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写真を正確な発色で楽しむには? イルコの“色彩”にこだわる写真術⑨

正確な発色で写真を楽しむためにモニターをキャリブレーションしよう

写真のイメージづくりには「色」がとても重要。色彩検定協会の協力により、写真と色彩の関係について考えていくこの連載。今回ははモニターのキャリブレーションと色を表現する規格について考えます。

イルコの色彩にこだわる写真術9
イルコ・アレクサンダロフ

デジタル画像に重要なカラーマネジメント

皆さんは液晶モニターを調整して使っていますか? モニターは調整しないと、画面が明るすぎたり、青っぽかったりすることが多いので、注意しましょう。

イルコの色彩にこだわる写真術9
イルミネーションはそのままの色がきれいなのでフィルターはあまり使わないのですが、ストロボにオレンジフィルターを使用して3000Kで撮影することで、それ以外の光源 (ここでは高層ビルの光) を青っぽくしました。どんな色になっているか確認するためには、正確な色を表示してくれるモニターは必須です。

私は「スパイダーX エリート」というセンサーで定期的にキャリブレーションを行なっています。人間の目は周囲の色に順応しやすいので、モニターの色だけは測色器でしっかりキャリブレーションしたいもの。赤は赤、青は青と正しい色で表示されていないと写真を正しく評価することができません。心理的にも「正確な色が出ている」という自信につながります。

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キャリブレーション作業にはここ1年半ほど、Datacolor「SpyderX Elite」を使用。調整が早く時間がかからないところが気に入っています。Spyderは測色器は同一で、ソフトのバージョンの違いにより、できる機能と価格が変化します。

モニターをキャリブレーションしてみよう

イルコの色彩にこだわる写真術9
現在メインのデスクトップPCは、同じモデルの27型を2台に32型を1台加えて3台のマルチモニターとして使用。部屋の環境光は全体にやや暗くして、モニター作業に集中できるようにしています。

① キャリブレーションソフトで調整目標を選択。モニター表示を基本としているため、「ガンマ」を2.2、「色温度」は6500Kを目標値にしています。

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矢印

② キャリブレーションソフトの指示に従い、測色器をモニターの所定位置に取り付け、ソフトを実行します。

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③ 画面上に次々とさまざまな色が表示され、測色と調整が行なわれます。複数のモニターで測色と調整ができます。

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色空間を正しく理解しよう

最近は複数のモニターを使用する方も多いですが、キャリブレーションすることでそれぞれの色の差も最小にできます。私が使用する2台の27型液晶モニターは同じ製品なのに購入時はなぜか色が違っていましたが、調整後は同じ色で見えるようになりました。また、完成した作品はiPadで最終確認します。実は個人的にはiPadの色に一番信頼を置いています。

色が正確な液晶モニターを使用したい

調整には、色が正確なクリエイティブ作業用の液晶モニターを使用したい。事務用の安価な液晶やゲーミング用モニターは避けよう。写真はEIZOのカラーマネジメント液晶モニター「ColorEdge CS2420」。

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sRGBとAdobe RGB

色を数値で表し、色の範囲を表現したものを「色空間」と言います。モニター上では、光の三原色であるR (赤)、G (緑)、B (青) を加法混合することで色を表示します。よく使われる色空間が「sRGB」と「Adobe RGB」です。sRGBは色域がやや狭いものの、比較的扱いやすく主流の色空間。Adobe RGBは色再現領域がsRGBより広いのですが、扱いには注意が必要です。

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CMYKではこの緑や青の領域の色再現が難しい。

画像を使った作業はsRGBで統一

私は印刷のことなどを考えて、撮影はsRGBで行ない、モニター環境もsRGBで統一しています。青などの色表現も不足に思ったことはありません。

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印刷物はCMYKで色を表現

プリントや本などの印刷物は、色の三原色、C (シアン)、M (マゼンタ)、Y (イエロー) にK (黒) を組み合わせて減法混合で色を作ります。「印刷用再現色空間」は色料 (CMYK) を扱う色空間で、RGBの色空間に比べるとずっと再現域が小さく、そのために印刷物はRGBと同じ色では出力ができないのです。

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環境光も重要

そして見落としがちなのが作業時の環境光。部屋の照明の色が偏っていては正しい色で写真を見ることはできません。私は画像を調整するときは外光は遮断し、モニター画面がやや明るめに見えるくらいに照明を暗めにします。こうすると作業に集中することができるのです。

部屋の照明 (環境光) にも注意しよう

暖かい「電球色」や青白い「昼光色」のライトは雰囲気が出ますが、部屋全体の色が偏るため、その部屋にあるモニターに表示された画像もその影響を受けてしまいます。太陽光に近い自然な「昼白色」を選びましょう。

■電球色

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電球色は黄色く見える。

■昼光色

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昼光色は青白く見える。

 

イルコの色彩にこだわる写真術9
秋や冬の色の落ちた風景には赤い衣装が映えます。右からストロボ1灯を当てて、あまり変化のない背景の空を少しアンダーにすることで、きれいに被写体が浮き上がりました。特に赤や青はキャリブレーションしないと色がずれて見えます。

照明の色温度

「電球色」は暖かい光でリラックスする空間に最適。色温度は3000Kくらい。「昼光色」は青白く読書や勉強、仕事に向き、色温度は6500Kくらい。その中間の太陽光に近い比較的自然な色が「昼白色」で、色温度は5000Kくらいになります。

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高演色性のライトがあるとベスト

どれだけ太陽光に近い光を再現できているかを表した数値を「演色性」と言い、Raという数値で表されます。Ra90以上なら高い演色性を持っていると言えます。写真は、高演色Ra93のパナソニック「LEDシーリングライト HH-CG0837A」。

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イルコの後輩写真家・Rinaty 色彩検定合格への道

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Rinaty

色彩検定2級に無事合格しました

無事、色彩検定2級に合格しました! 自己採点では合格していたとはいえ、実際に合格証書と資格証を手にしたことで、やっと実感が湧いてきました。2級の内容は3級よりもずっと専門的で、難しかったですが、色彩についての理解がとても深まった実感があります。ここまできたら1級までコンプリートしたくなってきました。皆さんもぜひチャレンジしてみてください!

イルコの色彩にこだわる写真術9
2023年の検定スケジュールが公開されています。次の夏期検定は6月25日に実施。まずは3級に挑戦してみませんか?

季節ごとの写真投稿キャンペーン「日常に色彩を」開催中!

色彩検定協会Instagram公式アカウントでは、日常を彩る「色」に関する写真を募集中。冬の色彩を集めるウインターキャンペーンは2月28日まで。

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■色彩検定協会とは?

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色彩検定協会は、年2回の色彩検定を実施している公益社団法人です。

→ WEBサイトをチェック!

 

〈モデル〉鶴田麗子 (オスカープロモーション)