クレジットカードやキャッシュレス決済の疑問や悩みに“クレカの鉄人”岩田昭男師範がズバッと答える連載企画。今回は、高いポイント還元で人気を集めている三井住友カード(NL)と、ポイントの優待特典を大幅に改変し、カード業界でにわかに存在感を高めている三菱UFJカードをはじめとする「物価高に対抗できるカード」を紹介します。
【第23回】物価上昇が続くいま、生活防衛のために持つべきクレジットカードを教えてしてほしい!
【解説する人】岩田 昭男
クレジットカード・キャッシュレス決済分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数
【今月の悩める子羊】根引 望(ねびき のぞむ)
都内で働く42歳。共働きの妻と息子の3人暮らしで、帰りが早い日には妻の代わりに夕食の買い物をすることも多い。近頃スーパーで買い物をするにつけ、物価上昇を実感。値上げぶんを少しでも取り返すクレジットカードの情報を聞きに道場を訪ねた。
(相談者の要望)
〇物価高に対抗できるクレジットカードが知りたい
〇特にスーパーでトクできるカードだとうれしい
〇スーパーごとにどんなカードがおトクか知りたい
「ポイントがおトクに貯まるクレカ」の代表格は三井住友カード(NL)
師範 物価高に対抗できるクレジットカードを探しとるのはおぬしか?
根引 はい。生活必需品をはじめ、モノの値上がりが止まらず。安売りセールの日にまとめ買いするなどできる抵抗はしているのですが……。
師範 ふむ。そういえば米の値段も夏の米不足以降、一気に上がってしまったのう。毎年秋に楽しみにしとる山梨の種なしぶどうも価格高騰でたまにしか食べられん! シャインマスカットも高値のままじゃ……。
根引 ……えーっと、師範のぶどう好きはよくわかりましたが、そういうわけで、クレジットカードも見直すというか、少しでもポイント還元率の高いものを持ちたい、と思った次第です。
師範 ここ数年で見ると、「ポイントがおトクに貯まるカード」の代表格は三井住友カード(NL)じゃろうな。通常のポイント還元率は0.5%ながら、対象のコンビニ・飲食店でスマホでのVisaのタッチ決済/Mastercardタッチ決済の支払いを行えば+6.5%還元で、合計7%の還元(カードのタッチ決済の場合、2024年12月31日までは合計5%還元、2025年1月1日からは1.5%還元)。さらに、最大+5%の家族ポイント、最大+8%のVポイントアッププログラムを組み合わせれば、最大20%の還元率になる。
根引 おお、還元率最大20%は魅力的! タッチ決済で7%還元だけでもすごいです。
師範 ただし、対象は「コンビニ・飲食店」。こうした高ポイント還元を獲得できるのはセブン-イレブンやローソン、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、サイゼリヤやガストなどに限られる。
根引 コンビニでも買い物するし、ファストフード店も利用する人にはお得なカードだなぁ。物価高で、買い物のあとレシートを見るたびに目が飛び出てしまうので、スーパーで高ポイント還元率の恩恵が受けられるカードがあると助かるのですが。
※1:Oliveフレキシブルペイについてはクレジットモード(家族カード含む)での利用のみ対象 ※2:プラチナプリファード保有者は「プリファード特約店」として通常のポイントぶん1%に加えて+6%ポイント還元 ※3:一定金額(原則1万円)を超えるとタッチ決済でなく決済端末にカードを差し支払う場合がある。その場合の支払いぶんは、「スマホのタッチ決済で+6.5%還元」のポイント加算の対象とはならなず、タッチ決済とならない金額の上限は店舗により異なる場合がある ※4:iD、カードの差し込み、磁気取引は対象とならない ※5:家族ポイント最大12%還元を受けるには、取引条件がある ※6:カード種別や入会時期・Vポイントアッププログラムの取引状況などにより、還元率が最大+8%を超える場合がある ※7:ポイント還元率の合算は、複数のVポイントアッププログラムの条件を達成した場合、20%を超えることがあるが景品表示法の定めに基づき、実際にポイントアップされる還元率の上限は20%までとなる ※8:Oliveフレキシブルペイの追加した支払いモードでの利用分については、利用時の支払いモード設定しているカードのポイントサービスが適用される
「スーパーでトクできるカード」として三菱UFJカードが一躍注目を集めている!
師範 そこで最近話題になっとるのが三菱UFJカード。このカードは従来からセブン-イレブンやローソン、松屋などで5.5%ポイント還元する優待特典を行ってきたが、そのポイント優遇対象が今年の8月から一気に拡大。オーケーやオオゼキ、東武ストア、肉のハナマサなどのスーパーでも5.5%ポイント還元を受けられるようになったんじゃ。
根引 これはうれしい! わが家はまさにオーケーがメインで買い物するスーパーのひとつです。クレジットカード払いで5.5%の還元を受けられるのはお得ですね!
師範 しかも同カードの1375円の年会費が8月以降の入会から永年無料になった。まあこれまでも年1回の利用で無料ではあったが、「無条件で無料」はやはり利用者にはうれしいもの。ちなみに、既存の会員についても、永年無料に改定される予定じゃ。
根引 なんだか三菱UFJカード、勢いに乗ってる感じですね。
師範 その通り。三菱UFJカードがセブン-イレブンとローソンで最大5.5%のポイント還元を始めたのは2022年の7月。その施策にはどうしても三井住友カードの「後追い」感が拭えなかった。その印象が変わったのはこの8月からで、何といってもスーパーがポイント還元の対象になったのが大きいな。
大手スーパーごとに、トクできるクレジットカードが必ずある!
根引 三菱UFJカードでトクできるスーパーはどちらかというと中堅というか中規模スーパーですね。もっと全国規模で展開するスーパーを利用するときにおすすめのカードも教えてほしいんですが。
師範 まず、イオン系列はもちろんイオンカード。毎月20日と30日の「お客さま感謝デー」は買い物代金が5%オフとなるほか、55歳以上なら毎月15日に対象のイオンカードでクレジット払いしても請求時に5%オフとなる。次に、イトーヨーカドーではセブンカード・プラスがおトク。毎月8・18・28日の「ハッピーデー」にイトーヨーカドーで同カードを使うと、ほぼすべての商品が5%オフになる。ちなみにセブンカード・プラスはこの11月にリニューアル。セブン-イレブンでセブンカード・プラスを使うと合計10%ぶんのnanacoポイントが貯まり、引き落とし口座がセブン銀行ならさらに+1%のポイント還元も受けられる。
根引 月に2~3回の割引でも、まとめ買いで対応すれば問題なしですね。
師範 ライフでの買い物で最もおトクなのは、ライフのクレジットカード「LC JCBカード」かの。カード提示で税抜200円ごとに1ポイント、クレカ決済で税抜200円ごとに1ポイント、口座引き落としで税込200円ごとに1ポイントと合計3ポイントの還元が行われ、総計ポイント還元率は約1.5%。また、ライフといえばこの10月から楽天ペイ、d払い、au PAYでの決済が可能になった。ただし楽天ペイの場合、「チャージ払いで最大1.5%ポイント還元プログラム」の対象店舗にはならないので要注意じゃ。
根引 楽天ペイはけっこう1.5%ポイント還元できるところが多くて重宝してるんですが、ライフが対象外なのは残念ですね。
師範 西友やサニーでは近年、楽天カードが最もおトクなカードとなった。両スーパーで買い物時に楽天ポイントカードを提示すると税抜200円ごとに1ポイントで0.5%、楽天カード決済で1%の計1.5%ポイントが貯まり、楽天ポイントカード提示+楽天ペイのチャージ払いなら合計最大2%のポイント還元じゃ。このように、スーパーでトクするクレジットカードについては、そもそも自分の生活圏内にないスーパーと相性の良いカードを選んでも意味がない。自分がよく使うスーパーで一番ポイント還元率の高いカードを選ぶのが最も効率的なおトクの取り方じゃ。
根引 そんななかで、三菱UFJカードで毎日5.5%のポイント還元を受けられるオオゼキやオーケーなどのスーパーが近くにあれば超ラッキーってことですね。
師範 ちなみに、三菱UFJカードは2025年の1月31日まで、対象店舗ごとの利用金額合計1000円につき最大15%をポイント還元するキャンペーンを実施中。2024年後半~2025年に最注目のカードが三菱UFJカードであることは間違いないじゃろうな。
三井住友カードは「Olive」が“枷”に? 広く門戸を開く三菱UFJカードに勝算あり!?
師範 対する三井住友も現在「Olive」という金融サービスを展開中で、クレカ積立でポイントが貯まるサービスも提供。三井住友カードは日本で1、2位を争う横綱カードじゃ。じゃがワシは、三井住友の戦略に若干の不安を感じる。それはOliveという新サービスが、逆に“枷”になっているのではと思うからじゃ。
根引 はあ、“枷”ですか?
師範 三井住友の最大20%のポイント還元は、Oliveフレキシブルペイ(一般)の利用が前提。Oliveフレキシブルペイ以外のVポイント対象カードだと最大でも15.5%のポイント還元になる。ということは最大20%のポイント還元を受けるにはOliveに加入していること、つまり三井住友銀行の口座を持つ必要がある。もちろんOliveのアカウントを使い銀行やクレジットカードから保険、証券まで幅広くアクセスできるのは便利じゃが、これまでメインで使っていた口座を別の銀行に移行するのに抵抗のある者も多いはず。
要は、三井住友カードは、元々三井住友銀行の口座を持っている人、三井住友を応援している人をメインターゲットとしているように見えるんじゃ。その点、三菱UFJカードはクレジットカードの利用でトクしたい人に一層広く門戸を開いている。しかも今回、5.5%ポイント還元の対象店舗にスーパーが加わり、一気に利便性が上がった。現状カードとして普通に持っていてメリットがあるのは三菱UFJカードといえるじゃろう。
【ココは抑えたい! 三菱UFJカードの注意点】
三菱UFJカードの「5.5%ポイント還元」「最大15%ポイント還元」に関しては注意点がいくつかあります。まず、三菱UFJカードのポイントシステムは、1か月の利用額の合計1000円ごとに1ポイントの「グローバルポイント」が貯まる、というのが基本。そして、8月に加盟店が大幅に拡大した「ポイント優遇特典」では、その基本ポイントに、1000円ごとに10ポイントのスペシャルポイント(ポイントアップ加盟店特典)が付与されます。注意すべきはこのスペシャルポイントの算出方法。ここでの「利用額合計1000円」は、「同一対象店かつ同一の決算方法」ごとに集計したもので、例えばオオゼキで800円、オーケーで800円での買い物に分かれるとポイントがつかず、また同じオオゼキで買い物してもクレジットカードで800円、Apple Pay(QUICPay)での決済800円に分かれるとポイントがつきません。月ごとの集計なのでポイントがつかない可能性は少ないですが、“切り捨て”られる金額を少なくしたいなら、できるだけ買い物するスーパーと決済方法を統一したほうが良いでしょう。また、「最大15%ポイント還元」を受けるにはキャンペーン登録が必要。追加特典は、3か月ごとに集計され、各期間で対象となる利用金額の上限は2万9000円までとなります。
そしてもうひとつ、5.5%や最大15%の還元率ですが、これを実現するにはポイントの交換に注意が必要。三菱UFJカードのグローバルポイントは、電子ギフトや他社の様々なポイントに交換して使えますが、その交換レートが交換先ごとに違うのです。例えばAmazonギフト券は100ポイントで500円ぶんに交換可能、ビックカメラのビックポイントとベルメゾン・ポイントはグローバルポイント500ポイントを2500ポイントに交換でき、どちらも「1ポイント=5円」のレートを実現しています。一方、Pontaポイントやdポイントは「グローバルポイント200ポイント→800ポイント」で「1ポイント=4円」のレート。楽天ポイントやnanacoポイント、WAONポイントは「グローバルポイント200ポイント→600ポイント」で「1ポイント=3円」のレートとなります。
このように買い物や決済の仕方、ポイント交換に少し注意を払うことで、5.5%、さらには15%のポイント還元をマックスまで享受できるのです。
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構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男