マンガ
2019/1/2 17:00

読まなきゃ人生損する! 「マンガで夜泣きが趣味」な私が独断で決めた「エモいマンガ大賞 2019」

あけましておめでとうございます、編集部のマンガ担当・玉造です。2018年もみなさまGetNavi webのマンガを読んで頂きありがとうございました。まだ読んでいない方は、2019年からさらに連載作もどしどし増やしたい所存ですので覗いてやってくださいませ。

 

さて振り返れば、2018年も私はマンガばかり読んでいた一年でした。マンガ担当というくらいなので当然なのですが、個人的に語りたい作品が今年は多かったので総括的な企画をやってみたいなと思ってペンをとった次第です。いっちょ得意分野の「青春群像劇」「ジュブナイル」など甘酸っぱい系のマンガで選んでみようかと!

 

題して、「エモいマンガ大賞 2019」

 

34歳独身、週に一回は心のデトックスとしてマンガで夜泣きしている私ですから、上記のジャンルには一家言は持っているつもり。数量で作品への愛を量る主義ではないのですが、これから挙げる作品は今も繰り返し読んでは励まされているものばかり。全部で5作品を選びましたが、まずは作品から紹介したいと思います。

 

「それはただの先輩のチンコ」(阿部洋一・著/太田出版・刊/既刊1巻のみ)

 

「魔法が使えなくても」(紀伊カンナ・著/祥伝社・刊/既刊1巻のみ)

 

「夜と海」(郷本・著/芳文社・刊/連載中、1巻以降続刊)

「キャッチャー・イン・ザ・ライム」(背川 昇・著/般若、R-指定・監/小学館・刊/既刊2巻まで)

 

「月曜日の友達」(阿部共実・著/小学館・刊/既巻2巻まで)

 

知っている作品はありましたか? 知らないものが多ければうれしいのですが。まず上記作品の選定基準についても説明しておきましょう。まずは、2018年内にコミックスが刊行された作品(完結・未完結は問わず)であること。

「エモい」の定義はさまざまだと思いますが、選定作品をみるとほとんどが10代〜20代が苦悩、葛藤している作品ばかりになったので、本企画における定義付けはざっくりとそんな感じ程度に思って頂ければ幸いです。また、選定基準は「私の独断」ですので、作品の発行部数や話題度などは度外視されたものになっています。あ、ちなみにランキングではありません。全部1位!

 

…といったところでしょうか。前置きが長くなりましたが、各作品のレビューにいきます!

【エモいマンガ大賞 2019/すべての男子に捧げる編】

「それはただの先輩のチンコ」(阿部洋一・著/太田出版・刊/既刊1巻のみ)

 

好きだからひとり占めしたくなる「チンコ」…女子高生の疾走する恋心、全男子が共感確実の衝動が備わった怪作

阿部洋一先生は、ちょっと不思議な読後感のファンタジー、ホラー作品を描く作家で、本作も「女子高生が好きな男子のチンコを切り取って愛でる」という謎すぎる設定。切り取られたチンコは動物みたいに薄く意思を持っていたり、チンコを失った男子も「いてっ!」くらいで割と平然としているし、後からチンコは再生するしカジュアルに読めるフィクション設定になっています。チンコの外観は普通に「チンコ」として描かれていますが、スイカをシャクシャク食べたり、お風呂で泳いだりなんだか可愛らしいです。

 

可愛いのはチンコだけでなく女の子も。女の子たちがあまりにひたむきにチンコを求めるため、猟奇的なチンコとの接し方もとてもピュアな恋愛表現として届いてきます。憧れの先輩のチンコ、浮気した元カレのチンコ、好きな人の最後のチンコ…それぞれのチンコと女の子を通して、読者は「チンコってなんだ?」ということと向き合っていくのです。

 

全8章に渡って、恋する女子目線で好きな男子とチンコへの想いを語るストーリーですが、男子なら全ての章で共感するポイントがあるのもポイント。

 

「安心感のためにだよ!!」

「男にとってチンコがない状態がどんなに不安かわかるか?」

「あれはセックスかオナニーにだけ使うものじゃない。オシッコするだけのものでもない…」

「チンコは“安心のエネルギー体”なんだ」

(第3章「埋まる アンシンカン」より引用)

 

こんなチンコ考が全編に散りばめられています。私が本作で一番好きなお話が、クラスの男子のチンコが股にくっついてしまった女子が数日間だけ男子を疑似体験する「あの時、捕まえたバッタのように」。

 

女の子は「月経」を 学校である程度教わるので 知識がある分恐怖が多少 やわらぐけど

男の子は「射精」を 学校では教わらないので

男の子にとって 初めての射精がどれほど 未知で恐怖で孤独なものなのかというのを 私は思い知った

(第5章「あの時、捕まえたバッタのように(後編)」より引用)

 

初めて男子の生理現象を経験した女子・相沢さんによるモノローグ。何を経験したかはこの一文で一目瞭然ですが、絵とあわせて見るときっと印象が変わるはず。とても衝撃的な描写で、男子の本能に根付いた深い孤独がうまく描かれていて胸に響きます。チンコと共生する数日間を終え、少しだけ男子の気持ちを知った相沢さんは、ある生理現象について以下のように語ります。

 

加藤くんは 宮本くんを見ると 少し勃起するようになってしまったのだ…

でも申し訳ないけれど それは言葉より確かな私の気持ちなのだ

(第5章「あの時、捕まえたバッタのように(後編)」より引用)

 

勃起をここまで感情的に描くなんて目頭が熱くなるばかり。あまりに真実な表現で、過ぎ去った青春時代に思いを馳せてしまいます。大人になると、感情をストレートに表現する場が減っていくし、どんな場面でも言葉で伝えることがある意味大人の証明になります。それでも言葉に出来ない想いを抱いた時には、本作をぜひ読んでみてほしいです。

 

【おすすめしたい人】

すべての男子/恋する女子(特に10代)/片思いをしている人/SF(すこし不思議)な作品が好きな人/チンコについて知りたい人

【エモいマンガ大賞 2019/頑張る若者へ編】

「魔法が使えなくても」(紀伊カンナ・著/祥伝社・刊/既刊1巻のみ)

 

夢を叶えて真っ当に働くことが「白」である時代は過ぎて、なんとなくでも前向きに頑張れる「ねずみ色」な今を描く

実はこの短編集が初めて読んだ紀伊カンナ先生作品だったのですが、もう才能しか感じられない短編集でした。女性コミック誌「フィール・ヤング」やBL誌「on BLUE」での活動が中心ではありますが、かなり絵の線がスッキリと太いため男性でも読みやすいこと間違いなしです。個人的に「この書影は絶対面白い!」と直感した作品は、かなり高確率で好みをひくタチなのですが、その直感が2018年で最も働いた作品でもあります。

 

マンガで作風の例を出すなら「敷居の住人」「放浪息子」の志村貴子先生を思い浮かべて頂ければ。ジェンダーについてのテーマも描いているので、たぶんご本人も影響受けているんじゃないかと思います。お話の内容は仕事、恋愛、人間関係、本当の自分とのチューニングがうまくいかない男女の群像劇。悶々としがちなテーマですが、全編を通してお話はコミカルかつ爽快感にあふれています。

 

夢追い人、働くことへの問いというテーマや、バンドマンが出てくることから、浅野いにお「ソラニン」を思い浮かべました。両者を比較すると、それらのテーマへのアプローチが変化していることに気付かされます。作中ではさまざまなキャラクターが、恋愛、性差、働くことなどを考えながらも、決して切羽詰まらずに日常を過ごしていますが、どのお話でも「答えは白か黒じゃない」と優しく教えてくれます。ソラニンのようにひたむきに夢、仕事、生活と向き合う作品から、今はそういったトーンに変わったんだなーと。

 

キャラクターが地に足つけながらもふらふらゆるりと悩んでいる姿に、現代らしいリアルを感じてめちゃくちゃエモい気持ちになってしまったのです。そして、何より全員素晴らしくキャラが魅力的なのでね! シャレた女の子が読みたければ紀伊カンナ、親近感のあるイケメンが読みたければ紀伊カンナ。最強ですよ。私はキキちゃんというコンセプトカフェ(いわゆるメイドカフェ)で働く女の子が大好きです。

 

【おすすめしたい人】

仕事に悩んでいる、転職を考えている人/夢と現実のギャップに悩んでいる人/やりたいことが見つからない人

【エモいマンガ大賞 2019/不器用なあなたへ編】

「夜と海」(郷本・著/芳文社・刊/連載中、1巻以降続刊)

ただ感情を揺らすばかりが繋がりではない。人に無関心だったはずの女子高生2人から見るリアルな「友達付き合い」

あくまで持論なのですが、良いマンガの条件の一つは「誰にとっても普通な時間、日常をドラマティックに見せる」だと思っています。「夜と海」はその条件を極限まで高めたと言える作品。

 

「高嶺の花」と揶揄されがちな帰国子女・夜野月子と、あけすけな物言いゆえに人と距離が出来がちな水泳部員・内海彩が、互いの関係をぎこちなくも埋めていくストーリー。恋とも友情ともつかないガールミーツガール…いわゆる百合ジャンルの作品ですが、変なイチャイチャ感はなく、キャラの心情をベースに淡々と「女子高生の普通な日々」が描かれていきます。

 

作中では。ほとんどが2人が在籍する学校、クラスの中だけでお話が進みます。あとは徹底的にモノローグ! ある意味閉じた世界観が作られているのですが、その閉じ方が高校生のリアルな雰囲気をうまく描き出しています。学生の頃の「世界」ってクラス、学校、また友達グループが中心でしたよね。

 

ざっくり言ってしまえば、人付き合いがうまくない月子と彩が不器用ながらすれ違ったり、思いを交差させたりするだけの話(1巻現在は、ですが)。なので、普通だったらめちゃくちゃ退屈な物語になってしまいそうなところを、郷本先生の緻密な作画や演出がおおいに作品を盛り上げます。

 

おそらく月子に影響を与えているであろう「水、深海、水生生物」が作品のモチーフになっているのですが、作中では月子の心情に合わせて、背景が水中や海になったり、水生生物が漂う舞台になったりと変化していきます。郷本先生は「ねこだまり」という猫好きOLの作品も連載しているように、動物描写が非常に巧み。そのため、抽象的な動物が演出として登場する場面でも、自然にリアルな世界観にとけこませてしまうのです。

 

「郷本先生は超絶に絵もマンガもうまいので、地味な話も面白く描ける。証明終了!」と言い切ってしまってもいいのですが、心情表現も非凡だということは念押ししておきたいです。ほぼ女子しか登場しない「夜と海」になぜ男の私が共感できるかというと、「友達」「クラスメート」の描き方がリアルだからかなと分析しています。私自身、「僕らは友達だ」なんてことを言葉にするような関係を持ってきた記憶がありません。リアルな交友関係って、それこそ言葉に出来ない間柄、グレーな関係性の積み重ねのように感じています。仲良いわけじゃないけど一緒にいる、一緒にいるわけでないけど仲が良いというトーンを「夜と海」は見事に描いているので、なんだか私は懐かしき学生時代を思い出してしまったのかも。

 

【おすすめしたい人】

近しい人間関係に悩んでいる人/人とうまく距離感がつかめない人/大切な友達がいる人/綺麗、可愛い絵柄のマンガが好きな人

【エモいマンガ大賞 2019/本音を言えないあなたへ編】

「キャッチャー・イン・ザ・ライム」(背川 昇・著/般若、R-指定・監/小学館・刊/既刊2巻まで)

若き才能がありったけの試行錯誤を詰め込んだ、「女子高生×ラップ」をテーマにした偉大な1stコミックス!

ラップマンガが台頭した2018年に、燦然と輝く女子高生ラップストーリー! 「夜と海」と同じく百合ジャンルとして括られることも多かった本作ですが、まず青春群像劇としてドがつく王道として覚えてもらえると嬉しいです。「女子高生×部活」というここ10年以上にも渡るマンガの定番公式ではありますが、本作が他のラップマンガと最も差別化している点も、その公式に由来があります。

 

ラップバトルが題材なので「本音を晒す」ということが重要なテーマになるのですが、それは他作品も大体同様。本作は「晒した本音を仲間と分かち合う」、つまり学生生活と青春そのものの本質がテーマであったと思うんです。

 

そこがまさにエモいポイントなんですが、個人的にはラップマンガに限らず、ティーンエイジャーが主人公であるマンガにありがちな「なんでもない自分が異世界な場所で変わる」みたいな設定、展開に飽きていたというのもあります。本作は、徹底して戦うべき現実、過ごす日常で自分が何に影響を受けてどう変わるか。そして、そんな自分が人に何を影響させられるか…に向き合ったという点で、もう100点!

 

あとは音楽でもそうですが、私は「処女作には魔法がかかっている」論者ですので、20代前半だという背川 昇先生の初商業連載作、圧倒的1stアルバムの荒削りな輝きをぜひ推したい! たった2巻で終わってしまう本作ですが、1話ごとにコマ割、演出において筆者が試行錯誤した跡が垣間見得ます。

 

序盤は日常マンガっぽい4コマかと思ったら、見せ場では開放的な見開きカットが入ったり、キャラの心情にあわせてコマ割りを自由に使い分け、時には鬱屈としたテンポを出すために4コマを交える。ハッキリ言えば、そこに読みにくさを感じてしまう人もいるとは思うのですが、きちんと読み込んだ先には作者の伝えたい想いがダイレクトに伝わる血の通った構成だと、私は断言します。聴き触りの良い2枚目、3枚目のアルバムも良いんだけど、「自分にとっての一枚」を選ぶなら1枚目!って人も少なくないんじゃないでしょうか? 本作は背川先生にとってのまさにそんな初期衝動が詰まった1st。

 

社会風刺にも関連するラップが題材のためか、「貧困」や「トランスジェンダー」といった社会的なテーマにも踏み込んでいます。特にトランスジェンダーに関わる「ウツギ」という女の子が抱えた闇、涙するワケ、そして救われる過程をぜひ読んでほしいです。

 

大人でも「会社で決まっていることだから」とか「そういう決まりだから」といった言葉に溢れた社会に生きています。いろいろな生き方、戦い方があると思うのですが、ウツギの生き方と自由の求め方はきっとそんな大人にも響くはずです。

 

あまりラップのことは語れなかったのですが、最後にラップマンガとしてのクオリティよりも方向性を推しておきます。正直に言えば、本作よりもラップの面白さや熱情を伝えているマンガは存在すると思います。しかし、「ラップを始めれば何かが変わる」と思わせる力が本作にはあります。もしかしたら自分を変えるためなら、ラップでなくても良いのかもしれないけれど、本音の自分で誰かと関わっていくならやっぱり本作のテーマは「ラップ」でしかあり得ない。やっぱり、必然と衝動のストーリーなんです。

 

【おすすめしたい人】

ストレートな友情物語が好きな人/ゆるっとした日常系コメディが好きな人/作者の熱意を感じられる作品が好きな人/本音がなかなか言えない人

【エモいマンガ大賞 2019/居場所を求めるあなたへ編】

「月曜日の友達」(阿部共実・著/小学館・刊/既巻2巻まで)

 

美しいマンガ表現と、青春の描写力に脱帽! あなたの「居場所」になり得る青春譚のマスターピース。

またもや超個人的に、良いマンガの条件を一つ挙げさせてもらいますが、「読者にとっての居場所になり得る作品」は、どの時代でも変わらない条件だと思います。「ドラえもん」が誰かにとっての原点であるように、働くおじさんが迷った時に「あしたのジョー」を読み返すように、子どもでも大人でも、また読み返したい、あの世界に戻りたいと一人でも思っている人がいるなら、そのマンガはまぎれもなく名作。

 

さて、そういった観点で言えば、「月曜日の友達」はここ10年、20年の中ではハチャメチャに私にとっての名作。いや傑作、大傑作! なるべく丁寧に太鼓判を押したいくらい感動させられた作品なのですが、その理由は「誰よりも解像度高く青春を描いている」ことにあると思います。

 

ここで言う「解像度」とは何か? というと、マンガにとっての画力であり、演出力の高さと言い換えられますが、本作は両方においてずば抜けています。阿部先生は、たとえば「スラムダンク」のように、劇画調で描きこみが多いマンガを描くわけではありませんが、多彩なアングルと色彩感覚(モノクロだけど)を駆使して、人物の内面と世界観を豊かに描く作家さんです。

 

本作の主人公は、みんなが急速に大人びていく中、まわりの変化に戸惑う中学一年生・水谷茜。そんな水谷が「超能力を使える!」と豪語する、これまたズレた同級生・月野透との出会いが本作の始まり。

 

水谷は月野と毎週月曜の夜に、学校の校庭で超能力の特訓をするという秘密の約束を交わして交流していきます。そこから水谷の目を通して紡がれる月野との日々、水谷の心象風景は「美しい」としか言いようがないほどのマンガ表現が詰め込まれています。1ページも無駄なく考えられた構図、白黒を多彩に使い分けたページは色鮮やかとしか言いようがありません。1巻の見せ場である、月野と学校のプールにシーンでは水しぶきの表現がパワーありすぎて、「夜のプール」という青春モノの鉄板シーンを水谷と月野と一緒に追体験しているような気持ちになります。

 

これぞ「解像度の高さ」! 中学生の頃見た風景、漂っていた空気のにおい、涼しい風の肌触り、感じた思いなどがページから溢れてくるのです。男の子と「秘密を共有する」という設定も青春モノの王道ではありますが、それが水谷と月野にとっては、恋なのか友情なのかといった言葉で語られないアンビバレンスな感じも、また非常にリアリティがあります。

 

もう少し解像度に関わる話をすると、詩的なセリフ回しも本作の大きな魅力です。

 

学校の始まり。

残暑がこもる教室のにおい。

秋が来るのにまだ蝉の声が聞こえる。

2巻「秋」より引用

 

落ち葉が地面をこする音。

校舎裏にだけかすかに届く金木犀の香り。

冷ややかな空気にそれが交わり鼻をぬける。

2巻「秋」より引用

 

絵とあわせて読んでほしいのですが、セリフだけでも十分に情景が伝わるんじゃないかと思います。どちらも水谷のセリフですが、中学一年生とは思えないこの語彙力もまたキャラのギャップになっているんです。全編に渡って、水谷のこうした詩的なモノローグで進行していって、文字量は多めな方だとは思うのですが、セリフも絵やデザインの一つとなっていてどんどん水谷の心情に引き込まれます。

 

とにかく絵とセリフ、設定やキャラが緻密に描写されている「解像度の高さ」ゆえにエモさが生まれるのですが、結局はやっぱメッセージが素晴らしいの一言に尽きます。本作にはたくさんの大好きなセリフがあるのですが、特に大好きなセリフが以下です。

 

「大人になるっていうことは我慢したり控えることではなく、」

「与えるってことだよ。」

2巻「冬」より引用

 

土森という水谷の級友が、水谷に送った言葉ですが、中学生でない大人になった今だからこそ心打たれる言葉です。中学生時代への郷愁、美しい過去のパッケージだけでなく「成長すること」への前向きさも描く。まあ…青春譚としてはもうパーフェクトすぎますね! これがあるからこそ、私はきっとこれから死ぬまで何度でも「月曜日の友達」を読み返すと思います。悩んだ時、心打ち砕かれた時に。過去の自分と水谷と月野が歩んだ、何者でもない時代をもう一度思い出すために…! 恋でもなく友情でもなく、中学生になりたてのあの瞬間しか得られない人との繋がりを感じたことのある人には、絶対に刺さる作品です。

 

【おすすめしたい人】

学生時代に戻りたいと思う人/進むべき道に悩んでいる人/今まで読んだことのないマンガが読みたい人

 

これにて「エモいマンガ大賞 2019」は終了。今もエモい気持ちになりすぎているので、作品の解説を出来てなさすぎるんじゃないかと思いますが、どれも短い作品ですので、まずは手にとってほしいという意図もあります。

 

本企画を振り返ってみると、この熱量で5作品は私も非常に魂を削る作業だと気づいたので、1回に1作品くらいの感じで定期的におすすめマンガを紹介していきたいです。フレッシュな気持ちで新年を迎えるために、正月休みでエモいこれらのマンガを読んで、心のデトックスをしてみてください。