マンガ
2019/1/2 17:00

読まなきゃ人生損する! 「マンガで夜泣きが趣味」な私が独断で決めた「エモいマンガ大賞 2019」

【エモいマンガ大賞 2019/不器用なあなたへ編】

「夜と海」(郷本・著/芳文社・刊/連載中、1巻以降続刊)

ただ感情を揺らすばかりが繋がりではない。人に無関心だったはずの女子高生2人から見るリアルな「友達付き合い」

あくまで持論なのですが、良いマンガの条件の一つは「誰にとっても普通な時間、日常をドラマティックに見せる」だと思っています。「夜と海」はその条件を極限まで高めたと言える作品。

 

「高嶺の花」と揶揄されがちな帰国子女・夜野月子と、あけすけな物言いゆえに人と距離が出来がちな水泳部員・内海彩が、互いの関係をぎこちなくも埋めていくストーリー。恋とも友情ともつかないガールミーツガール…いわゆる百合ジャンルの作品ですが、変なイチャイチャ感はなく、キャラの心情をベースに淡々と「女子高生の普通な日々」が描かれていきます。

 

作中では。ほとんどが2人が在籍する学校、クラスの中だけでお話が進みます。あとは徹底的にモノローグ! ある意味閉じた世界観が作られているのですが、その閉じ方が高校生のリアルな雰囲気をうまく描き出しています。学生の頃の「世界」ってクラス、学校、また友達グループが中心でしたよね。

 

ざっくり言ってしまえば、人付き合いがうまくない月子と彩が不器用ながらすれ違ったり、思いを交差させたりするだけの話(1巻現在は、ですが)。なので、普通だったらめちゃくちゃ退屈な物語になってしまいそうなところを、郷本先生の緻密な作画や演出がおおいに作品を盛り上げます。

 

おそらく月子に影響を与えているであろう「水、深海、水生生物」が作品のモチーフになっているのですが、作中では月子の心情に合わせて、背景が水中や海になったり、水生生物が漂う舞台になったりと変化していきます。郷本先生は「ねこだまり」という猫好きOLの作品も連載しているように、動物描写が非常に巧み。そのため、抽象的な動物が演出として登場する場面でも、自然にリアルな世界観にとけこませてしまうのです。

 

「郷本先生は超絶に絵もマンガもうまいので、地味な話も面白く描ける。証明終了!」と言い切ってしまってもいいのですが、心情表現も非凡だということは念押ししておきたいです。ほぼ女子しか登場しない「夜と海」になぜ男の私が共感できるかというと、「友達」「クラスメート」の描き方がリアルだからかなと分析しています。私自身、「僕らは友達だ」なんてことを言葉にするような関係を持ってきた記憶がありません。リアルな交友関係って、それこそ言葉に出来ない間柄、グレーな関係性の積み重ねのように感じています。仲良いわけじゃないけど一緒にいる、一緒にいるわけでないけど仲が良いというトーンを「夜と海」は見事に描いているので、なんだか私は懐かしき学生時代を思い出してしまったのかも。

 

【おすすめしたい人】

近しい人間関係に悩んでいる人/人とうまく距離感がつかめない人/大切な友達がいる人/綺麗、可愛い絵柄のマンガが好きな人

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