ビルの多い都心部でも一歩裏道に入ったり、下町に行ったりすると路地はたくさんあります。ここでいう路地は、絵になる狭い道のこと。人の息遣いや人情味のあふれる路地は、ふとカメラを向けたくなります。情緒あふれる路地の撮り方をご紹介いたします。
路地は目立つ被写体があまりないので主題を見つけて構図に生かす
写真の印象をダイレクトに決定づけるのが構図です。絵になりそうな路地を見つけても、漠然とカメラを向けていては魅力的な写真にはなりません。構図を決める際にまず心掛けるべき点は、主題や副題となるポイントを見極めることです。路地では目立つ被写体があまりないので、特にこれを意識して撮る必要があります。路地写真の主題として向くのが、自転車や置物、植物、洗濯物などでしょう。もちろん人やネコなども有効です。動きを生かすように取り入れてもいいでしょう。
基本テクニック
レンズワークや構え方を工夫して 見せたい部分を強調する
細くて長い路地は、何も考えずに撮ると、主張のないただの道写真になってしまう。レンズワークや構図を工夫して、主題を絞って見せたい部分を強調しよう。路地の奥行きを出すには、広角レンズを使用して縦位置で狙う。また広角の広い画角を生かせば、主題の被写体に迫って大きく捉えても、路地の雰囲気を盛り込める。離れた位置の主題を撮るには望遠レンズで引き寄せるが、その際も路地の奥行きは取り入れよう。
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パリの名物でもあるパサージュ(屋根つきの商店街)でのひとコマ。漠然とカメラを向けて切り取ると、ゴチャゴチャして、主題が曖昧で、雰囲気も伝わりにくい。
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望遠レンズで引き寄せて楽しむ人々を強調
自分の位置やカメラを向ける方向はそのままでも、レンズを変えるだけで構図は変わってくる。望遠レンズに変えると遠近感が圧縮されるほか、奥がぼけることで要素が整理され、主題とした客が明確になって、すっきりとした。
90ミリ相当 絞り優先オート(F1.8 1/40秒)ISO400 WB:オート
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縦位置で捉えて路地の奥行きを強調
ここは奥へと真っすぐ続く細い道なので、縦位置で捉えて奥行きを出す。そして観賞者の視線が自然と左下から右奥に動くように、少し右にポジションを移して角度をつけた。迷路のようなパサージュの雰囲気が伝わってくる。
24ミリ相当 プログラムオート(F2 1/60秒) ISO800 WB:オート
応用テクニック①
雰囲気のある被写体にスポットを当てて切り取る
路地を撮る際は、もちろん道の奥行きを生かして捉えたいが、雰囲気のある被写体を見つけたらそれらをスナップ的に切り取るのもいいだろう。ただし、物撮りやテーブルフォトのようにそれだけを撮るのではなく、あくまでも周囲の雰囲気は盛り込みたい。
路地に入ると、商店の裏壁に情緒を感じた。まずは引き気味に要素を入れ込みつつ撮影したが、主題が判然とせずにイマイチ。
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主題をじょうろに絞り、斜めのアングルから背景ボケを生かして撮影。これも悪くはないが、じょうろを見せる撮り方だ。
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被写体の水平垂直を意識してまとめる
そこで主題はじょうろのまま、水平垂直を意識して平面的に切り取り、被写体の形を前面に押し出した。主題はあくまでじょうろだが、フレーミングで切れたさまざまな形状の被写体が、現場の雰囲気を伝えている。
58ミリ相当 絞り優先オート(F4 1/500秒) +0.3補正 ISO100 WB:オート
応用テクニック②
路地と言えばネコ! ネコの目線までカメラを下げて撮る
路地にはネコがつきものということで、路地を生かしたネコ撮影の方法を紹介する。生き物全般にいえることだが、まずは生き物の目線の高さにアングルを合わせることが大切。そして、画面が単調にならないように、日の丸構図は避けよう。3分割構図に当てはめると、瞬間的な撮影でも構図が決まりやすい。
動物は、その目線の高さから撮ると、顔がしっかり写っていい。左上の写真のように人間の目線でカメラを向けると、地面が背景になり圧迫感も出る。また、左下の写真のようにネコ目線で撮影しても、画面の真ん中に配置してはつまらない。
3分割構図を用いつつ、ネコ目線で撮る
動いて位置を変え、ネコを瞬撮。壁面に対して斜めの位置から狙い、ネコの目線までカメラを下げる。3分割構図を用いてレンガを多めに入れて、ネコがこちらを向いた瞬間にシャッターを切った。斜めから撮ったことで奥行きも出ている。
75ミリ相当 プログラムオート(F10 1/400秒) ISO400 WB:オート
路地には何かしら雰囲気のある被写体が多い。だからこそ何気なく撮影したくなるのだと思う。撮影する時は、スポットを当てたい被写体に対してカメラのアングルを変えると、伝わる雰囲気も変わってくる。いろいろ試してみよう。