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プロカメラマンに“実際にやった写真の上達方法”を教えてもらった!【深澤 武カメラマンの巻】

プロカメラマンは如何にして写真がうまくなったのだろうか……。カメラ写真好きには、そんな疑問がたまに頭に浮かぶことがある。なので、6名のカメラマンにストレートに「どうやって写真がうまくなったのですか?」と聞いてみた。その六者六様の答えを、今回は余すところなくご紹介しよう。即実践可能なものから、過去の経験で自然と身に付いたことまで、リアル上達法になっている。
これまで以上のスキルやテクニックを身につけ、イメージ通りの描写撮影ができるようになる、6人のプロカメラマンのリアル上達方法をご紹介する。

 

 

深澤 武カメラマンの写真上達方法

上達方法01
どうしたら写真が単調にならないかを考える

上達方法02
あまり条件がよくないときもベストな1枚を狙う

上達方法03
被写体やロケ地に対する知識を深める

 

上達方法01:どうしたら写真が単調にならないかを考える

今でも実践していて、特に上達できると感じているのが「上達法01」である。夏、奄美大島へ出向いたときも行った。干潮時に現れるハート形の潮だまりを狙って、その場所に出掛けてみた。ただ、昼のトップライトでは単調で面白みがない。ハート形の潮だまり自体はよかったので、方角を確認して太陽を生かせる時間はないかなど、単調さを打ち破る方法を探った。午前中の早い時間なら、潮だまりに太陽が映り込み、さらにフィッシュアイレンズなら面白い描写になりそうだと予想して、再度翌日に訪れて撮影したのだ。現場でわき出るアイディアを吟味し、ベストな方策を考えて撮影し、作品の完成度を上げていくことは、上達の近道だと実感している。

 

 

 

 

右のようにハート形の潮だまりと海を撮っても、昼のトップライトでは単調。左のようにフィッシュアイレンズで太陽をワンポイントに入れると、夏らしい光の強さが感じられて写真が生き生きとした。写真に物足りなさを感じたときは、原因が何かを探求するようにしている。

 

上達方法02:あまり条件がよくないときもベストな1枚を狙う

なお、自然相手の風景撮影では、必ずしもベストな天候で撮影できるとは限らない。曇り空のもとで山々を背景にヒマワリを撮影しても、「晴れていればよかった」というイマイチな写真になってしまいがちだ。しかし、そんなときは雨上がりの天気によって所々に残る水滴を生かせば、上のようにその瞬間しか撮れない写真になる。絶好の条件なら狙いどおりの写真を撮ることに全力をかけ、そうでないときは発想の転換により写真の幅を広げる。これによって、どんな天候や条件でも作品レベルの写真を撮れるようになるのだ。

 

曇りの日だったが、夏らしい華やかなイメージに仕上げたいと、ヒマワリを背景に水滴をクローズアップした。現場は一面のヒマワリ畑だが、無理に風景的に狙うのではなく、小さなモチーフに狙いを切り替えたことで撮れた1枚である。

 

上達方法03:被写体やロケ地に対する知識を深める

被写体やロケ地に対する知識を深めることも、写真に深みを持たせるうえで欠かせないことだろう。背景に山並みが広がっていても、どれが郷土の人々に親しまれている山かがわからなければ、フレーミングのしようがない。希少な生物を見つけてもそのことを知らなければ見過ごしてしまうし、形態的な特徴に気づかずに撮影してしまうこともあるだろう。テクニックや技法ありきではなく、被写体に合った表現を引き出していくことも大事だと思っている。

 

 

プロカメラマンが、プロになりえた技術向上術をマネすることから、写真撮影の上達への道が始まります。気になる上達法から、一つ一つ、試してみると新たな驚きの発見があるかもしれませんね!

 

Profile

深澤 武 ふかざわたけし
1974年埼玉県生まれ。東京理科大学工学部電気工学科卒。風景写真家。ドラマ「ちゅらさん」がきっかけで沖縄・八重山諸島を訪れ、南の島の魅力を知る。最近は奄美群島や琉球諸島など、琉球弧の島々へフィールドを広げ、「黒潮に育まれた生命(いのち)」をテーマに風景や生物の撮影を続けている。「デジタル一眼レフ風景写真の撮り方教えます」(技術評論社)、「ニッポンの桜100選」(学研)、「厳選日本の紅葉」(学研)、「沖縄・八重山諸島」(青菁社)など著書多数。2018年6月下旬「奄美・琉球」(青菁社)を上梓予定。(公社)日本写真家協会会員。