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ストロボ+カラーフィルターで写真の表現力がアップする! イルコの“色彩”にこだわる写真術⑥

ストロボで光をコントロールして色の表現力をアップさせよう

写真のイメージづくりには「色」がとても重要。色彩検定協会の協力により、写真と色彩の関係について考えていくこの連載。前回の「自然光」に続いて、今回のテーマは「人工光」について。イルコ流のストロボ撮影テクニックを紹介します。

イルコの色彩にこだわる写真術6
イルコ・アレクサンダロフ

イルコの“色彩”にこだわる写真術

  1. 写真の印象を左右する「色彩心理」とは?
  2. 写真の印象をアップさせる「色彩調和」とは?
  3. ポートレートに効果的な衣装やメイクは?
  4. 色彩を理解すると写真にどう役立つ?
  5. 自然光を生かしたポートレートの撮り方は?
  6. ストロボ+カラーフィルターで写真の表現力アップ!
  7. 写真をドラマチックに仕上げる色の調整方法は?
  8. 季節感を表現するには肌の色も重要!
  9. 写真を正確な発色で楽しむには?
  10. モニターとプリントで色が違うのはなぜ?

ストロボは自然光より安定した人工光

今回は「人工光」について考えます。写真に関連する人工光といえば「ストロボ」。私はポートレート撮影を始めてから、ストロボの魅力にハマりました。初めは自然光での撮影も試しましたが、女性の顔をよりきれいに柔らかい光で写せることから、今ではほぼストロボを使用して撮影しています。

ストロボは自然光より安定しているのが魅力です。自然光は太陽の位置が変わったり、曇ったりと変化します。レフ板も同様に不安定なので、そのつど変化に対応しないといけないのがわずらわしいのです。ストロボが2灯あれば、同じ条件で満足いくまで撮れます。アシスタントを頼む必要もありませんし、現場で軽快に動くことができます。

背景が明るく、モデルは暗い場所を探す

私は撮影時、まず背景の光が美しく、被写体ができるだけ暗くなる場所を探します。モデルに1灯のストロボを強めに当てると、モデルも背景もバランスよくきれいに写ります。

イルコの色彩にこだわる写真術6
光と影の境界に立ってもらう。

■ストロボ使用

イルコの色彩にこだわる写真術6
ソニー α7 IV シグマ 85mm F1.4 DG DN | Art 絞りF1.4 1/200秒 ISO500 WB : 5700K

■ストロボなし

イルコの色彩にこだわる写真術6
ストロボなしではモデルは真っ黒。

2灯のストロボを被写体と背景それぞれに当てて色をコントロール

背景に壁などがあれば、そこに直接ストロボを当てて、色を表現できます。メインのストロボに加え、赤いフィルターを付けたストロボで背景を発光。また、鉄橋の作り出す自然光の模様が面白かったので、赤い光と組み合わせて表現しました。

イルコの色彩にこだわる写真術6
ソニー α7 IV シグマ 35mm F1.4 DG DN | Art 絞りF1.4 1/100秒 ISO250 WB : 5700K
イルコの色彩にこだわる写真術6
フィルターはすぐ取り外せるようクリップ留め。

イルコ流ストロボテクニックのポイントはカラーフィルター

日中でもストロボがあれば周囲の光に頼るだけでなく、自由に撮影ができます。モデルが太陽光でまぶしそうな表情にならないのもメリットです。

そして、カラーのフィルターを使うのがイルコ流のストロボテクニック。主にオレンジと青を使うと自然な雰囲気で描きやすく、背景の色を変化させるのも簡単です。

イルコの色彩にこだわる写真術6
よく使う青とオレンジは濃度の違うものを数種類用意。赤や緑は色を強く表現したいときに使用。

ビビッドな赤い光で雰囲気をガラッと変える

赤いフィルターを付けたストロボを真後ろから当てて、背景の地面とモデルの髪を輝かせました。特にコスプレ撮影などでは、背景用ストロボに赤や緑のフィルターを付けて、このようにビビッドな色で表現することがあります。

イルコの色彩にこだわる写真術6
ソニー α7 IV シグマ 85mm F1.4 DG DN | Art 絞りF1.4 1/200秒 ISO500 WB : マニュアル

オレンジと青のフィルターで背景をコントロールできる

私が最もよく使うのがオレンジのフィルター。背景を少し冷たい感じの青い色で撮りたいときに使います。オレンジのフィルターをストロボに付けて一般的なストロボのホワイトバランス5700Kくらいで撮影すると、被写体が暖色に写るので、肌色が自然になるようにWBを3200Kに下げます。すると背景は通常より青くなるのです。青いフィルターなら逆に暖色系の背景を作ることができます。

夜景ポートレートの場合、ただストロボで撮ると背景はかなり暖色に写るため、オレンジのフィルターを使い、全体を青っぽくすると雰囲気のいい写真になります。

オレンジフィルターのストロボを被写体に当てWBで背景を青く

オレンジのフィルターをストロボに付けて撮影すると被写体が暖色に写るので、肌色が自然になるようWBを全体的に少し下げると、背景は通常より青くなります。

イルコの色彩にこだわる写真術6
ソニー α7 IV シグマ 85mm F1.4 DG DN | Art 絞りF1.4 1/200秒 ISO500 WB : 3200K
イルコの色彩にこだわる写真術6
アンブレラにオレンジフィルターをセットして撮影。

オレンジフィルターで夜らしい青に

日中同様にオレンジフィルターを付けたストロボで照らし、WBを下げることで、背景が青くなります。さらに後ろからモデルに光を当てると、髪を立体的に輝やかせることができます。

■フィルター使用

イルコの色彩にこだわる写真術6
ソニー α7 IV シグマ 85mm F1.4 DG DN | Art 絞りF1.4 1/200秒 ISO500 WB : 3200K

■フィルターなし

イルコの色彩にこだわる写真術6
フィルターなしだと暖色が強い色になります。

ストロボ+カラーフィルターで写真表現の幅が広がる

フィルターを使うときに注意してほしいのは、フィルターを付けることでストロボが減光してしまうこと。濃い青だと1段2段とストロボのパワーが減る場合もあります。どれだけ減るかは、経験して覚える必要があります。カラーフィルターを使ったストロボ撮影を覚えると、写真の表現力が格段にアップします。ぜひ挑戦してみてください。

イルコの色彩にこだわる写真術6
今回、カメラは「ソニー α7 IV」、レンズはシグマ「85mm F1.4 DG DN | Art」「35mm F1.4 DG DN | Art」「20mm F1.4 DG DN | Art」と、すべてF1.4のArtシリーズで統一。ストロボはProfotoを使用しました。

イルコの後輩写真家・Rinaty 色彩検定合格への道

イルコの色彩にこだわる写真術6
Rinaty

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11月13日の冬期検定で2級に挑戦するため、現在、仕事の合間などを使って勉強中です。当たり前ですが、3級より全体にレベルが上がっていて、人間の目の仕組みや光の反射などについての記載も増え、デザインやファッションの仕事をしている人向けに実用的な内容が増えています。さらにPCのカラーマネジメントや色空間などにも触れられており、写真を撮る人にも有益な内容になっています。

イルコの色彩にこだわる写真術6
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色彩検定協会Instagram公式アカウントでは、日常を彩る「色」に関する写真を募集中。秋の色彩を集めるオータムキャンペーンは2022年11月30日まで。

イルコの色彩にこだわる写真術6

■色彩検定協会とは?

イルコの色彩にこだわる写真術1

色彩検定協会は、年2回の色彩検定を実施している公益社団法人です。

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