写真の印象を高めるための効果的な衣装やメイクは? 女性写真家 Rinatyがレクチャー
写真のイメージは、「色」がとても重要。色彩検定協会の協力により、写真と色彩の関係について考えていきます。
第3回はイルコ・アレクサンダロフの後輩写真家 Rinatyが、女性目線でポートレート写真の衣装やメイクの色について教えてくれます。
イルコ・アレクサンダロフ |
今回の講師 Rinaty |
イルコの“色彩”にこだわる写真術
写真のトーンを意識して服の色をセレクト
私は普段、セルフポートレートを主体に撮影しています。そのときに使用する衣装とメイクには特に気を使っています。ただし、この服を着たいからこの場所を選んで撮るというよりは、こういう情景を作りたい、こういう世界観で撮りたいからこの衣装を使う、という選び方をすることが多いです。
例えば、私は背景にさまざまな種類の花を使うことが多いのですが、その花の色に合わせて服の色を決めます。花の類似色の衣装を使い写真全体の統一感を引き出すか、逆に花の補色にすることで衣装を強調するのが基本です。色のバランスは大切なので、よく考えてセレクトするようにしています。
撮りたいイメージに合わせた色味やデザインであることも意識しています。ロマンチックな雰囲気に撮りたいのか、モダンなイメージにしたいのか。こんな衣装でこんな場所で撮りたいと事前に決めている場合は、それに合う衣装をひたすら海外フリマサイトなどを見て探し、使えそうな衣装を買い占めています (笑)。
トーンの概念図
同じような明度や彩度の色は共通した印象になります。明度と彩度の領域をまとめたものをトーン (色調) といい、有彩色は12種、無彩色は5種に分類され、ビビッド (さえた)、ブライト (明るい) といったそれぞれの色のイメージを表す名称が付いています。
花と衣装をくすんだトーンで統一
シックで絵画っぽい雰囲気を出すため、アジサイを小さなプールに張った水に浮かべ、自分も水に入って撮影。花の色に合わせた少しくすんだピンクの衣装を選ぶことで写真に統一感が出ました。三脚にブームアームを取り付けてカメラを真上に固定して、セルフタイマーで撮影しています。
対照的な色相で対比効果
宮古島のハイビスカスをバックに、背景と補色になる衣装の色を選んで撮影。さらに元気で夏っぽい南国のポップなイメージにしたくて、ビビッドかブライトくらいの彩度の高いトーンになるよう写真の色味を整えました。
同系色でモダンな統一感を出した
水族館で撮影できる機会があり、水槽内で動くクラゲのイメージに合わせ、スカートの裾がフワっと広がるような衣装を選びました。背景に近い類似色を選ぶことで、青と黒と白の組み合わせによるモダンな雰囲気に仕上げています。
あえて彩度を下げてさわやかさを演出
さわやかな風を感じる南国バカンスのようなイメージにしたかったので、実際はビビットトーンである原色の黄色のワンピースと青空の色から、あえて彩度を下げ明度を明るくしてライトトーン程度になるように現像しました。
メイクでアクセントカラーをプラス
写真をより印象的に見せるためにはメイクも大切です。特に表情や目の印象を強く残すためにはアイメイクが重要。私は普段よりもアイシャドウを濃く塗って強調しています。さらに、個性的な色を使ってアクセントカラーにするのもアリです。
普段はセルフなのでメイクも衣装もすべて自分で考えて用意しますが、例えばカメラマンとモデルが一対一で撮ることになったときは、どういう場所で撮るか、カメラマンの撮りたいイメージなどをしっかりモデルに伝えることが重要です。そうすればモデル側が衣装やメイクを用意する場合、イメージに合うものを選びやすくなります。事前に撮りたいイメージをよく話し合って共有しておくことで、作品の完成度を高めることができます。
濃い目のメイクで目元を強調
濃い紺の着物の上で赤い南天の実を散らし、全体を和のテイストに。メイクもそれに合わせ濃い目の赤や白で目元を強調した「花魁メイク」で華やかな印象に。
類似色のグリーンを目元にも
この部屋のカーテンの色がターコイズグリーンであることを知っていたので、カーテンの類似色であるアイシャドウを使用しました。さらに白いアイラインで目元部分をより強調しています。
彩度にメリハリを付けて服を強調
写真の色調はつい鮮やかさや派手さを強調したくなりがちですが、それだけだとうるさく感じることがあります。そのため衣装などの色を強調するために、あえてほかの部分の彩度を落として画面を整理することがあります。下の写真のように、赤いドレスを強調するために空のブルーを落としたりするわけです。
また、花と一緒に撮影するときは、健康的で瑞々しいイメージにしたければ植物の緑色を鮮やかにしますが、絵画調やアンティークっぽい世界観にしたいときは緑などの彩度を落とすと、落ち着いた色調になるのでオススメです。
余計な色を抑え、画面を整理する
モノクロ的な世界の中で赤いドレスだけが引き立つような雰囲気にするため、余計な青空の部分の色を抜いて、赤と黒を引き締めるように色を調整しました。
イルコの後輩写真家・Rinaty 色彩検定合格への道
6月に色彩検定3級を受検しました。勉強は主に『公式テキスト』を時間を見つけては項目ごとに繰り返し読みました。3級の公式テキストはイラストなども多く、基本的な内容で、写真を撮影しているといつの間にか覚えていたり、光について自分で考えていたことが理論化されていたりと、カメラマンには馴染みやすい内容です。光の性質や目のしくみ、トーンについての理論などやや難しい内容もありますが、高校の理科レベルなので、3級は色彩の基礎を勉強するのにはちょうどいいと思います。
予定どおり合格できれば、次は冬期検定で2級にチャレンジする予定。引き続きがんばります。
季節ごとの写真投稿キャンペーン「日常に色彩を」開催中!
色彩検定協会Instagram公式アカウントでは、日常を彩る「色」に関する写真を募集中。夏の色彩を集めるサマーキャンペーンは2022年8月31日まで。
■色彩検定協会とは?
色彩検定協会は、年2回の色彩検定を実施している公益社団法人です。