボレーション(株) 代表取締役/ニコニコFP新宿事務所 代表 公式ブログ:https://www.dragon16star.com/
買わずに始める不動産経営「レンタルスペース経営」とは
訪日外国人の急増に伴う宿泊施設不足と、インターネットのシェアリングエコノミー・サービス(Airbnbなど)の普及により、サラリーマンなど一般の方でも、副業としてインバウンド向けの民泊施設を経営することが可能になりました。
それにより2015年ごろから施設数が増加の一途をたどっていたのですが、しかし2018年6月の民泊新法施行により、民泊施設を経営するハードルが一気に高くなります。その結果、旅館業法に基づく許可や、民泊新法による届出など、適法な許認可を得た施設でないとAirbnbを始めとするマッチングサイトに掲載をすることができなくなってしまいました。
この法改正により民泊施設経営のハードルが上がって以降、いま密かにブームになっているのが「時間貸しレンタルスペース経営」です。これは、会議室やパーティー向けのレンタルスペースとして利用可能な賃貸物件を借りて、時間貸しスペースとして運用することにより収益を上げるビジネスモデルです。
スタートに必要な資金は50~100万円
密かなブームの背景としては、前述のように民泊施設経営からの転用が挙げられます。またもう一つの要因として、アベノミクスの金融緩和により、銀行などから融資を受けて一棟アパートやマンションなどの賃貸不動産を購入していたサラリーマン不動産投資家が、ここ2年ほどの融資の引き締めの影響により新たな融資の借入が困難となり、物件を買わずに出来る不動産経営として「レンタルスペース経営」に続々と参入して来ていることも見逃せません。
不動産投資・不動産経営というと、数千万円といった大きな金額をイメージされると思いますが、「レンタルスペース経営」の場合は賃貸物件で始められるため、50~100万円くらいの初期費用でスタートできるのが特徴です。
初期費用は、賃貸物件を借りる際の敷金、礼金、前家賃、仲介手数料のほかに、会議室やパーティースペースとして貸し出すために必要な家具・備品の購入代金に充てるものとなります。
拡大するレンタルスペースの市場
時間貸しレンタルスペースは、「スペイシー」、「スペースマーケット」、「インスタベース」といった設立5~6年の国内ベンチャー企業が運用するマッチングサイトを中心に盛り上がっています。スペースを借りたいゲストと、スペースを貸したいホストを、インターネットサイトを通じてマッチングするわけです。
マッチングサイト側は、スペースの掲載料ではなく、スペース利用代金の30~35%程度を成約手数料として取っています。これらマッチングサイトの台頭により、小資本の個人が運営するスペースでも、簡単に利用者を集客することが出来るようになったのです。
ちなみにスペースマーケット社は、2019年12月20日に東証マザースに上場しました。業績としてはまだまだではありますが、今後成長の期待度が高いということを意味していると思います。マッチンングサイトは、スペースを利用するゲスト側の認知度はまだそれほど高くありませんが、今後認知度が高まれば、需要が大きく増えることが予想されます。需要が増えればレンタルスペース物件の供給数も増え、またジャンルも多様化していくことでしょう。
実際に運営してみたらどうだった?
何を隠そう、筆者自身も東京都内で会議室1ヶ所とパーティースペース1ヶ所の運営を実践してみました。会議室については、オフィス街であればある程度の需要があることは想像できていましたが、正直、パーティースペースについてはどれほどの需要があるのかイメージが湧きませんでした。
ところが、東京都内の地下鉄駅から徒歩2分の立地で、定員10名のパーティースペース運営をスタートしたところ、ママ会、ゲーム会、コスプレ撮影会、飲み会、誕生日パーティーなど予約が相次ぎ、これは良い意味で想定外でした。2018年12月には、忘年会、クリスマスパーティーなどの予約が殺到し、物件の支払い賃料に対しておおよそ5.5倍の売上を達成したのです。
このように、パーティースペースのほうが売上の上振れがあり得るのですが、季節要因による売上変動も激しい傾向にあります。一方で、会議室は季節要因による売上変動が少なく安定的ですが、売上の大きな上振れはあまり期待できないという結果になりました。
また、パーティースペースのほうが清掃頻度の必要性が高く、会議室は週1回程度で十分など、それぞれ一長一短があるのが実情です。レンタルスペースの運営を代行している会社もありますので、委託すると手取り収入は減りますが、ほぼ丸投げでレンタルスペース経営をすることも可能です。
仮に、100万円の初期投資で、毎月5万円の利益が出たら利回りとしては60%になります。約1年半で初期投資を回収できるわけです。
レンタルスペース経営の始め方
最後に、おおまかなレンタルスペース開設・運営の手順を説明しましょう。
【01 スペースを確保】
・レンタルスペース可物件を探し、収益性などを検討する
・条件に合う物件に申込みを出し、賃貸借契約を締結する
【02 内装、備品のセッティング】
・貸会議室またはパーティースペースとして機能させるために、写真映えを意識しつつ、内装デザイン、机・椅子・Wi-Fi・その他の各種備品をセッティングする
・利用ガイドや室内の注意書き、POPなどを作成し、設置する
【03 レンタルスペース集客のマッチングサイトに掲載して集客】
・部屋の写真を撮影し、利用ルールや利用料金などを決めて、ポータルサイトに掲載する
・予約や問い合わせの対応や、スペースの清掃などの運営を行う(運営代行会社に委託することも可能)
以上のような流れとなります。少額投資で副収入を得る手法の一つとして、意外と現実的だと思いませんか?